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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の2 ファームシティ編
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第32話 死してなお輝きやがった


「サム。見つけた回復剤だよ。これで左腕は治る」


BBはオサムの左肩に注射した。薬を入れ引き抜く。ポリゴンが集まり集積していく。そして人の腕、その形になった。BBが使ったのは部位回復剤。HP回復剤とは違う。


オサムは物珍しげに左腕をマジマジと見た。流石に服までは戻らず左腕の肌が晒される。BBが見る。オサムに恥じらいの表情が現れた。まさか初期装備のシャツさえなくなるとは。ただ、シャツの下、インナーだけは無傷である。


なおも戦火はあった。しかしリスポーン地点を失ったオールドスランガーズは虫の息。まんぷくテロリストのような大戦力はもう動かなくていい。


「あんまり見ないでよ」


そっぽを向くオサム。そう言われると、サディズムをくすぐられるのがBBだ。「ふーん」と意味ありげな感嘆。彼女の腕を更に見る。


キレイだ。華奢ではなく、とても健康的な肉感。これを見せる時、恥じらうのではなく誇ればいい。なのにそうしないオサム。そんな彼女に対し、共感と優しさがこみ上げる。それでもサディズムはなくならない。


「キレイな腕だね」


言われて、嫌な気はしなかった。むしろ嬉しい。でも、いや、ここで言い返してやろう。オサムは負けん気がでた。


「ありがと。でも、わたしだけ肌を見せるのは違くない?」


勝ち気な笑み。しかしすぐ後悔した。肌を見せろと言っているのだ。まだそんな仲ではない。すぐ撤回しようとする。


その一切の表情変化を見逃すBBではない。彼女は調子に乗っているとBBは判った。そんなオサムに近寄る。口と口が合わせられる距離だ。オサムは真っ赤になる。


「じゃあ脱がしてよ」


最もこれは冗談の類いだった。BBも本気で脱がされるとは思っていない。


だが今のオサムに言うのは、間違いだった。前までのオサムなら、しどろもどろになって結局否定しただろう。しかし現在は、されるがままから脱しようとしている。


オサムはその脱し方を全く解らない。知らない。よって、BBの言葉へ否定する選択はなかった。あったとしても芽生えたプライドが許さない。


「じゃあ脱がすよ」


顔を真っ赤にしながらオサムはBBを押し倒す。BBのほうは思考が止まって動かない。その沈黙を嫌ったオサムはまずシャツの上に着ている革の防具を外す。


次にポケット付きのベストを外す。BBもやっと状況が飲み込めた。顔を赤くしヤケになっているオサムを見るのが面白い。黙っておくことにした。


シャツが出た。それを脱がそうとして、できない。なんだかんだこのゲームは十八禁ではない。卑猥なことはさせまいという意思とシステムが、裸になるのを制止する。このゲームで、相手を脱がすことができるのはシャツまでだ。それ以上はできない。自分で脱ぐ時はまた別。


そろそろ正気に戻りかけるオサム。その流れを消し去ろうとシャツの袖をめくる。もとから半袖なので肩が露になる。襟をめくって鎖骨も見た。


どれもこれもが、いたいけな少年を魅せていた。美だ。男性にしては少し細く、成長の余地がある。肌色はきめ細やかに、艶かしく照り輝く。呆れたBBの顔にマッチして、男娼のようにさえ思える。


BBの腹に馬乗りになっているオサム。彼女は見とれていた。退廃的で、美しかった。夜、戦の炎を灯りとしているのが更にエロスを誘う。本来あるべき恥は彼にない。全てを受け入れる呆然だけがあった。


そしていつしか呆れの顔は消える。男娼が客をからかうような、小馬鹿にしたような顔でオサムを見る。


「……ヘンタイ」


「え?」


自分が何をしていたのか。いやナニをしようとしていたのか。オサムは正気に戻った。叱責の声が己から次々湧いて、爆発した。


あわてて立ち上がり結局転ぶ。そして意味のない弁解を始めた。


「ち、違うの。別にその、裸を見たいワケじゃなくて、えっとその、事故というか、その」


「オレのせいにしないその気遣いは、ありがたいと思うよ」


ずらされた部分を丁寧に直しながらBBは立ち上がる。装備していた物や服を着け直す。その行動一つ一つに、見てはいけないハレンチさをオサムは感じる。


「……さっきから何してんの。二人とも」


BB以上に呆れた顔で見てくるのは草食。さしものBBも、草食とは顔を合わせない。顔が赤い。斜め下を見て、あぁ、勝ち気な乙女がふと見せた恥じらいの顔。


そんな姿を見せる原因は草食である。それにオサムは強い嫉妬を覚えた。その顔は草食にしか見せないのかと問い詰めたくなる。


「別に、何もしてないよ」BBの声は小さい。


「お姉さんは君達がハレンチなことをしているのを見ましたよ」帽子を傾け、続ける。「そういうのはベッドでやってくださいな」


ちょいとオサムのほうも見た。彼女は悪事がバレた幼児のように静かになる。そして言いようのない空気に包まれた。


その空気を一番嫌ったのは草食だった。自分が割り込まなければもっといったかもしれない。けど今は、まだ戦闘中なのだ。


現在まんぷくテロリストは、オルスラの元リス地で休憩していた。オサムとBBは外にいた。なので、盛り返したオルスラなどがいたら危険なのだ。草食が呆れるのも最もだ。


「……ところで何しに来たの」BBが遠慮がちに聞く。


「もう休憩は終わりってこと。そろそろラスルネもこの基地を制圧しそうだしね。今後のことについて話し合わないと」


それじゃ。そう言って、またこの空間に風だけが鳴った。一瞬の嵐のようで、現実感がない。そんなオサムに手が差しのべられた。


顔は羞恥で溢れていたが、なおもオサムを気遣っていた。オサムはその手を取り起き上がる。お互いに言葉はなかった。


いつぶりだろうか。この二人で沈黙が支配したのは。だが心地よい沈黙とは違う。若い青春の時が鳴らす、ほろ苦く甘い世界。しかし当の本人らは否定したい。


草食と、事情を知らないプロペイン、レモンが施設から出た。かつてリス地だったこの施設。それは同時に最後の要塞でもある。なので武器は豊富だった。彼らはそれを外に持ち出した。丁度あった台車が活躍した。


