オークと冒険譚
あけましておめでとうございます。
本日2話投稿です。
「おい、ボスちょっと来い」
俺はボスを呼び出して、内緒話の形をとる。理由は簡単、いくらアリシアと言えども、現在は幼女だ。はっきり言って、俺たちについてこれるはずがない、要するに。
「ボス、正直に答えてくれ、お前、アリシアを攫ったな?」
「はい、ここではぐれては、連れ戻すことが困難だと判断いたしましたゆえ」
……はぁ。
「あのなぁ、あっちにはアンネもいるんだ。まあ、誤解はかなり根深いだろうが、それでもまだ、現状はアンネが家に連れ込まれたのを見て突入したこと、アリシアに叫ばれたこと、つまりは過失以外はこっちに落ち度はなかったんだ。説明すれば分かってくれた可能性だってある、だけど」
俺はアリシアを指さして叫んだ。
「アリシアを誘拐したら、言い訳ができないだろうが!!」
キョトンとするアリシアとは対極に、ボスは事態を把握したからか、顔を蒼くしている。
「ま、まさか、そのような事態になるとは……この度の不始末、我の首を差し出すしか……」
「いらないから。それよりこれからどうするか……」
と、ふと俺はアリシアに目を向ける。よく考えれば、アリシアがここにいること自体が不自然だ。いや、夢なのだから不自然も何もないのかもしれないが、少なくとも今までは日常の世界と変わらないように進んでいるように見える。もし仮にこの世界に普通の世界と同じような秩序的な物があるとするなら、幼女になったアリシアが、こんな森の中にある民家に顔を出すなんて不自然ではないだろうか。
「アリシア、お前、なんでここにいるんだ?オークが出たから討伐しに来た、ってわけではないんだろ」
「ふっふっふ、わたしは、らーすべあをたいじしにきたのです!」
ラースベア……直接アンネからその魔物のことを聞いたことはないが、語義からすれば怒りの熊といった所か。なんとも攻撃力が高そうだ。
「それで、アリシアがラースベアを倒すのか?」
「そのとおり!きしみならいのなにかけて!こまったひとをほうっておけないのです!」
…………。あれ?アリシアをどう扱おうか考えていたが、案外普通に話せているぞ?これ、何とかなるのでは?
「アリシア、提案なんだが、ラースベアの戦いに、俺たちも参加させてくれないか?」
「なんで?」
それに返答しようとすると、横からボスが割り込んできた。
「それは……えー。主殿がラースベアを気に入らないからですぞ。森の覇者は我らオークのはず、なのにラースベアなどという奴が幅を利かせている、それが許せない(という設定ではいかがですか、主殿)」
それ、相談してから言って欲しかったなぁ。なんて思いつつ、しかし(その発言がオーク一味から出て来たものでなければ)そこそこ説得力のある話だったため、その設定のまま、話を続けることにした。
「まあ、そう言うわけだ、森の覇者を目指すものとして、他の魔物に大きな顔をさせるわけにはいかないからな」
「なるほど、りがいのいっちというやつね!」
「……難しい言葉知ってるな」
いや、元々の中身は成人を迎えたアリシアなのだから、知っていて当たり前なのだろうが。
しかし、そんな内心を吐露する必要もないので、黙っていると、アリシアの中で何か結論が出たのだろう、またしても棒を俺たちに向けて、宣言してきた。
「よし!それじゃあ、これからお前たちをわたしのしゃていにしてやろう!きしのしゃていはとてもめいよなことなんだぞ!」
いやいや、騎士のそばにいるのは従者じゃないのか?とか、舎弟ってそんな名誉ある称号じゃないだろとか内心突っ込みつつも、俺たちは首を縦に振り、そこに片膝立ちになった。まあ、せっかく承諾してくれたのだ、これくらいは付き合おう。
「舎弟の位拝命いたしました。この身、アリシア様と共に、ラースベアを倒すといたしましょう」
「ふぁぁぁぁぁ……はっ、くるしゅうないぞ!」
……やっぱりいろいろ混じってないか?騎士というか、貴族みたいな返事だったぞ。
「ところで、アリシア様、もしラースベアを討伐できたなら、褒美をいただけませんか?」
「な~に?じゃ、なくて、なんだ!」
「私は、アリシア様について来て欲しいところがあるのです。ラースベアが討伐できた折には、ぜひ我らと共に旅をしてほしいのです」
それを聞いて、アリシアはうんうんと頷いた。
「いいだろう!しゃていのたのみはきくべきってきいたからな!それじゃあ、ぐぉーく!ぼす!らーすべあをたおしにいくぞ!」
「おーーー!」
こうして、奇妙なメンバーでのラースベア退治が始まったのだった。
「……あれ?アリシア様?」
「う、うううううううるさいわよ!びっくりしたじゃない!……だいじょうぶだよね?もれてないよね?」
そう言ってパンツを確認し始めるアリシア……本当に大丈夫なのだろうか。ともかく、彼女の確認を待ってから、改めてラースベア退治に出発したのだった。
多分アリシアちゃん的に黒歴史量産中。




