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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の3 プレイヤーズ編
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第54話 なつかしの街


前作戦から一週間以上が経過。早いもので、BB達もプレイヤーズの環境に慣れつつあった。朝起きて、一日中訓練して、寝る。昔のゲームでよくあるレベル上げの日々。上がるゲーム的数値はない。だが彼らの腕はめきめきと上がっていた。ただ、草食はともかくレモン。彼女は近接訓練で、一向に上手くなる兆しがなかった。それでも諦めずに今も努力している。


草食。彼女は訓練をサボりギャンブルに明け暮れていた。傍らにはマケメロン。悲しいことにBB達はその悪行に気付かないでいた。マケメロンのフォローがやけに達者だったため。例えばどこにいたのかと聞かれれば、二人で作戦を立てる訓練をしていたと答える。実際にそれを行っているように見せた。ギャンブルで仲が悪くならないのか。それは、勝った物資で互いに飲み物を奢っているので仲はむしろいい。


BBは前作戦で、マケメロンに言われたことをよく思い出した。我が儘になれ。そんなことをして義理の親に気に入られるか。ここまで考えて、仲間をどのように捉えているのか。それを明示されたようで、気分が悪くなる。


だからといって仲間には打ち明けなかった。理由は解らない。そんなことを考えても、いつものBBという仮面を被り続けた。誰にも悟られない。マケメロンの瞳に哀れみが覗いているのを除けば。BBも彼女の視線は知っていた。


そんな日々の後、キーコードの召集がかけられた。基本キーコードは任務以外訓練。暇で退屈だ。なので乗り気でない任務も、訓練から離れられるとやる気が溢れる。


伝えられた任務は簡単なものだ。鉄物資確保のための鉄鉱山の攻略。すでに先住プレイヤーがいて、協力を拒否された。当然武力で制圧する流れに。いつものように車列を作って出発。


「やっとお仕事できる」


レモンのぼやきに誰も共感を隠さない。BBは口を開く。


「まぁ兵士って、訓練も仕事の一つと言えるけどね」


オサムが銃座に立たず、座席にいる。緊急時に対応できればいいという判断。


「そういやレモンって最近どう? モビウスさんには勝てた?」


「やっと勝てました。もうがむしゃらでしたけど。何で勝てたか解らないですね。でも何となくコツは掴んできました」


「いいじゃん。いつかレモンも格闘戦で姉さんに勝てるよ」


「お姉さん負けないぞー」草食がからかい、混じる。


「でもレモン」オサムが表情を変える。「そろそろ訓練相手を変えたほうがいいよ。いつも同じ相手だと違う敵に対処できなく……って、ずっとハチと訓練しているわたしが言うことじゃないね」


「いえいえ。ごもっともですよ。訓練場の人とは仲良くなれてますし、別の人ともやりますかね」


「そう、だね」


オサムの言葉は少し弱まる。レモンはいくらでも人と話せる。自分は無理だ。ぉこか遠くへ彼女は行ってしまうのでは。自分だけ置いていかれるのではないか。


いやちや。心の中で首を振る。だったらキーコードの人と話して仲良くなればいい。でもBBが……いや、BBがなんだ。なんでBBなんだ。オサムは混乱しだす。でもBBと離れるのも……。いやいやいや。


一人で葛藤を始めるオサム。レモンとBBは黙って、微笑ましく見守る。彼女の顔が赤くなっている。


オサムはBBに嫉妬される方法を考えた。そうじゃないと唇を歯で押す。BBもキーコードの人と仲良くなればいい。手は二つあるのに一つのことしかできない道理はない。そうすればいい。


「わたしもそろそろ銃の腕が上がってきてね。遠くの的に当てれるようになったんだ」


かなりの間を空け、オサムが返答。その間の後の会話は違和感まみれ。本人は気付かない。二人もそこに触れることなく話を続けた。


いつも一緒にいるのだから話のネタは尽きるのでは。そのような疑問を挟む余地はなかった。彼らは日頃訓練をする。一日中。特にキーコード隊員はハードなことが求められる。なので一日が終わったら疲労でベッドイン。話すのは食事の時ぐらいだ。だから会話はむしろ貴重になる。


車はまだ走り続けた。鉄鉱山は南にある。中々遠い。昼頃出発して、もう日暮れだ。プロペインはプレイヤーズ加入までの旅を思い出した。太陽のある間、ずっと運転していた。たった五人で。そう思うと感慨深い。


「こちらヒトマル。全車停止。前方の街で一泊する」


無線の新調で声が聞き取れる。五人は指示にある街を見ようとする。ブリーフィングで、移動は長くなると聞いていた。これほどとは思わなかった。


車から降りる。街だ。発電機があるようで、あばら家に光が灯っている。プロペインは車を移動させキーコードの待機列に停めた。


ヒトマルを先頭に、キーコード達は歩いた。草食は懐古の気分で周りを見る。BBらに出会う前はこんな街に住んでいた。酒場の店主に追い出されたのは、もういつだったか。


ヒトマルが三階建てのあばら家に入る。キーコードの在住許可をもらう。どうやらこの街はプレイヤーズに協力的らしい。


「まずは酒場に行こうよ。ご飯食べよ」


草食の言葉に従い酒場を探す。人通りの多い所へ。見つけた。あばら家まみれのこの街で、西部劇のような佇まいを見せている。


スイングドアをバタバタ開いて中へ。広い。外観も広く見えた。中身も外見に違わない。


早速料理を注文しようとカウンターへ行く。草食が慣れたように呼ぶ。


「すみませーん。メニューなにありますー?」


「はいはい、えーっと……」


そう言って、女性がクリップボードに挟んだメニューを持ってきた。受け取ろうと手を伸ばし彼女と目が合った。


「……あんた、草食?」


「えっ、店主さん?」


その人は、草食がBBとオサムを勧誘、まんぷくテロリストを立ち上げた酒場の店主、その人だった。


二人は目を合わせたまま固まった。草食の頭の中は逃げることでいっぱいだ。ツケの支払いなんて今もできない。それより、これがバレたらプレイヤーズでの生活はどうなるのか。訓練サボる時点で怪しいが。マケメロンに手伝ってもらい、ヒトマルやゲンにバレないように。それ以前にここから出禁をもらっていなかったか。ならば食事はどうする。


