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騎士と精霊の証

本日2話目です。

「……はふぅ」


「何鏡見てため息ついてるんだ?ナルシストっぽいぞ」


「や、やかましい!」


 大樹の精霊と別れてから(しばら)()つが、アリシアの様子が変だった。恍惚とした顔で証が刻まれた場所を触りまくっていたと思ったら、鏡を取り出して証を刻まれた場所を丹念に眺めたり触ったりしていたのだ。

 因みに、証の刻み方は、頬に手を当てて一分くらいそのままにする感じだった。アリシアの顔にはまるで植物の葉のような模様が浮かんでいる。


「精霊の証というのは、加護と同じものなのだぞ!これこそ騎士の誉れ!最高のステータスなのだ!あぁ、まさかこれほどの幸運に恵まれるとは、オークキングに攫われ、ジュモンジ様……老木さ……に置き去りにされたときは、我が身の不幸を呪ったものだが……きっとこの幸運に出会うための試練だったに違いない!」



 トリップしているアリシアの手を引きつつ、俺は密かに彼女に同情する。うん。こちらとしては助かっているのは確かだが、よく考えればこの人不幸続きなんだよな。今後は少し優しくしよう。


「あぁ、実は私は精霊騎士になりたかったのだ!エルナート騎士王の物語に憧れていてな。湖の精霊に見初められ、その助力を得ながらも、民を守るために精霊と共に力を合わせて強敵に立ち向かって行く!特にアーベルンの崖での戦いはすさまじく数十万の敵に対してたった二人で……」


 やっぱり優しくしなくてもいいかもしれない。俺は、話半分で聞きながらアリシアを引っ張っていった。


 その後の旅は順調で、いくらか出会った精霊達も、大樹の精霊の証を見せるとそそくさと去って言ったり、場合によっては新鮮な果物を持ってきてくれたりと、快適な旅が続いたのだった。


 とはいえ、流石に一日で進めるほど甘くはなかったので、テントを設営し、野営することになった。


「……いや、俺たちは別に屋外でも」


「ふざけるな!貴様らがテントに入らんとアンネ殿もテントに入りずらいだろうが!今までは野宿だったが、私もアンネ殿も一応女だぞ!テントが使えるなら使うべきだろう!」


 テントを二つ用意し始めたアリシアに、2張テントを張ろうとしていたのを止めようとしたら、逆にすごい剣幕で怒られた。なお、テントはスラ爺のところのメイドから受け取ったそうだ。

 とはいえ、確かにアンネがテントを使えるのに使わないのはあまりよろしくない。主に竜帝様に折檻されるとかいう意味で。別に手間以外には特に問題もないわけで、おとなしくテントを利用することにした。


 そして翌日。あくび交じりに外へ出ると、ボスが既に剣の素振りをしていた。


「早いな、ボス」


「これは主様。なに、私のような非才の者は人一倍努力せねばと自覚しておるだけです」


 この向上心はどこから出てくるのだろうと思いつつも、そう言えばこいつは進化前から性欲を忘れるほどにのめり込む変わり者のオークだったと思いなおす。


「努力だって才能だ、いつも頼りにしてるよ」


「……当然です、主殿の為に、この身を捧げるためにこの身を得たのですから」


 何となく速度の上がった素振りを見ながら、俺も何か訓練しようと手斧を取り出したところで、アンネが慌てた様子でテントから飛び出してきた。


「あ!ボス!グォーク!アリシア見てない!?」


「いや、我らは見ておりませんが……」


「俺もないな……ってちょっと待て」


 ふと脳内によぎった予想を、アンネが肯定する。


「この精霊郷で逸れちゃったら、遭遇するのはかなり厳しいわよ……匂いを辿ったってどこかで転移して辿れなくなっちゃう」


 つまり、アリシアが完全離脱したというわけだ。


「それって、アリシアは大丈夫なのか?」


「……アリシアは大丈夫よ。精霊の証を刻んでるから、よっぽど変なことしなきゃ何ともならないわよ。むしろ、問題は私達の方」


 確かに、戦闘を避けられないのは俺たちの方だが、その戦闘についてもそれほど問題はないような気がする。何しろ、子どもの精霊なら甘味で釣れるし、大樹の精霊レベルが出て来たなら話が通じる可能性が高い。どちらにしても交渉が可能ならばなんとかなる様な気がするが……。


「自分たちの代表が記した証を託された人物と別行動をしているよそ者って、一体どうゆう風にみられるかしら」


 俺の楽観的な顔を見たからか、アンネがそんなことを言い出した。

 そんな言葉を聞いて、俺は想像し、顔を顰める。


「まあ、あんまりいい気分はしないだろうな。わざわざ戦いを避けられるように手配したものをガン無視したような形になるわけだし」


「それに、精霊って仲間思いの奴が多いのも特徴なのよね」


 仲間思い、それが何の意味があるのかと考えていると、ボスがいち早く気が付いたのか声をあげた。


「仲間思い。それは、翻せば仲間を見捨てるようなものは信用しない、ひいては精霊との友好関係を考えれば、我々はアリシア殿を見捨てられないということですかな?」


 なるほど、確かにそれならば話は変わるだろう。何しろ、最悪精霊郷を通り切るまで常に殺意マシマシの精霊の猛攻を受け続けなければならないと考えれば、無事に賢者の塔にたどり着こうなど、夢のまた夢だ。


「……まあ、そもそもアリシアが精霊たちに襲われないからって、放っておくってのは論外だしな」


「そうね」


「主殿なら、そう言うと思っておりましたぞ」


 そもそも、俺たちにアリシアを見捨てるという選択肢はない。それに、旅の危険は別に戦闘だけではないのだ、テントや荷物がここにある以上餓死の危険だってある。短い期間とはいえ、一緒に旅した仲間なのだから探すのは当然だ。


「よし!賢者の塔に行くのはいったん中断だ!竜帝様が怒りだす前に、さっさとアリシアを探し出すぞ!」


「おぉ~!!」


 こうして、俺たちはアリシアを探すことになったのだった。

 というわけでアリシアちゃん回突入。


 ……一応レギュラーキャラの予定じゃないんだけどなぁ。


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