賢者の塔の二層目
本日2話目です。
賢者の塔2階層。8階層までは子ども部屋だそうなので、大した差はない……と思っていたのだが、少しだけ様相が違った。
「あ、そこ危ないですよ」
そう言ってリストが石を投げると、勢いよく綱が引き上がり、スネアトラップが引き上がった。
「おぉ、罠があるのか」
「2階層からの魔物は、レベルアップを目指す子たちばかりなのよ。だから、弱いなりに罠を使って冒険者を倒そうとするの。賢者様も、この塔に入ってくるのは冒険者だからって罠の設置は推奨してるわ」
なるほど、確かに冒険者の仕事場と言ってイメージするダンジョンとかには結構罠の類がある様なイメージがあるな。実際、俺たちも冒険者対策に罠を仕掛けたわけだし。
せっかくなので、俺たちも罠を見つけながら歩いて行くように決めてみる。すると、よく見れば色が変わっている地面やら、左右に紐が張っている場所やら、様々な罠を見つけることができた。
「結構あるな」
「しかし、主殿にかかれば見つけるのも簡単ですな」
「まあ、生まれてちょっとしただけの子たちが作った罠ですけどね」
リストの言葉に微妙に嫌そうな顔をするボスだったが、実際、本職の罠師なんかが設置した罠を見破るスキルなんてないので、ここはリストに同意していくべきだろう。
「というかそうか、この罠、ここのちび達が作ったんだよな」
周りにいるのは、ベビーゴブリンやら虫歯菌のイメージキャラでいそうな見た目をしたインプ、それにウルフ等四足獣の子ども達だった。
「そう考えると、結構頑張ってるんだな」
そう言って関心していると、頭上から大きな何かが落ちて来た。
ガツン、と頭頂部に衝撃が走り、後ろを振り返ると、どうやら紐に括られた岩が落ちてきたようだ。
「……」
「まちなさい、どこ行くのよ」
「ちょっと、これ仕掛けた奴を見つけて来る」
「落ち着きなさいよ!」
俺の言葉に、アンネが慌てて大きな声で俺を制する。そして、それを後押しするように、リストも声をかけた。
「そもそも、ここの罠を誰が仕掛けたか、なんて分かりませんよ?それに、それで時間をかけすぎれば、あちらの思うつぼ、強力な援軍にやられてしまいますよ」
それを聞いて、俺は深く深呼吸する。
「……すまん、俺も大人げなかった。だが、今からはより気を付けて進んで行こう」
その後、最新の注意をかけて進んだ結果、スムーズに階層を重ねることができた。
まぁ、スムーズと言っても、罠に一切かからず、とはいかなかったが……。
「うう~。すっごいべたべたなんだけど……」
「姉御殿、しばし辛抱くだされ、リスト殿によれば、もう少しで休憩地点のようですから」
落とし穴の前にあった油を引っかける罠に引っかかり、油まみれのアンネがふよふよと浮きながらそんなことを言う。
「いや、私水作れるんだけど……」
「その水を生み出す魔力でできることを考えるとなぁ」
前世の創作物の知識ではあるが、必須でなければリソースをけちるのは間違った処置ではないはずだ。しかも、油を水のみで洗い流そうとするとなると、必要な水量はかなりのものになるだろう。
「さて、ここが休憩所で……気を付けてっ!」
リストがそう言うと同時、彼の目線の先から小さな悪魔が現れ、アンネに向かって指を指した。それを見て、俺は咄嗟に悪魔とアンネの間に入り、アンネを庇う為に立ちふさがる。
その直後、悪魔の手から小さな炎が噴き出し、俺に襲い掛かってきた。
「っぐ!これしき!」
俺は、身に着けた服を脱ぎ捨てると、悪魔を殴り飛ばしにかかる。ワイルドボアも一撃で仕留める攻撃に、幼い悪魔が耐えられるわけもなく、無残な姿……になるわけではなく、ボスが進化した時のような光を発しながらその場から消滅した。
残ったのは小さな羽根が一枚だ。
「……思うに、姉御殿がかかった罠を仕掛けたのは、あの悪魔だったのでしょうな」
てっきり滑りをよくするためだと思ったのだが、どうやら火の回りをよくするという2段構えの罠だったようだ。むしろ、水場のある休憩所があることで、安心した所を急襲するのが本命だったのだろう。
「これは、本当に気を付けないといけないな」
とりあえず改めて安全を確保し、アンネには早めに湖で体を洗ってもらう。
そして、その間に俺は悪魔の落とした羽根を見る。
「……これは……」
「小悪魔の羽根ですね」
「うおっ!?いたのか」
突然声をかけて来たリストに、俺は反射的にそう声をあげた。
「まあ、女性の水浴びをまじまじと眺めるわけにもいきませんので」
「……って、湖の方は大丈夫なのか?アンネを案内しに行ったから、そのまま護衛的なこともしてくれるのかと思ってたんだが」
「休憩所っていうだけあって、ここは塔の魔物達も来ない場所……というか、恐らく非戦地帯として用意されてるんでしょうね。ここで戦闘になることはないので安心していいですよ」
一抹の不安は残るものの、リストが言うならそうなのだろう、一旦アンネのことは頭から追い出して、手の中の物をリストに見せることにした。
「それで、リスト、この悪魔の羽根……だったか。これはその、戦利品ってことでいいのか?」
「その通りです。この塔では、倒した相手は光に飲まれて消えてしまうのですが、その代わり、その相手の体の一部や持っていた物の一部が手に入るんです。例外は、物々交換なんかで双方の同意に基づいてその物品を譲渡した時とかですね。
今回手に入れた小悪魔の羽根はそれほど貴重なものではありませんが、錬金術や魔法薬制作の時の良い材料になるので、需要自体は高いですよ」
そう言って笑うリストに、俺はふとリストとの契約を思い出した。
「そう言えば、俺たちの護衛の条件、塔の魔物の素材を分けるってことだったな、もう少し魔物を倒しながら進んだ方が良かったか?」
俺の何気ない問いかけにリストはにこりと笑って、首を静かに振った。
ということで罠が+されました。因みにグォークが引っかかった岩トラップは初心者ソロとかだと普通に気絶からの集団リンチを経ての死に戻りルートだったり。
因みに40階まではセーフゾーンがありますが、それ以降はセーフエリア(階層全てがセーフゾーン)以外は完全に安全なところがなくなります。
100階層以降は食料や水の確保も厳しくなってきたり。