プロペインとレモンは、オサム達の表情が解せなかった。草食が気にしていないのを見るに、深刻なことではなさそう。そう思い、追及はやめておいた。


「さて、チェリー達に合流するぞ。行こう」


プロペインが先導。五人は歩き出した。もう銃声もしない。ラストルネッサンスもこちらに向かってきた。チェリーが手を軽く挙げた。


「飯テロさん、お疲れ様」


「飯テロ?」草食がキョトンとし、オサムが思い出す。


「君達の略称をオルスラがそう呼んでたから。何度も正式名称で呼ぶのはなんだし。こちらで呼ぼうかと」


「な、なーる」


チェリーが言っていることに多少の不服はあった。草食は悪くないと考え納得。


「それより」草食は話を続ける。「基地は制圧できたの?」


「うん、完全に。武器庫からはロケットランチャー。ライフルもいっぱい。そしてさらに戦車を二台見つけた。ガソリンがあれば動きそうだし、今は車から移している。食糧もあったよ。まさか戦車がまだあったとはね」


「なるほど。これからは残敵の掃討になるのかな」


「そうだね。でも、もう飯テロさんの活躍する場面はないかな。これだけの武器弾薬があればボクらでもやれる。まずは各基地への侵攻だね。何かあったら飯テロの皆に通達する。それまで待機してもらえるかな」


「了解。んじゃあ早めの戦勝パーティー開きますかね」


「あとで参加させてもらうよ。それじゃ」


「それじゃ」


まんぷくテロリスト、飯テロは手を振って、今一度別れた。残ったのは五人とラストルネッサンスの防衛隊。


「じゃあパーティーのための会場と、食糧を持ってこようか。どっちに行く? あたしはあのリス地で会場作り」


「俺もそっちに行こうかな」


「じゃ、じゃあわたしも」


プロペインが承諾。オサムは、今はBBから離れたいと逃げの選択。


「では、私達は食糧持って来ますね。いいですか? ハチさん」


「いいよ。行こう」


そう言ってBBは離れる。オサムは寂しさが迫るのを知る。今更変えられない。BB達二人に目をやりつつ、草食らに着いていった。




そんなまんぷくテロリストのことは後述するとして、次の日の夕方のこと。この事はあとになって五人に伝えられた。


一日で、オールドスランガーズの基地はほとんど壊滅。戦車の下に潰された。残存勢力はゲリラ的に活動するも、飯テロの手を出すまでもない。潰されていった。


そして、最終的に残った基地、マターイツカにて。最後の生き残りである、総隊長、副隊長、ブロンドに作戦を伝えていたメガネが残った。


彼らはすでに敗けている。残されている手段は、この地域からの脱出のみ。オルスラは実質解散。しかし絶望はなかった。


「なぁんか静かですねぇ」副隊長が言った。ちなみに女性である。本当にちなみ。「基地の中にはまんぷくテロリストもいないし、本部とはエライ違いだ」


「あぁ」今度は総隊長のねこが答える。彼らは基地の廊下を行き、外にある車に乗ろうとしている。「ファームシティの戦力は軒並み向こうに回してるのかもな」


「ま、そんなのもう関係ないですけどね!」


「上機嫌だな」


「そりゃあそうですよ! 皆助かるし」誰も助かってない。先の通り解散している。「マーイッカも頑張ってたし。俺も頑張らないと!」


「ああ」


二人は車の下まで来た。メガネが車の前で待っている。三人はどういうワケか上機嫌だった。負けてもネタに走れるので、むしろ嬉しいのかもしれない。


そこへ、車のタイヤが擦れる音。扉が開く音。


ラストルネッサンスだ。銃撃してきた。


メガネが飛び出るもあえなくデス。ねこが咄嗟に副隊長を庇う。


「隊長? 何やってんだよ! 隊長!」


ちなみに全弾貫通しているので庇った意味はない。


「うおおおおお!」


ねこは拳銃で撃ち返す。一人が被弾。一旦銃撃が止む。ラスルネは降りて進む。


「……なんだよ。結構当たんじゃねえか」


ラスルネは茶番をしている二人に頭を下げた。姿勢を低くして通り過ぎる。途中リスポーンしたメガネに「あ、すいません」と言って素通り。メガネはラジオを持って急いでいた。


「そんな……俺なんかのために!」


もうここまで来たか。メガネは急いで音楽を流す。ピアノの曲が流れる。


ラスルネはその間爆弾を仕掛けて部屋から出る。TNTは無線式だ。彼らの手にあるスイッチで起爆する。


外に出ると、誰もねこの事を助けようとしていなかった。しかも倒れている。出血状態でもある。誰か回復剤打てよと思う。


「だからよぉ……止まるんじゃねぇぞ」


なんか変なポーズで倒れている。ラスルネ隊員達は、喜劇を見逃したことを、笑えばいいのか解らない。

合わせて10万字越えてて草

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