オークとラースベア
本日2話目です。
俺とボスとアリシアは、とりあえずアンネ達の居る民家とは逆側に歩いていた。
「あの、主殿、アリシア殿と主殿は、迷いなく進まれていますが、こちらで合っているのでしょうか?」
「それは分からないが、問題ない。ここは精霊郷と同じ法則で動いてるって湖の精霊も言ってたしな」
そう言って、俺はアリシアに振り向いた。
「ところでアリシア……様、なぜラースベアを倒そうとするのですか?」
「?まものがでたらたおすのはきしのつとめだろう?」
……確かにそんなものなのかもしれない。
「と、言うことは、私とボスのみでラースベアを倒すのは……」
「うむむ……きしどうとしては、だれがたおそうが、かんけいない、だが、きしとして、しゃていにまかせてそのままというわけにはいかない!」
「ですよね」
何となれば戦闘時は待機してもらおうと思ったのだが、これは難しそうだ。
「ボス、ラースベアとの戦いのときは、アリシアを守ってくれ、もし、俺たちの手に負えなかったら撤退も視野に入れるからな」
「御意」
そんな話をしながら進んで行くと、あっさりとラースベアが現れた。デカい熊だ、目は血走っており、非常に凶暴そうだ。
幸い、こちらには気づいて居なさそうなので、ぶちかましを敢行する。
「おらっ!?」
攻撃をかますと、ラースベアは勢いよく吹っ飛んでいき。……木にぶつかってピクリとも動かなくなった。
「おや?」
なんというか、手ごたえが全くない戦闘に、拍子抜けするが、簡単なのはいいことだ。これでアリシアとの約束も……。
と思ったと同時、俺の体に衝撃が走り、吹っ飛ばされることになった。
「主殿!?」
「いや、大丈夫だ!それよりも前!」
俺はボスに叫ぶが、本当に大丈夫なのだ、何というのだろうか。大質量の低反発クッションに殴られた、みたいな、どちらかというと掬い上げられ、投げられたみたいな感触での吹っ飛びだった。
そして、それを成し遂げたのは……先ほど倒したはずのラースベアである。
先ほどのぶちかましで多少傷ついていた体は見事に無傷であり、闘気に燃えているようだ。
「ボス!一度剣で攻撃してみてくれ!」
「承知!」
そう言って、ボスが剣を振り下ろすと、これまたあっさりとラースベアが真っ二つになる。
しかし……。
「再生?いや、しかし……」
目を離した気はない、何かを考えて上の空だったわけでもない、だが、いつの間にかラースベアは元の姿へと戻っていた。
「ボス!どう見えた?」
「……先ほど、我は確かに斬ったはず、だが斬れていない?切ったのに斬っていない……いったい?」
「分かった!考えるのはそこまでだ!」
一応仮説を立てることは出来る。この世界が夢の中だとするならば、このラースベアは、夢を見ている者からしたら、俺たちには倒せない存在なのだ。だからこそ、倒したという結果が、無かったことになる。
そして、夢を見ている主だと考えられるのは……。
「ボス!ラースベアを頼む!絶対にこっちに近づけるな!それと、何かあったら呼べ!」
ラースベアをボスに任せ、俺は夢の主……の可能性が高いアリシアに顔を近づける。
「アリシア様……いや、アリシアさん。ラースベアはどうやって倒せばいい?」
「し、しらない!そんなのしらない!あんなこわいなんておもわなかった。ぜったいに、またまける!」
……やっぱりそうだ、アリシアはこの状況を知っている。そして、アリシアにとってラースベアは俺たちでは倒せない敵なんだ。
俺がそれを確認し、アリシアをなだめすかそうと声を出した瞬間、俺の前を影が通り過ぎた。
「主殿!面目ない!抜かれ申した!」
その瞬間、俺の真後ろから、ラースベアの爪が振り下ろされる。恐らくこれを受けても致命傷にはならない、だが、その隙にアリシアを襲われたら……。
そう思っていると、俺とラースベアの間に何かが割り込んできた。
バリバリと鈍い音が響くと同時、ドスンという拳の音が響き渡る。それを成したのは、何とアリシアだ。自分の盾を犠牲にして、俺を守ったのだ。
「アリシア!」
「大丈夫だグォーク!これでも私は、きしを目指しているんだからな!……あれ?でもなんで、わたし……」
攻撃を受けて、怒り狂ったラースベアが再び拳を振り上げるのを見て、今度は俺がアリシアを庇う。
そして、攻撃を受け止めながら、アリシアの言葉に耳を傾ける。
「わたしは、エルナート騎士王様に憧れて……でも、絵本を読んでもらったのはずっと前で……?それで、騎士になって盾でのいなし方を覚えて、でも私は騎士見習いで……」
ブツブツと言いながら何やら考え込んでいたアリシアだったが、その直後、その姿が一瞬にして変化した。
「思い……出した!」
そして、手に持った純白の剣で天を指し、こう宣言した。
「私はオーガ級冒険者アリシア!自由騎士である!」
アリシアちゃん復活!
……ホントに?




