閑話 偉大なるオークのボス
ということで閑話です。
閑話の主人公はアンネだと思った?残念!傷持ちオークでした!(誰得)
オーク ツヨイ オーク
メス オーク タクサン
オーク メス オカス
エサ キタ オーク ツヨイ エサ
オーク エサ ナル エサ ツヨイ
エサ ヒル エサ
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その日も、オークの集落はいつもの日常を過ごしていた。雌はすすり泣き、オークはそんな雌を犯す。多少異なることを上げるとするならば、最近よく見かける、雌なのに犯されているところを全く見ない妖精と、その妖精とよくいるオークの姿がないこと。
さらに言えば、その雄オークを追い回している雌オークが、雄オークを探して集落中を探し回っていることくらいだ。
そして、そんなことは集落にとっては些事にすぎない。それどころか、これ以降妖精と雄オークが姿をくらましたとしても、オークの集落に変化などないだろう。事実、雌オーク以外のオークにとって彼らがいるかいないか等全く気にすることなく日常を謳歌していた。
そして、それはこの集落のリーダとなった傷持ちのオークも同じだった。
そんな日常に更なる異変が生じた。それは、オークの集落の上空に、大きな影が落ちたところから始まった。
その場にいるオークが知る由もないが、オークの集落に姿を現したのは、人間たちに亜竜とも呼ばれるワイバーンだった。ワイバーンはその巨体に比べればそれほど強力な魔物ではない。その巨体を空中に浮かべるために他の多くを犠牲にしているからだ。
ただし、それは同じような体格の相手とその巨体でガチンコ対決した場合だ。空中からの攻撃と、巨体から放たれる攻撃はそこらの木っ端モンスターとは隔絶した強さを持つ。具体的に言うと単純な力比べであってもオークより少し劣る程度の力、空中というアドバンテージを最大限利用すれば、オークよりも脅威的なモンスターとされているほどだ。
とはいえ、別に攻撃してきたわけでもなく、空中を飛び交っているだけだ。その数は最初に見えた一体から少しづつ集まってきているが、直接自分に被害がなく、また性的にも食欲的にも挑む理由がなかったオーク達はワイバーンを無視して自分たちがしていたことを続けようとした。
しかし、そこで大声が響き渡る。
「グァァァァァァァ!(戦え!)」
傷持ちオークの叫びが集落中に響き渡った途端、それを聞いたオーク達の半数が顔を上げた。傷持ちのオークが持つ強制力によるものだ。
その力は完璧なものではないが、それでも半数のオークを戦闘の舞台へと上げたことは大きい。
オークとワイバーンが戦うと仮定した場合、一対一で戦うとオークの勝率はかなり低い。偶然にでも地上に叩き落とさない限りオークはワイバーンに有効打がなく、逆にワイバーンは地上に降り立った時にオークに叩き据えられればほぼ敗北が確定する。
しかし、その勝利条件を理解できるのはワイバーン側のみだ。だからこそ、ワイバーンは徹底的に空中からオークを削りに来るだろう。
そんな空中からの攻撃という不利を覆すためには、まずはオーク側の数的不利を解消しなければ勝てるはずもない。
現在、オーク集落の上空にいるワイバーンは10体、そして、戦闘態勢になったオークは15体
これでも、オークの頭脳と相手が上空にいるという不利を考えれば少しオークが不利と言える環境なのだ。
そんな中、最初に戦端を開いたのはワイバーン……ではなくオークだ。とはいえ、彼らオークには武器の装備も投擲の発想もない。
それは即ち彼らの射程は両手を振り回せる範囲……最大限極限まで譲歩しても、跳躍しながら手を振り回して当たる場所程度にしか射程の無い彼らに、空中を舞うワイバーンを攻撃する方法はない。
それゆえオークの最初の攻撃とは、上空の敵に対し手を無茶苦茶に振り回すことだった。絶対に届かない拳を振りかざすのは、滑稽を通り越し哀れさを感じる情景だ。
そして、武術の心得など全くない彼らががむしゃらに拳を振りかざしているというのは、それだけ隙を見せているという事でもある。
案の定、一体のオークが拳を思い切り振り下ろしたタイミングを狙われ、抵抗するまもなく上空へと吊り上げられてしまう。
オークはその膂力をいかして、腕を振るってふりほどこうとするが、ワイバーンとて並みの力ではない。何とかバランスをとりつつ、より高くへと飛翔する。
より激しく抵抗するオーク。そうさせまいと強く肩を掴むワイバーン。二者の力の拮抗は、最終的にオークがワイバーンを振りほどくことで決着する。