BBとオサムは頭を抱えた。草食に対しての呆れのため。内心では見知った人との再開を喜ぶ気持ちもある。特にBBとしては。何かとお世話になれそうだからという打算だが。


「あんた、何でここに」


「えっと、その、なんと言いますかですね」


「姉さん、お知り合いですか?」「知り合いか草食」


レモンとプロペインは初対面だった。


「お久しぶりです。店主さん」BBは話を進めることにした。「オレ達、プレイヤーズに入って、キーコードとして任務をしているんです。ツケは払いますし昔騒いだお詫びはします。だから今は見逃してくれませんか」


「……もしかして、草食達って飯テロ?」


「そうです」


「まぁまぁ! じゃあ、貴方が噂のハチ公なの。こりゃ大物。草食、そういうことなら早く言いなさいよ」


「え、あ、はい」


「見て解ると思うけど、店を改装したの。ツケとかはもう気にしなくていいよ。リニューアルでチャラ。ただし、もうツケはやめてよね。さ、のんびりしてって」


彼女は他の作業に戻った。とりあえず他の店員に料理を頼んだ。こんな一つの酒場でも、今やソーセージが食べれる。幸福を噛みしめつつ、子供達はジュースを。大人はノンアルを頼んだ。


ソーセージが来た。焼きたて。所々焦げている。逆に食欲をそそられた。わざわざ店主が持ってきたのだ。


ツケを払わなくていいことになった草食。気をよくして、彼女にプロペインとレモンを紹介した。いつも世話になった店の主であると二人に伝える。店主はここぞとばかり草食のツケ話を始める。耳が痛かった。


「ところで」店主は身を寄せ、少し声を落とす。「プレイヤーズに入ったのは何で?」


「そりゃあ目的の脱出だよ」


「脱出ねぇ」店主はカウンターに頬杖を突いた。草食をリーダーとして認めているのか、彼女を見る。「そのために全土を征服するなんて」


「でも他に方法ないし」


「まぁそこはいいとしてさ。支配に不満タラタラなんだよ。ワタシ達がなんでプレイヤーズを受け入れられないか知ってる?」


「確かに敵は多いけど、受け入れられてないの?」聞いて、店主が言っているのは物理的でなく、精神的なものと気付いた。


「強大な軍事力で保護してくれるなら受け入れるよ。なんで受け入れられないかって、そりゃ徴収が酷いんだよ」


「徴収なんてあるんだ」この驚きは草食だけではなかった。「でもまぁ、代価としては仕方ない気が……」


「やりすぎなのよ! 物資なんてほとんど吸われるのよ。本当を言えば売上の半分。それでも改装したのは運がよかったけど、他の人はボロ家でぎゅうぎゅう詰め。もう手に入れられる物資なんてないのに」


「スカベンジでもダメなの?」


「生産されてないもの取り続けたら枯渇するでしょ。いずれこの街は搾り尽くされる。そうすれば友好的なプレイヤーでも武装組織化するよ」


「プレイヤーズには入らないの? 衣食住はあるよ」


「誰が自分達を虐げた奴の軍門に下るのよ。そういうのはもう言われた。断ったらこのまま吸われるか殴り倒されるか。でもワタシ達だってここまで街を存続させたの。今更引けない」


BBは同情しなかった。無意味かつ無駄なプライドだ。生き残りたいのか、そうじゃないのか。どっちなのか。プレイヤーズに勝てる算段もないクセに。……第三者というものは、視点が違う。人はどんな時でも合理的な判断ができると思いがちだ。だが当人の視点は違う。あれこれ言ったところで、そもそも共感し合わないのだ。


ソーセージを食べ終わり、金代わりの物資を出して店を出る。オサムとレモンは何やら考えこんでいる。特にオサムはうつむいて、醸し出す空気も灰色。


「さっきの、気になる?」


BBが二人に問えば、どちらも頷く。プロペインは車に行き寝袋の用意を始めた。レモンが街を眺めた。


「プレイヤーズって、物資はスカベンジ以外でも賄っていたんですね。ここ最近の任務は物資の調達が多いですから……まぁ、資源を完全管理というか。吸い上げない方向にしたいのでしょうね」


「あの人は」ポツポツとオサムは言う。「プレイヤーズのせいで苦しい思いをしたのかな」


「そうだろうね」


「ハチはどう思う?」


正直に言うとオサムの反感を買うのでやめた。


「プレイヤーズも正しいだけじゃないね」


「……わたしは、ただ脱出したいだけなのに」


五人は寝袋で寝た。次の日鉱山を攻略。ほとんど苦労せず、電撃的に攻めた。わずか三十分でそこにいた敵は全滅。プレイヤーズに鉄資源が入っていった。


彼らの覇道は止まらない。五人は尖兵だった。

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