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賢者の塔の一層目

本日2話投稿します

 案内役が決まった後、塔まで旅をしていた装備そのままな上、別に宿に憧れるような生き方もしてきていないので、荷解きをせずにそのまま塔に突入することとなった。


 案内役の青年は、リストと言う名で年齢は14歳。……青年かと思ったが、むしろ少年と言える年齢だった。さらに驚くことに10歳の頃から案内をしているそこそこのベテランらしい。


 そんな少年と共に入った第一階層。そこには、小さなスライムやかなり小さい虫型の魔物たちが暮らしていた。森のような階層だが、気候や地形も非常に穏やかだ。


「ここが、塔の中か。意外と、安全そうというか、なんというか」


「初めて塔に入られる方は大体そう言われますね。でも、賢者の塔って、元々は攻略や試練の為に作られたものじゃないらしいですからね。8階ぐらいまでは、塔の魔物の子ども達が過ごしていますよ。


 そう言って笑うリストに、アンネがウンウンと頷いていた。


「因みに、アンネは何階に住んでいたんだ?」


「私?私は11層だったわ。ただ、塔出身で弱いと行き来自体は結構自由なのよ。まあ、好戦的な奴もいるから、やられる前に目的地に着けるか、ってなると話は変わってくるんだけど」


 俺とアンネが話していると、ボスが周りを見つめて何かを見つけたようだ。


「主殿!お気を付けを!やせてはおりますが、先ほどイヴィルゴートのような姿が!」


 そう聞いて、俺は瞬時に気を張ってボスの向いている方に向くが、何故かそれほど強い気配を感じない。


「……あーもしかして、ボスが言ってるのって、こいつの事?」


 そう言うと、アンネは無造作に飛んで行って、巨大な植物の葉をめくった。すると、そこには巨大な植物と、その木に実った……実った?山羊の姿があった。


「こいつはバロメッツって魔物で、何故か山羊が木の実の代わりに実る植物型の魔物なのよ。因みに肉はカニの味がする……らしいわ。カニの方を食べたことないから分からないけど」


 そう言ってアンネがバロメッツの腹を叩くと、山羊は甘えるようにメェェと顔を摺り寄せて来た。


「カニか……結構美味い……いや、あれはたれが美味いからか……うーん」


 カニと聞いて、食べようかどうか悩む俺だったが、そこでリストが声をかけて来た。


「食糧調達も重要ですが、そろそろ先に進みましょう。あまりもたもたしていると、厄介なのが来ますよ」


 そう言えばあまりレベル差があるところで長居すると強敵が出てくるんだったかと思い直し、俺たちは先に進むのだった。


 殆ど障害にもならない魔物をやり過ごして1時間、俺たちは次の階へと進むための階段の前にいた。そして、そこには何とも不思議な存在がいた。その男は猫のような耳が頭から生えており、そこそこ身なりの良さそうな着物を身に纏い、そして屋台じみた建物でハリセンを叩きながら何かを売っているのだ。


「いやいやいや、どーもおーきに、始めましての方も、毎度お世話になっておりますの方も、今後ともひいきを頼んますよ」


「久しぶりね、エマイ」


「お、そう言うアンさんはアンネちゃんじゃないかね!いや、久しいやないかい!」


 そう言うと、猫耳の男がにこりと笑ってアンネに指を指し出した。そして、優しく指と手を合わせて握手のように振った。


「アンネ、この……猫の獣人……か?彼は一体?」


「心外ですな、あんな奴らと間違えられるとは」


 俺のアンネへの問いかけに、突然憤慨したように言いだした猫獣人?の商人の姿を見てアンネは苦笑しながらも紹介を始めた。


「こいつはエマイ。一見猫獣人っぽくも見えるけど、実際はケットシーから派生したワーキャットの商人よ。エマイ、こっちは、私の仲間のボスとグォーク、それに道案内の……」


「……リスト殿でんな。わーっとります。有名やさかい」


 そう言うと、ワーキャットのエマイはふてくされた顔を引っ込め、俺たちに声をかけた。


「まあ、勘違いは誰にでもあることや、悪気はなかったようやし、今回はええことにしよか。そうや、お前さんら、転移符は持っとるかい?塔は初めてやろ?」


「転移符?」


 俺の疑問の声に、エマイは呆れたようにアンネを見た。


「おいおい、アンネちゃん、こいつらに塔のこと、説明してないんか?ま、ええやろ。なら塔の初登頂のお祝いっちゅうことで一枚づつ渡すさかい、持っていき」


 そう言って、3枚のお札を手渡した。


「これは、鬼道転移符っちゅうもんでな。この塔限定やけど、蘇生した時に装備品とかを保護できる便利なもんなんや。それに、回数制限はあるが、塔の到達階層と、塔の外を行き来できる機能もあるんや」


「蘇生?蘇生が出来るのか?」


 俺の問いに、またしてもエマイがジト目でアンネを見た。


「うぐっ……わ、悪かったわよ。……グォーク達には、確かに言ってなかったわね。賢者の塔は、魔境に数えられてて、その特徴っていうのが、死を望まない者が死ぬ場合は蘇生が自動的に行われるってものなのよ」


 精霊郷も大概だが、賢者の塔もかなりとんでもない場所のようだ。


「ま、そういうことですな。ちゅーても、塔の外から出たもんらは、死んだ段階で塔の外に放りだされるんですわ。装備も最低限で放り出されるんで、この鬼道転移符が有効っちゅうわけですな」


 そう言って、エマイはニヤリと笑った。


「あ、そう言えばエマイ、今竜帝様に会おうとするならどこまで行けばいい?」


「あ、竜帝様でっか?確か、一か月前の配属で……60階層の火山地帯の裏でしたな」


 裏というのは、要は所謂ペナルティで出てくる強敵のことらしい。……というか、2400階もあるのに60階で竜帝様出て来るのか……いやまあ、ペナルティだからいいっちゃいいんだろうが。


 とりあえず、目的階層もはっきりしたため、俺たちは塔を登っていくのだった。

 エマイさんはこれからもちょくちょく出てくるかもしれないし出てこないかもしれません。でてくるとしたら便利アイテム売ってくれる行商ポジション。

 何気に転移魔法的なものが使える有能で、出身は塔ですが、既に独立している感じです。


 獣人とエマイ……というか賢者とは少しごたごたがあったり。特に猫獣人は割と扱いがひどい。

 扱い的には


 蜥蜴獣人>鳥獣人>犬獣人>大型草食系獣人>大型猛獣系獣人>小型猛獣系獣人

 みたいな感じ。


 獣人族はリス・デュアリス内では人権を確保されていますし、権利種族に数えられていますが、別の国では奴隷として扱われていることもあります。大凡大型猛獣系以下に奴隷制を敷いている国が多いです。

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