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オークと縛りプレイ

本日2話目です。

何とかなった。

 まさかボスの命令能力が言語の壁に阻まれるとは思わなかった。いや、命令を聞かせるような特殊能力は相手が理解しないと効果がないというのは分かっていたので、命令内容がオーク達に理解されないという意味での失敗は十分に考えていた。

 だが、それ以前の意思伝達自体ができないというのは予想できていなかった。


 と言うわけで、何とか意志を伝達する方法を考えるなら、一番に思いつくのは念話だ。念話魔法の利便性はアンネの能力で実証済みであり、言語さえ稚拙なオークであっても意志だけは伝えることができるのはボスとの念話で実証済みだ。


 そして、理解力の影響で具体的なニュアンスなどが分からないにしても、命令魔法さえ通ればオークの日常的にしている行動なら誘発が可能になる。それだけでもかなりのアドバンテージだろう。


 ……とはいえ、これにも当然問題がある。


 オークという種族は、基本的に魔法が使えないということだ。もしもオークが魔法を使おうとすれば、進化してオークメイジという魔法を使えるオークに進化する必要があるらしい。

 そして、そのオークメイジは、一般的にオーク系で進化した際の最上位種と言われているオークキングよりもレアな種族らしい。


 ついでに、アンネ曰く、進化の注意点もいくつかあるらしい。


「進化っていうのは、枝分かれする樹みたいなものでね。根元の方ならちょっと進化の方向性が違っても何とかなることもあるんだけど、ある程度特徴的な進化をしちゃうと、別の方向性に行けなくなることがあるらしいの。例えば私達みたいな妖精が進化する場合は、ケットシーやバンシーみたいな、シー系っていう妖精の中で進化する分には結構いろんな進化先があるんだけど、原初エルフや原初ドワーフみたいな亜人系に近い種族に進化しちゃうと、シー系の進化には戻れないの」


「オークの場合はどうなんだ?」


「オークは魔法適性が絶望的だから戦士系……要するにオークソルジャーやオークウォリアーになった時点で魔法を使えるようになるのは絶望的だって聞いたことがあるわ」


 要するに、ボスを進化させようとした場合は、魔術師系統の種族に進化できるようにするべきだということだ。妖精系の進化で、エルフとかドワーフとかすごく気になる種族の名前も聞こえたが、今は聞くときではないだろう。


 そんな風に考えていると、アンネが悩ましそうに言葉を続けた。


「ただ、オークに思った種族に進化させようとすると問題があるのよね。基本的に進化って、進化条件を満たしてしまえば、あとは本人が進化したい、って思えば進化しちゃうの。そして、勿論だけど進化先が違えば進化条件も違うわけ。さらに言えば、進化先って種族にあったものから条件を満たす傾向にあるから、オークの場合は、私達が進化してほしくない戦士系の種族ほど進化できるようになるのが早いのよ」


 これ以降アンネが話したことも纏めると、以下の5つに纏められるようだ。


①基本的に種族の特性の影響が強い(オークにおいては肉体的な能力が高い戦士系)進化先の種族ほど早く進化できるようになり、逆に種族の特性として苦手な特徴(オークなら魔法系)を持つ進化先ほど進化できるようになるのは遅い傾向にある。


②進化で種族の特性の影響が強い種族であっても、その強化幅が大きい場合は進化できるのが遅くなることがある(オークの場合は、オークソルジャーに進化できるようになってからさらに戦い、経験値を貯めるとオークウォリアーに進化できるようになる……らしい)


④基本的にレベルを上げれば進化できるようになるが、進化に特定の条件が必要な進化先もある。(例えば、一定の同族を従えている必要があるキング、クィーン系統。ある個人に対し忠誠を誓っていることを条件とするナイト、ガーディアン系統。あるいはオークにおいてはある一定の知力を必要とするメイジ系統等)


⑤全般的な能力が底上げされる万能型と呼ばれる進化や、人に近い姿を取る進化は、総じて要求レベルが高い。


 こんなかんじらしい。


 なるほど。基本的には進化をする場合には遅ければ遅いほどいいということだ。因みに、進化するとレベルは減衰するらしい。1に戻るわけではなく、進化に使う経験値と現在貯まっている経験値の差分だけレベルが維持されるそうだ。

 一見すると進化は遅ければ遅いほど良いように思えるが、遅くに進化するのにも問題はある。まず一つが、進化で体のありとあらゆるところが変化すると言っても、その個体が生まれ変わった、()()()()()()ということだ。


