オークと最強種
本日、3話投稿します。
「この場は、私に預けてくれないかしら」
そんな声が響いた場所を見ると、そこには男性用スーツに似た服に身を包み、その周囲に茨のような植物を纏った麗人が佇んでいた。さらに言えば出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる、絵にかいたような美女でもある。宝塚美女、とでも言えば分かり易いだろうか。
そんな異様な存在にもかかわらず、その所作一切に脅威を感じない。そんな違和感にある意味恐怖しつつ彼女を凝視していると、最後の力を振り絞ったのか、オークキングが蔓を振りほどきその女性に突撃をかました。
「ぐぉ―ぐ!ゲホッ、エザ共!こいつをゴロサレダグなかったら、おどな!?グォ!アアアアアアア!?」
苦しそうに彼女を人質に取ったオークキングだったが、その直後その巨体は彼女の細腕一本で持ち上げられてしまう。そして、地面に叩き付けられた後に、オークキングと顔を合わせた後ににこりと笑い、声をかける。
「貴方は生物的に正しいわ。産めよ、増やせよ、地に満ちよ。まさに私の一番大切にしていることよ」
その言葉に、喜色を浮かべるオークキングだが、しかし、その直後にその表情が凍り付く。
「だけど、おいたしすぎたわね。他の者の行為を禁じ、相手を思いやることもなく、ただ産むだけの存在とし、そして増えたオークさえも、ただの道具として扱った」
「ぞれは!俺が生きるために!オークが世界に広がるために!ゴホッ!」
「そうね、だから、これは私の個人的な嫌悪よ。恨んでくれてもいいわ。だけど、あなたはこれで終わり」
そう言う間に、彼女の姿が変容し始める。体のいたるところから触手じみた枝葉が出現し、彼女とオークキングを覆っていく。
そして、彼女はオークキングを優しく愛撫し始めた。男冒険者がうらやましそうに見ているが、逆にジュモンジはオークキングに憐れみの視線を向けていた。
「私が死ぬまで吸い殺してあげる」
「ア、アア、アアアアアアアアアア!?ヌケル!オレノチカラガ!?イヤダ、イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ!タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスk……」
その唇を抑え、脳を蕩かせるような笑顔を浮かべる彼女に、オークキングはひくつく笑みを浮かべる。が、許されるはずはなかった。
「だ、め」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
オークキングは絶叫し、そしてその絶叫すらもすぐに小さくなった。植物の蔓が鳴動し、オークキングから何かを吸い上げるように膨らむと、その分だけオークキングが縮んでいく。グォークと比べても巨人と見まがうばかりだったオークキングは、10分もかからずして、哀れなオークのミイラへと姿を変えた。
「さて、久しぶりね、ジュモンジ」
「そうじゃなあ、儂が最後に稽古をつけてもらって以来じゃから、もう200年ほどぶりになるか」
そんな規格外の歓談の直後、彼女はジュモンジに端的に言い放った。
「じゃあ、ジュモンジ、この子たちは私の客人だから、手を引きなさい」
「委細承知した」
あっけなく、本当にあっけなく、ジュモンジは手を引いた。
「おいおい、そりゃないぜ爺さん。妖精の嬢ちゃんは兎も角、オークキングのねぐらにいたオーク共も見逃すってのか?」
「だまらっしゃい若造が!リリスウェルナ様の言うことが聞けぬと申すか!」
「ちょ、ちょっとまて、リリスウェルナって、魔王リリスウェルナか!?」
男の言葉に、ジュモンジは頭を抱えるようなしぐさをしながら、リリスウェルナに向き直った。
「済みませぬ。リリスウェルナ様。儂の教育不足でございます。この男も、悪気があっていたことではございませんので、平に、平にご容赦を」
そんなジュモンジの言葉に、リリスウェルナはからからと笑う。
「もう、いいっていいって、そんな堅苦しいのは嫌いよ。それよりも、先輩風吹かせちゃって、ジュモンジったらカ・ワ・イ・イ♪」
「か、カワイイ?儂がですか?」
「うん、もし時間があれば、一晩くらい相手にしてもいいくらい可愛かったよ」
その言葉に、体中の枝葉を伸ばして歓喜を表す老人に、冒険者達、特にエルフ連中が冷めた目を向けていた。
「と、こんなことはしとれん!皆の衆、はよう撤収じゃ!早くオークキング討伐を報告して、ここに帰って来んといかん!」
ここに来た時とはけた違いのスピードで移動するジュモンジに、冒険者は呆れつつも、後をついて行くのだった。
「……何だったんだ、あのトレント」
「ジュモンジ、確かギルドでも指折りの実力者で、現在はエルフと彼自身で構成されたパーティ”世界樹の苗”として活動している冒険者で冒険者たちの憧れ……のはずよ。勘違いでなければ。あと、種族的にはトレントじゃなくて、世界樹の枝って名前らしいわね」
俺の疑問に、アンネが疲れたように答えた。
「さて、オークキングも居なくなったし、あとの問題は……」
「ん?何か問題があるの?」
「イエ、ナンデモアリマセン、リリスウェルナサマ」
仕方ないとはいえ、ある意味今生最大の厄介ごとに、俺は内心ため息を吐いたのだった。
リシア「……なんで私を置いて行ったの?」
ジュモンジの剣幕のせいで捨て置かれたアリシアさんかわいそう。
☆魔王リリスウェルナ
美しい女性の姿をした魔王で、下品でない程度に淫靡な雰囲気を漂わせています。
基本的には男装の令嬢のような姿に、多数の植物の蔓を身に纏ったような姿をしているか、巨大な茨の繭の中でその身を休めています。
実のところ、パッと見の印象とは異なり、植物系の魔物ではなく、淫魔系の魔物だったりします、なので、光合成とかができない代わりに、ドレインとか精神系の状態異常とかがかなり得意です。
性格は、偏向性の穏健派です。例えるならば、(いるのかわかりませんが)オンラインゲームで愛好者同士で場所決めて決闘おっぱじめるPK共の筆頭みたいな。他人に迷惑はかけないけど、嗜好と倫理観はぶっ飛んでる感じです。
彼女の場合は脳内がかなりピンク色で、「S○Xっていいよね。むしろS○Xだけしてればいいよね。え?人のS○Xを妨害するヤツ?私が干からびるまで絞って殺したげる」みたいな極端な思考回路をしています。ただし、ありとあらゆる性癖を網羅しているので、仮に相手の同意が無かったとしても、NTRとかRYONAとかに関してはわりと寛容です。(本人は絶対に同意を取る※催眠状態にしないとは言ってない)
アンネの説得の際も、一番の説得要素がボスとゴブリナの異種族恋愛の話が一番食いついていました。
ただ、一応穏健派魔王だけあって、人間側にも配慮している面があり、浅層での生態系の頂点がオークなのは、繁殖力旺盛な魔物達の増殖を一定以下に抑えつつ、自身をアホな死因で適当に間引くため、結果として森の外に魔物が溢れ出さないからとかいう理由があったりします。




