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オークと大妖精

本日も2話投稿します。

「こいつらの、保護者?」


 そう聞きながら、俺はじっくりと彼女を見つめる。見た目は、緑の長髪をなびかせた女性だ。服装は、古代ローマ的、と言えば分かるだろうか。あの、クリーム色のカーテンを捲いたような服装だ。

 その女性はにこりと頷くと、3色の精霊達に向けて微笑んだ。


”お疲れさまでした。でも、私が隠れている時は場所を教えてはいけませんよ”


”はーい(^O^)/”


”わかったー”


”がん、ばる!”


 元気よく返事する精霊たちの頭をなでながら、大樹の精は帰るように促した。すると、その瞬間、まるで空気に溶け込むように3人の体が縮み始め、すぐにその姿が見えなくなった。


”さて……あの子たちも帰ったことですし、お話をしましょうか”


 そう言って、大樹の精霊は俺たちに向き合って話し始めた。


”まずは、そうですね、この精霊郷の話でも……”


「少し待たれよ」


 が、その出鼻をボスが折ってしまった。


「その話をする前に、何故貴殿が隠れて様子をうかがっていたのかを教えていただきたい。信頼無き者の言葉など、毒以外の何物でもない故」


「き、貴様!何を言っているのだ、大精霊様の言葉だぞ!謹聴するのが当然だろう!」


 ボスが告げた、よく考えれば確かにそうだ、という質問に、何故かアリシアが噛みついた。よく思い出してみれば、アリシアは大樹の精霊が出てきてから、ずっと手を合わせて祈りのポーズをしていた気もする。信仰対象か何かなのだろうか……ありえそうだ。


「大精霊様は人間を見守って下さる素晴らしい存在で、咎無き高位の存在、無垢にして崇高なお方なのだぞ!それを言うに事欠いて信頼がないなどt……」


”やめてください、……やめてください”


 大樹の精霊は、先ほどまでの荘厳な雰囲気を捨て去り、恥じらう乙女そのままの反応でアリシアの言葉を制した。二度目など、顔を真っ赤にしながら、小さな声で呟いていて、恥ずかしがっているのがまるわかりな反応だ。


”あの、確かにそう言った崇高な精霊達もいるでしょうが、その、私がそれだと言われると……いや、言われてうれしくないわけではないけれど……でも、その。……はっ!!そうじゃなくて”


 何やらブツブツと呟いていた大樹の精霊は、コホンと一息ついて、改めて俺たちに向き直った。


”……コホン。そこなオークよ、あなたの考えは尤もです。ですからお答えしましょう。私は、あなたたちを疑っていたのです”


 その一言に、アリシアは雷が全身を貫いたかのように硬直し、絶望に手を地面に着いた。だが、そんな反応をしたのはアリシアだけで、俺たちからすれば、だろうな、という反応だ。人間のアリシアと妖精のアンネは兎も角、ボスと俺は傍から見れば立派な侵略者だろうからな。


”この精霊郷は、その成立以前から世界中の精霊が集まる場所。そのため、精霊を食べようとする魔物や、実験に使おうとする魔族、あるいは無理やり精霊契約しようとする魔法使い達が後を絶たない時代があったのです。そのため、私達力のある大精霊が他の小さき精霊の子どもたちを守っているのです”


「……子のためというのは理解した。しかし、それなら貴殿自身が我らを試すのが筋ではないか?」


”……私達精霊に、嘘を見抜くような力はありません。勿論、精神を司る精霊等なら話は別ですが、自身で言うのもなんですが、精霊は純粋故に、嘘をついている者かどうかを見分けることが苦手なのです。それ故に、私たちは、小さき精霊達に対する対応で旅人を敵か味方か見分けているのですよ”


 そこまで聞いて、ボスはふむと鼻をならし、大樹の精霊に首を垂れた。


「委細承知した。確かに我らは貴殿らからすれば異邦人にすぎぬ。信頼に足らぬのは我らの方であったというのも、納得できる話であった。故に、改めて貴殿にお頼み申す。どうか、この精霊郷を越え、賢者の塔へ向かう事、お目こぼししてはくれまいか」


”……ふぇ!?え、えーと、あの、その。あ、あ、ああ、うん……じゃなくて。

 ……コホン。そこなオークよ。顔を上げなさい。元々、この精霊郷は誰にも開かれています。私達精霊を害さないというのなら、何処へ行こうとも好きにすると良いでしょう。そして、あなた達が信頼に足る者であるというのは、あの3人の子ども達によって、おおむね証明されました。……甘味で釣るというのがいかにも犯罪者的でもう少し様子を見ようと思いましたが……まあ、問題はないでしょう。ですので、あなたたちが望むのならば、今後精霊郷の住人に客人だと分かるよう、私が証を授けましょう”


「それがあれば、今後戦闘にならないってことでいいか?」


 俺の言葉に、大樹の精霊は鷹揚に頷いた。


”その通りです。我らとしても、敵対しない者にまで喧嘩を売って、反撃されてはたまりませんから、その反応からして、証が欲しいということで構いませんね?”


 俺が頷くと、大樹の精霊は俺に近づいて、その細腕で俺の顔を支えた。


”それでは失礼して…………え?”


 俺の頬を見つめた大樹の精霊は一瞬にして顔を蒼ざめさせた。


”え!?なんで、だってこれ……ふぇ?あ、あの、もしかして、リリスウェルナ様の眷属様……ですか”


「いや、眷属では……いや眷属と言えば眷属なのか?知り合いではあるが」


”ごごごごごごごごごごめんなさい!リリスウェルナ様の接吻をいただけるほどのお方とは露知らず!べらべらと偉そうにしゃべって!許してください!私はまだ吸い殺されたくありません!”


 いきなり土下座をし始めた大樹の精霊をなだめること10分、やっと落ち着いた大樹の精によれば、俺とボスの顔に、魔力で証が記されていたようだ。通称魔王印と呼ばれるそれは、各地の魔王が。「こいつの身元は俺様が保証するから無下に扱うなよ」という意味を込めて忠誠心の高い部下などに施すものらしい。これを無下に扱ったと知られれば最低でも魔王の高位眷属が報復に来る可能性がある程の代物らしい。なんだその物騒なものは。


 結局、色情魔王(お偉いさん)の証と同じところに証を残すのは畏れ多いとかで、証のないアリシアの頬に証を刻んで、大樹の精霊はそそくさと去っていったのだった。


尚、大樹の精霊の感じた衝撃を現代風に換算すると、

 スーパーで万引きGメンがとある人物が怪しいと思って注目してたら、それに気づかれて「実は万引きGメンなんです~」とか何とか言った直後に、その人のかけてる名札に自社と友好関係にある会社の社長秘書だとか何とか書いてたくらいの衝撃です。実際にそんな状況になることがあるのかは知らんけど。

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