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オークと火トカゲ

本日3話投稿します。

 俺の相棒である手斧がうなり、少し小さいワニくらいの大きさをしたサラマンドラが吹き飛んだ。鱗は傷だらけであり、攻撃の衝撃でところどころに赤い欠片となって飛び散っている。


 吹き飛んだサラマンドラを追いかけ、体制を立て直される前に近づいてその首を断ち切った。本日3匹目の討伐である。

 とはいえ、今回は危なかった。最近は戦い慣れたこともあり、比較的簡単に狩ることができたため、相手のフェイントじみた動きに対応できず、腕の一部を食いちぎられるという損害を受けてしまった。

 まあ、オークの生命力にかかれば、既に再生も始まっていたりするのだが、流石にこのレベルの怪我になると数日は腕を自由に動かすのは難しくなるだろう。骨を断ち切られなかったのは不幸中の幸いだ。


 これ以上のレベル上げは危険だと判断し、サラマンドラ狩りを中断して集落に戻る。定期的な狩りにより、戦い方が固定化して来た影響で、最初の頃よりも経験値は得辛くなってきているが、ゴブリンやらウルフを相手にしてきた時に比べれば数十倍の経験値効率を保っているのは間違いない。


 ……まあ、実際には経験値を数値化できないため体感とレベルアップの具合で判断しているに過ぎないのだが。


 現在俺のレベルは4、アンネのレベルは8となっている。そう、実は俺とアンネのレベルは倍の差がある。この原因は、単純に生きて来た時間の問題であるだろう。


 アンネが妖精種らしく幼い姿であり、俺自身に前世の記憶があるので忘れがちだが、俺よりもアンネの方が大分年上である。具体的には俺が0歳6か月程度なのに対し、アンネの方は18歳くらいらしい。俺の前世の年齢だけでアンネの年齢を超えるが、妖精種は誕生時点で小学生程度の知性を持つらしいので精神年齢的には同じくらいかもしれない。


 とはいうものの、一般的な18歳ではなくお嬢様の18歳くらいだろう。妖精種は戦闘力と成長力を犠牲にした代わりに、生活に便利な能力〈治癒、鍛冶、及び高性能な生活に便利な魔法)を持ち、人間たちに天の使いとして崇められる存在らしい(その割には療養所やら鍛冶場やら、給水場で積極的に働いているらしいが、それは仕事というよりは天使から人々への施し的な認識であるらしい)そのため、妖精たちは政府から援助を受けて何不自由ない生活を送っているそうだ。


 そんな何不自由なく暮らしている妖精族だが、アンネに限らず種族の特性として、非常に好奇心が強くいろいろなことを研究する物が多いらしい。人間を積極的に助けるのも、仲良くなった人間から知識を効率的に得るためらしい。

 そして、アンネは好奇心を魔物に向けたらしい。人間の町から飛び出し、死にかけ、助けられて、それでも諦められずにまた飛び出して、そして俺に出会ったらしい。そのため、俺に出会った時点でレベルは6だったらしい。


 まあ、レベルが6だろうが8だろうが、戦闘力的には俺の方が上だ。そんなひ弱な存在にもかかわらずレベルを上げるために必要な経験値は多めのため、妖精は一部を除いて町にしか存在しない種族らしい。


 と、まあ、そんなわけで戦闘においては、俺がメインで敵の攻撃を受け止めて、アンネは水魔法で補助する形で進めている。副産物として得られたサラマンドラの肉はかなり多く、トカゲはトカゲでもイグアナとかコモドオオトカゲくらいの大きさなので毎日がトカゲ料理となった。


 さて、そんな俺たちだが、今のところ見つけたサラマンドラを全て狩っている……わけではない。サラマンドラの繁殖力は非常に高い……が、それは強さの割に、という頭言葉が付く程度。いくら狩ってもどこからか湧いてくるゴブリンや、頭さえ良ければ大繁殖の末に生態系ごと自滅しそうなオークほどの繁殖力はないし、卵の期間もそこそこ長い。

 つまるところ、狩り尽くせばそれで頭打ちになってしまう可能性があるため、狩る量を制御していたのだ。

 具体的には発見後向こうから攻撃してこなければ、半分ほどは見逃していたのだが……。


 何故だか最初にサラマンドラを倒してから次々とサラマンドラの数が増えてきている気がするのだ。当初鱗しか見つからなかったこの場所だが、現在では一時間探せば一匹は必ず見つかるようになってきている。


「……アンネ、やはり何かおかしくないか?」


「またサラマンドラが多すぎるって話?そりゃ確かに数が増えているのは分かるけど、それはこっちの方にサラマンドラの巣があるからって予想を話したじゃない。時期的にはサラマンドラの繁殖の時期なのよ。だから、卵から孵ったサラマンドラが巣立ちの時期を迎えて、新しい住処を求めてこっちに来ているのよ」


 確かに、理屈は通っているように見える。だが、本当にそうなのだろうか? 


 そんな疑問に答えるように、ズシンと大きな足音が聞こえ、真っ赤な巨体がその身を現した。その大きさは生物というよりは家屋と比較したほうが良いような大きさだ。もしも体当たりなどされた日には、オークであっても弾き飛ばされてしまうだろうし、噛みつきを受けたなら生命力旺盛なオークであっても上半身と下半身が泣き別れて即死だろう。


 その、もはや恐竜と見まがうばかりの巨体を持った赤い鱗の存在、要は巨大なサラマンドラは、ギョロリと俺たちを睥睨した。

 

「なあ、アンネ、一つ聞いていいか?」


「……なによ、グォーク」


 悔しそうにそう言うアンネに、俺はそれでも確認する。


「あれは、繁殖地に近すぎてやってきた母親か?それとも突然変異で産まれた特殊な個体か?」


「もしも、繁殖地にもっと近づいてたら、こんな化け物よりも先に、成熟した雄のサラマンダーが襲いに来たでしょうね、だからって、異常個体でもないわ」


 そもそも、気になることもあったのだ。もしもサラマンドラがこの付近に住む固有種ならば、もっと早く俺たちが見つけても良いはずだし、時期的な理由で発見できなかったとしても、何らかの痕跡があってもおかしくはない。


 また、サラマンドラが放つ熱はその場にある植物を枯らしてしまうほどの高熱だ。

 もちろん、その場にいるだけで足元の草が自然発火する……なんてことはないが、数匹が集まっているだけで周囲の温度が十数度上昇するほどの熱量を秘めているのだ。そんな個体が大量に済んでいるのに、森の植生は殆ど変わらないというのはおかしい。温度に適した植物が繁茂している方が自然だろう。


 そして、オークと同等の戦闘力というのも気にするべき場所だった。グォークも無理をすれば森の生物を目に見えるほど殲滅できるのだ。集団で、しかも知能もそこまで低くないモンスターが定期的に大量発生するのなら、この森は死の森になっているはずだ。


 つまるところ、このサラマンドラ達は……。


「森の外から来た、侵略者ってわけだ」


 そう言って俺は、巨大なサラマンドラに向かって殺気を飛ばして切りかかったのだった。

 初めてまともな戦闘です。


 因みにオークの再生力はかなり高く、心臓と脳さえ無事なら大抵の怪我が数週間で治り、部位欠損さえ再生します。ただ、耐久力自体は再生力ほどとんでもなくはない(ただし、ウルフの噛みつきくらいならノーガードで跳ね返す)うえ、弱点を守るなんて発想はないため、心臓や脳を破壊されて死ぬか、再生のための栄養を賄えず、餓死することが多いです。

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