……だが、それはオークの勝利ではない。なにしろ、この時点でワイバーンとオークは空高くまで飛翔していたからだ。
身の丈よりも数倍も高い場所から落ちることとなったオークは、巨大な地響きと衝撃をもって墜落した。直後、頭を振ってすぐに立ち上がるものの、その体は無事ではなかった。腕は変な方向に曲がり、足も大きく膨れ、勿論出血もひどいものがある。オークの再生能力を考えれば、これでも致命的とは言えない。が、それは平常時についてだ。魔物として同格とされるワイバーンとの交戦中となれば、それは明らかなハンデを背負うことになる。
ワイバーン側は、地面に落下したオークを見て嘲りの鳴き声を響かせる。そして、新たな犠牲者を求めて、孤立しているオークに突っ込んでいった。標的にされたそいつは先ほどから俯き、微動だにしていない。
これはワイバーンが来る前から弱っていた個体に違いない。そう思ったのか、3体のワイバーンがそのオークに飛びかかる。そして、接触する!というその瞬間、そのオークが吼えた。
裂帛の声と同時に、そのオークは巨大な棍棒を振り回し、ワイバーンたちを打ち据える。
その勢いに驚いたワイバーンは打ち据えられたこともあり、地面に墜落してしまう。それは即ち、オークの優位な土俵に落ちてしまったということで……。
ワイバーンたちがまずい、と空に飛び上がろうとした時にはもう遅かった。四方八方から10体のオークが襲い掛かり、力任せに体中を打ち据える。瞬く間に血みどろになるワイバーンの運命はもう決したも同然だった。
これによって、ワイバーン7匹に対し、オーク14体。3体の仲間を瞬く間に失い、動揺が走るワイバーンたちだったが、まぐれだとでも思ったのだろう一体が落ちた仲間を滅多打ちにしているオーク目がけて急降下を敢行する。
オーク達は地上に落ちたワイバーンに夢中で、こちらへ意識が全く向いていない……はずだった。
そのワイバーンの何が悪かったのか……それはたぶん運と……そしてそのワイバーンの性別だったのだろう。
「プギャァァァァァァァ!?(敵!オカス!オーク!カワリ!)」
「!!!!!!!???????」
突如横合いから現れた雌オークに激突され、尻尾を掴まれて振り回され、地面に叩き付けられた上に翼まで丹念にむしり取られたワイバーンは、戦闘中にも関わらず生殖行為を強制されることになった。
さらに悲劇は止まらない。他のオークに突撃したワイバーンがまたしても叩き落とされたのだ。これにて2匹のワイバーンが戦闘できなくなり、オーク側の戦力はなんだかんだあってさらに2体減って12体。数的にも、心理的にも、オークの方に軍配が上がりつつあった。
そんな状況で、彼らを纏める老ワイバーンは撤退をしようと咆哮をあげようとした。
そもそも、3体がやられた時点で行うべき判断だったろうが、それでもまだ生き残りが多いうちに撤退しなければ本当に全滅してしまう、そう考えたのであろう。
しかし、撤退の声が響き渡る直前、その翼に投石による大穴が開いた。
老ワイバーンは何が起こったのかすら分からず、地面へと落下し、すぐさま頭を踏み潰された。彼が最後に見たのは、片目に傷を持つオークの姿だった。
その後、ワイバーンたちは撤退ではなく交戦を選んだ。どうやら、リーダー格の老ワイバーンが居なくなったため、撤退の判断ができる個体が居なくなってしまったようだ。徹底抗戦の結果、オーク4体を道連れにワイバーンは全滅、もちろん傷持ちのオークは生き残る結果となった。
そして、どこか安堵した雰囲気の傷持ちオークの目の前に、絶望が現れた。
※冒頭部訳
オーク(俺は) ツヨイ オーク
メス(や)オーク(が)タクサン(いる場所)=(オーク集落)
オーク(俺は)メス(を)オカス(犯していた)
エサ(オークでない者が)キタ オーク(のように)ツヨイ エサ(別種族)
オーク(が)エサ(に)ナル(くらい)エサ(その別種は)ツヨイ
エサ(は)ヒル(空を飛ぶ)エサ(別種族)
=俺はボスオークだ。集落で女を犯していたら、空を飛ぶ、オークを殺せる強さを持ったものが現れた。
※オークに一人称の概念がないため、種族を指すオークも、それぞれの個体を指すときも同じ単語を使う。
※ヒルはオークの言葉で昼。転じて昼をもたらす太陽のことを指す。さらにそこから転じて、太陽と同じ場所にあるもの=空を飛ぶものと言うらしい。因みに、対義語の夜も存在するが、月を意味したりはしない。