 確かに、進化すると寿命が伸びるらしい。だが、それは生まれ変わって寿命がリセットされた、という事ではない。進化する際に若ければ若いほど、残った寿命分進化した後も長生きすることが知られている。


 つまり、最初にさっさと進化すると、元々は弱いまま過ごすはずだった寿命+進化して増加した寿命を使うことができ、次の進化まで行くことができる可能性が高まる、ということだ。


 さらに言えば、この世界における経験値の概念は、強い個体ほど進化に必要な経験値は多くなっていくらしい。例えば、オークで言えばほとんどのオークが進化するであろうオークソルジャーならば、サラマンドラ1匹でレベル1~2へ上がることができるが、その上位互換であるオークウォリアーだと5匹程度は倒さなければ進化できないらしい。


 つまるところ、ボスが進化しないように常に気を配りつつ、ボスよりも強い相手に、ボスが負けないようにサポートしながら戦う必要が出てきたということだ。


「……無理ゲーじゃないか?」


 正直ここらのモンスターで経験値的においしい魔物など、ほぼいない。確かに、以前に比べればサラマンドラがいる分経験値効率は良くなっている。だが、所詮それだけだ。イヴィルゴートはサラマンドラと同レベルの魔物だが、こちらも同レベル止まりで経験値効率は良くない。


 そして、ボスの強さももう一般オークの枠は飛び越えている。そもそもボスが撃退したワイバーンと比べればサラマンドラは格下であり、ワイバーンを下したボスに対して、サラマンドラは物足りない相手だった。


 アンネ曰く、恐らくボスがため込んだ経験値は、最初の進化が可能な程度には溜まっているだろうとのことだ。少しでもレベリングの手間が省け、まだ進化していないわけなので、本来なら喜ぶべきことなのだろうが、それでもレベリングの目途が立っていないのでなんだか袋小路に入り込んでしまったような気持ちになる。


 しかし、そんな俺の顔を見て、アンネが不敵に笑った。


「ふっふっふっ!経験値を上げる方法なら、もう考え付いているわ!」


 そう言って、アンネは植物と動物の皮でできたアイマスクを取り出した。


「要は、経験値っていうのは戦闘に対する新しい経験よ!苦戦が経験値に代わるのだから、こちらから積極的に新しい経験を与えてやれば経験値が増加するってわけよ!」


 なるほど、確かに以前獲物を殲滅した際も、苦戦で経験値が増えたみたいな話をしていたのだから、自分で苦戦を演出すれば経験値が増えるというのも道理だろう。


「ん?じゃあ、なんで俺たちのレベル上げの時はこれ、使わなかったんだ?」


 それを聞いて、アンネは俺をじとりとした目で見つめた。


「……目隠しされたあんたを、私がフォローしろってこと?それとも、私が手足を縛って戦えばいいの?」


 それを聞いて、俺はこそ作戦が育成される側とする側、双方にある程度の戦闘能力がないと成立しないものだと理解した。

 まあ、育成する側が敵を瞬殺できるほどの実力を持ち、育成される側が敵の攻撃を一撃確実に耐えられるような丈夫さを持っていればその限りではないのだろうが、今は考えまい。


「そうなると、ボスに目隠しをして戦わせてみるか?」


 それを聞いて、アンネはまたしても不敵な笑みを浮かべ、その言葉を否定する。


「ふっふっふ。残念だけど、そんなちんけな物だけじゃ足りないわ!見なさい!レベルアップして得た私の真の力を!”重力2倍(グラビティ)!”」


 そう言うが早いか、俺とボスの体に急な重圧がかかる。意識すれば普通に立てるが、重い荷物を全身で受け止めているかのようなダルさが常に襲ってくる。


「私の新魔法”グラビティ”よ。重力を操り、敵を地面に張り付ける魔法だけど、こうして味方に加減して使えば、丁度いいハンデになるわけよ!」


 得意そうなアンネに、俺はため息を吐きつつも頷いた。俺も多少動きずらくなったが、この程度なら動くのに支障はないだろう。戦闘でもし問題があるようなら、その時にアンネに魔法を解除してもらえば、最悪の事態は回避できるだろう。


 そう考え、俺はボスとアンネを連れてレベル上げに行くのだった。

魔法使い、ボス!

……主人公がオーク何人か殺っちゃった後にオークメイジ系統に進化した方が幾分か簡単な気がする。まあ、同族殺しとか主人公はせんだろうけど。

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