表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/261

賢者の塔と案内役

本日2話目です。

 改めて俺たちが賢者の塔の方に向き合うと、集まった冒険者は既に武器を下していた。

 アリシアの宣言も意味があったのだろうが、それよりもアベルが俺たちに話しかけたことが大きいような気がする。


「グォークの旦那。アリシアをここまで連れてきてくれて、感謝するっす。俺が保証人になるっすから、早く賢者の塔に入ってほしいっす」


「いいのか?」


 冒険者を見ながら俺はそう言ったものの、目を向けた冒険者達も、苦笑をしながら道を開けてくれた。


「それなら、遠慮なく入らせてもらうぞ」


 そうして、とうとう俺たちは賢者の塔の門を潜ることになったのだった。


 ……その中は。


「……まるっきり城壁じゃねぇか」


 門に入ると、そこは壁が高いものの、普通に外だった。

 その呟きを聞いたアンネは、俺を奇怪なものでも見るような顔で覗き込んできた。


「……そりゃ、大量に人やら妖精やら知性を持つ魔物やらが日ごとに何百と来るんだから、塔の下に町ができるのは当然でしょ?」


 いや、確かにそうかもしれないが……。ついでに、アベルとアリシアは城壁内に入ってすぐに離脱した。塔の敷地内にはいれば、もうそこから先は信頼できる者しかいない……かららしい。本当はアリシアと積もる話をしたいからだと思う。


「それよりも、案内役を探すわよ。竜のじー……竜帝様に会うためには、塔を少し上がらないといけないからね」


 アベル達と別れてから、アンネは腕を組みながら、小声でつぶやいている。


「確か30……いや、50階だったかしら……」


「何の話だ?」


「いや、賢者の塔って、私みたいな弱っちい奴はいいんだけど、強い魔物に関しては移動に制限がかかるのよ。基本的には強さに応じた階層以下には行けなくなって、例外の階層で特定の条件が満たされた場合にしか降りれないようになってるのよ。まあ、もちろん賢者の塔の所属から外れればその限りじゃないけど」


 そう言うアンネはキョロキョロとあたりを見回していた。


「私が直接案内してもいいんだけど、私はそこまで別の階に詳しくないし、案内がいるといいんだけど」


 そう言いながら歩いていると、今度こそ塔の入口であろう門の前に何人かの人が声を張り上げていた。


「レベル50!レベル50の案内役、案内階層は200階までだ!」


「案内階層1000階まで!頂上を目指すならぜひ頼っとくれ!」


 そんな声が聞こえてきたのでどうやら塔の案内というのが一般的な仕事になっているようだ。


「あ、あの人、あの人に声掛けましょう!」


 アンネがそう言って指さしたのは、一人の青年と言っていい年齢の少年だった。アンネはずんずんと進んで行き、その少年に声をかけた。


「お兄さん!あなた、その帽子は中央村の人でしょう?」


「ええ、そうですよ。レベル1です」


 それを聞いて、アリシアは飛び上がらんばかりに喜び、その手のひらに小さな手を重ねた。


「ぜひ、一緒に塔を登ってくれないかしら!」


「アンネ、勝手に決めないでくれ。こっちは何が何やらわからないんだが」


 そう言うと、アンネはため息をついて説明を始めた。


「賢者の塔はね、自分の適正レベル以上で探索してると、一定時間でその階層以上の魔物が派遣されるように手配されてるのよ。だから、自分のレベル以上の案内役って、登っていくだけならともかく、探索もしようとなると、結構な問題があるのよ。

 で、中央村ってのは、賢者の塔の丁度中央、1200階にある巨大な村で、賢者の塔の休憩場所にもなっている場所なのよ。その上、彼が被っている帽子は、村を往復できる人しかつけられないの」


「……それって、レベル1で賢者の塔の半ばまで移動できるってことか?」


 そう言う事らしい。勿論、それはありとあらゆる塔のギミックや魔物のことを知り尽くしているから出来る所業ではあるもようだが、仮に全てを知っていたとしても、それを実行するのは並大抵のものではないだろうことは簡単に予想できた。


「これは……ぜひ、着いて来てもらうべきでは?」


 そう言うボスに、俺も大きく頷いた。


「確かに、そう言う事なら俺たちと一緒について来て欲し……あ、いや、ちょっと待て」


 俺は少年を手で制してから、アンネにヒソヒソと話しかけた。


”ちょっと待て、アンネ、お前お金とか持ってるのか?”


”持ってるわけないじゃない!私が何回補食されそうになったか分かってるの?森に入る前に持ってたやつも無くしたわ!”


 無駄に自信満々に言い切ったアンネを小突きつつ、俺が振り向くと、そこに青年の顔があった。


「うおっ!?」


「ああ、これはすみません。何しろ、いきなり内緒話をされて気になったもので。お代の相談をされていたようですが、前払いでなくていいですよ。塔を登った際に、貴方たちが倒した魔物の素材の1割を報酬として頂く、というのはいかがでしょう」


 そう言うと、青年はにっこりと笑った。


「それは助かるが……いいのか?」


「ええ、何分、レベル1を維持するためには、魔物たちを倒すわけにはいきませんから」


 そう言って青年はニコリと笑った。というか、そもそもあまりお金を持たない冒険者もいるので、支払いは後払いが基本なのだとか。……取り逸れとかはないのかと聞くと、塔の案内が必要な程度の冒険者に後れを取る気はない、のだそうだ。ついでい言えば、一応そう言った自信がない案内人は前払いにしているがそう言った案内役はそれほど質が高くないとのこと。


 とりあえず、特に問題があるわけではないので、俺たちは青年と共に塔を登ることに決めたのだった。

 次回から塔内に入ります。流石に30階も50階も塔を進んでいる様子を全て書くとかはないのでご安心ください(笑)


 階層移動についてですが、絶対に移動できないというわけではありません。ただ、古参の魔物が目を光らせているので、不用意に階層を移動するとかなり冷たい目で見られます。

 竜帝様に関しては、そのせいで迎えに行きたくてもいけない状況です。彼、変身能力とかないし。


 こうなっている理由は……まあ、魔物側、人間側双方でパワーレベリング的なことを防止することを意図してだったり。ただ、冒険者側には、低階層でわざと居座って、やってきた強者を狩る、みたいなやつもいます。

 ……この塔の制作者は俺ツエ―が嫌いなようです。


 面白かった。続きが気になると思った方は、評価、ブックマークをぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