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オークと妖精村

 肩透かしを食らったボス戦を抜けた次の階層。そこには花畑と長閑な村が広がっていた。


「……ここは」


「言ったでしょ、ここは私の故郷」


 そう言って、アンネが俺の肩の上で言ってきた。


「ようこそ、賢者の塔、妖精村へ!」


 アンネが手を広げたのとほぼ同時に、一人の影がアンネ目がけて突っ込んでくる。


「あ~~~~~~~~ん~~~~~~~~~~~~ね~~~~~~~~~~~!!!!!!」


「うぷっ」


 すごい勢いで後方に吹っ飛ばされたアンネとその人影は、結局アンネの体重を支えきれず、少しだけ重力に逆らいました、くらいの勢いで地面に墜落した。


「アンネ!?」


「姉御殿!?」


 俺たちが心配して近づくと、少しかすり傷をしているものの、大して気にしていない風なアンネとアンネに抱き付いている体のサイズがアンネとほぼ同じ……要は同種だろうと思われる少女の姿があった。


「アンネ!?本当にアンネだよね久しぶり、だけど最近全く姿見ないし竜帝様から塔の外に出て行ったって聞いた時はびっくりしたんだよでもこうして会えてよかった。何しろアンネっておっちょこちょいで僕たちと喧嘩ごっこしてた時もいつも負けてたし塔の中の感覚で外の魔物にもぐもぐされてるんじゃないかって長老様たちも心配してたんだよっていうかなんか空飛ぶのも下手になった?さっき抱き付いた時もなんか全然対処できてなかったみたいだ……け、ど」


 どうやら、やっとアンネの様子に目が行ったらしい。ぎこちなく目を彷徨わせた少女は、アンネの欠損した羽根部分を凝視した後、ギギギとか音が鳴りそうなくらい不自然に顔を動かした後、茫然としたように口を開いた。


「た……」


「た?」


「大変だ―!?」


 そして大きな声でそう言ったかと思うと、大声で少女はまくしたてる。


「ちょっとアンネ、あんた一体どんな無茶したのよ羽根が完全にえぐり取られてるじゃないってよく見たら腕もなんかおかしいし誰にやられたの?もしかしてここにいる緑の大きな冒険者によくもアンネをこんな危険な目にあw痛っ!?」


「落ち着きなさいフィーネ」


 妖精の少女は、アンネのチョップで沈黙させられた。


「紹介するわ。この子はフィーネ。私の幼馴染で、まあ、何というか私以上にそそっかしいけど、まあ悪い子じゃないわ」


 と、そこまで言うと、痛みから回復したのかフィーネと呼ばれた少女がさらに声を上げる。


「って、そんな話してる場合じゃないでしょ!?そこの緑の冒険者たちが悪くないのは見てて分かったけど、あんたかなり重症よ!早くドクターのところに行きましょう!そこの緑の冒険者の人!ぼさっとしてないでアンネ連れてついて来て!」


 そう言って、割と速いスピードでさっさと行ってしまった。


「……なんかフィーネがごめんね?」


「いや、まぁお前が大けがしてるのは事実だし、治せるなら急ぐに越したことは無いだろ。……とはいえ、今から追いかけても間に合いそうもないし、道案内を頼めるか?」


「勿論よ」


 そうして、アンネの案内で、俺たちは妖精村に入ったのだった。なお、妖精村の入口には門番的な存在はいなかった。まぁ、よく考えなくても塔の住人という意味ではここに住んでいる魔物たちは皆仲間(油断しているとモグモグされる)なのだし、蘇生もでき、必要物資の支給もあるならば、別に門番はいらないのかもしれない。


 聞いてみると、妖精村のあるエリアはセーフフロアに設定されており、基本的には戦闘の無いエリアとして運営されているため、魔物たちもむやみに人や妖精を襲わない者達ばかりらしい。ただし、妖精村の住人に悪事を働くと、これ以降のセーフフロアが入った瞬間モンスター部屋にすり替わるそうだ。地味に嫌だな、それ。


 まあ、別に悪事を働く気もないので気にしないことにした。中に入ると、妖精たちがその姿を現した。


「おぉ、アンネ!」


 その中でも、髭を生やした初老の男性がアンネに気付いて近づいてきた。ただ、どうやら先ほどのフィーネとは違い、幾分緊張、というか警戒感を持っているようだ。


「……オークの方々、アンネをここまで連れてきてくれて感謝する」


 警戒は解けないようだが、それでもその男性は俺たちに頭を下げた。


「貴方は?」


「私は、アンネの父、セルバンと言います」


 それを聞いて、俺が声をかけようとした時、肩に乗ったアンネが呆れたように皆に言った。


「全く、何お互い緊張してるのよ。父さんにしてもグォークにしても。それよりも早くドクターのところに行きましょう。積もる話はその後でもいいでしょ?」


 そう言って俺の肩から飛び降りると、そのままさっさと歩き出してしまった。それを見て、俺とセルバンさんが同時に肩を竦める。


「そうですな、娘の言う通りだ。ひとまず、ドクター……治癒魔法が使える者がいますので、そこに向かいましょう」


「そうだな、案内お願いできるか?」


 そうして、俺たちはドクターの元に向かったのだった。



ということで、里帰り編。アンネちゃんのお父さん登場です。

 賢者の塔という蘇生可能な環境&他種族がいっぱい来るという地理的要因で何とかなっていますが、多分そうでなければ塔前でのいざこざがもう一回あったはず。


 実際、みんな隠れてる。

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