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オークと騎士見習い

本日2話目です。

「おーくになまえをよばれるすじあいはない!わたしはりっぱなきしになるんだぞ!」


「……アリシア、ちょっと待ってくれ」


「だれがおーくのいうことなんてきくか!!」


 俺は棒と鍋の蓋を振り回すアリシアを手で押さえつつ、少し考えて、こう切り出した。


「おや、アリシアの言う騎士というのは、待ってと言っている者に剣を振りかぶるのか?」


「……ん、それは、たしかに……」


 そうして、もにょもにょと口の中で何かを呟いていたが、キッと俺を見て剣先を向けた(つもりなのだろうが実際は棒の先だ)


「いいだろう!まってやる!だが、みのがすことはできない!まってやるからすぐにすませろ!だけどへんなことをしたらゆるさないからな!」


 そうして、ズン、と棒を地面に突き刺し、仁王立ちをして俺たちを見据えた。……なんだか腑に落ちない部分はあるが、俺の発言が原因の一面もあるから、まあ、いいとしよう。

 俺とボスはアリシアを横目に見つつ、顔を近づけてアリシアに聞こえないように話を始める。


「なあ、ボス、あれ、アリシアだよな?」


「えぇ、確かにアリシア殿のように見えるかと、あるいは血縁の者という可能性はありますが」


 だが血縁者ならアリシアと同じ名前というのはあまり考えられない。もし名前が違うなら、この少女の様子なら訂正を求めるだろう。


「と、なると、十中八九アリシア本人だな」


「ですな、恐らく我や姐さんと同じように姿が変わった状態かと……。精神状態まで違っているようですが」


 ボスも俺と同じように考えていたようだ、アリシアは今正気ではない、恐らくだが、夢で変なことを考えてもそれが正常だと感じてしまう感覚と同じような状態だ。気になるのは、まるでこの場所のことを知っているような発言だが……もしかして彼女の夢だったりするのだろうか。


「……この際、姿が変わっているのは置いておこう。問題はどうするべきかだ」


「最も良いのは保護ですが……ただ切り出しても無理でしょうな。こちらの言葉に耳を傾けますまい」


 仁王立ちをしてこちらをにらんでいるアリシアに、俺たちは揃ってため息を吐いた。と、俺は少し前、精霊郷での戦いのことを思い出した。そう言えば、あいつらも、このアリシアと同じくらいだったよな……。


 今手持ちはないが……いや、逆に考えろ、ここが夢と言うのなら()()()()()()()()()()()()()()()()()は不思議でも何でもない。


 俺は、背後にいつの間にか現れていた荷物袋から、砂糖の袋を取り出した。


「主殿!?先ほど何を?」


「んー、まあ、それは後でな」


 俺は、改めてアリシアに向かった。


「さて、アリシア、待たせたな。だが、俺たちは戦うつもりはないんだ!」


「なんだと!わたしをだましたのか!」


 いきり立つアリシアに、俺は砂糖の入った袋を見せつける。


「その代わり、この砂糖の袋をあげよう、それで見逃してくれないか?それと、できれば君に同行したいんだが」


「…………」


 どうだろう、成功したのだろうか……。ドキドキしながら返答を待っていると、アリシアが大きく息を吸った。


「いやぁぁぁぁぁぁ!?へんしつしゃがいるーーーーーー!!!!」


「ちょっと待てェェェェェ!?」


「貴様ら、やはりオークはオークか!嬢ちゃんの話を聞いて信用しかけていた儂が馬鹿じゃった!」


 もうてんやわんやだった。どうやら、まとまりかけていたらしい老人との話し合いも頓挫したよう……というか、アンネも少し引き攣った顔してるのは気のせいだよな?

 とにかく、事態の収拾は不可能と判断し、俺たちは慌てて逃げ出したのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ふーっ、ふーっ。チッ逃げられたか」


 エイサムはオークとゴブリンの二人組を追いかけ、そして逃がしてしまったことに、悔やみきれない表情を見せた。しかし、気持ちを切り替え、後ろにいる少女を睨みつける。


「で、嬢ちゃん、あれはどういう理由か教えて欲しいのう?お主の話だと、安全なオークとゴブリンじゃったか?」


「いや、私も幼女誘拐とかドン引きよ」


 もう、何というか逆にストレートすぎる一言に、エイサムは毒気が抜かれたように肩を落とす。


「そうか、……まあ、確かに知性があるオークとゴブリンであるのは確かなようじゃが」


「それで、もう少し詳しく教えてくれないかしら、エイサムさん。狂呪熊について」


 そうして、アンネとエイサムは一度民家まで戻ることにし、……そして、気が付いたのだった。アリシアの姿が、何処にもないことに。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「はぁ、はぁ、なんだあの爺さん、強すぎだろ」


 エイサムはかなり強かった。勿論こちらが逃げるだけというのもあるが、普通に弓で連射とかしてきたし、肩に一撃食らってしまった。


「全くですな」


「そうだろう、つよいだろう」


 俺の言葉に、同意するボスとアリシア……アリシア?


「ん?わたしのかおになにかついてる?」


「なんでいるんだよ!」


「おーくをたおすのが、きしのしめいだからだ!」


 そうして、木の棒で俺を叩く幼女に、俺は頭を抱えるのだった。



ロリアリシアは、アリシア本人ですが、本人は夢を見ている状態。なので、

精神→過去回想序盤、絵本を読んでいる時くらいの年齢に経験からくる冒険心を+した感じ。

肉体→過去回想中盤以降、狂呪熊に遭遇したくらい。


 の状態になっています。

 また、あくまでもアリシアの思う夢の登場人物、なので実際の人物と差異があったりします。


 具体的に言えば、エイサムさんはあんなに強くないです。

(強さを示すと

グォーク・ボス>アリシア・アベル>アルトバイアン村のベテラン狩人≧オーク>狂呪熊>エイサム>ロリアリシア みたいな感じ)

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