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オークパーティと孤児院

「へぇ、ここがあんたが昨日来た孤児院なのね」


 結局、久々に全員集まった朝の作戦会議は、フィノの乱入と、アンネが孤児院に興味をもったことから半ば中止という形で打ち切られた。

 ただ、オークに物怖じしないという孤児院に皆興味をもったようで、少し渋る俺の意見を封殺して、俺たちは孤児院へ向かうことになった。


 なお、フィノ的にはゴブリナニンジャのリナや妖精のアンネはちょっと奇妙なお客位でそこまで脅威に思っておらず、ボスや蘇芳に関しては「弟分のグォークの仲間だから!」と割り切ったようだ。今日は意気揚々とボスに肩車されてご満悦である。


 というか、案外ボスは子どもが好きなようで、フィノがこちらに関わるようになったあの会議の後から、色々な物で興味を引こうとしていた。


 ……というか、思えばボスとリナは結構な頻度で致しているみたいだが、子どもとかは出来ないのだろうか?フィノへの対応を見るに、子どもが欲しくないというわけでもないのだろうが……今はフィノがいるからそう言うことを聞くのははばかられるが、また聞いておくことにしよう。


 アンネの提案で少し食料品を土産物として買いながら、俺たちは孤児院へと歩く。そんな中で、俺はふと周りの視線に気が付いた。なんだか、いつもよりも視線が柔らかい気がする。


「なぁ、アンネ、なんだか、町の人の視線が優しい気がするんだが、気のせいだろうか」


「いや、そりゃ、フィノちゃんってここらじゃ宿の看板娘って有名らしいし、グォークは昨日も一緒に行動してたんでしょ?それに、ここに来てから結構な日数も経ってるし、それで怪しいけど何もしてこない隣人から、宿の看板娘の知り合い程度にランクアップしたんじゃない?」


 それを聞いて、俺は内心、人の認識って案外簡単に変わるものなのかもな、と柄にもないことを考えた。もしかして、オークのイメージアップにもつながるか?と一瞬思ったものの、野生で襲ってくる個体がいる以上イメージアップした分落差がひどくなって嫌われるだけと思い直した。

 それに、ココでオークへ好印象を抱いて野生のオークに蹂躙される村人や冒険者がいては気分が悪い。


「……ふむ……」


 一応スカー院長の許可はいるが、提案する価値はあるか?俺は孤児院に到着すると、玄関にいた修道女に声をかけ、スカー院長に相談を始めたのだった。


~~~~~~~~~~

 一番最初にそれに気づいたのはリト―だった。巨人族の血を引く彼は背が高くその分視野も広い。彼の目に写ったのは、緑の体にとてつもなく低い鼻、そしてするどいキバ。体には豪奢な鎧を身に纏っている。

 昨日も冒険の話を聞かせてくれて、色々な遊びに付き合ってくれたオークだ!そう喜び勇んで近づこうと一瞬考えたリトーはふと違和感を持って身を隠した。そして、近くにいたシューラとペンデリに小声で声をかけた。


「シューラ、ペンデリ、昨日のオークさんが来たみたいなんだけど、ちょっとおかしい気がするんだ」


 そう言うと、シューラが不可解な顔をしながらリトーを見つめた。


「何言ってるの?リトー昨日のオークさんの匂いなんてしないわよ」


 シューラは犬の獣人でとても鼻が利く。リトーがいくら背が高いと言っても、目視できる距離にそれがいて匂いがしないと断言するというのなら?


 リトーは青くなって自分の手のひらに乗るくらい小さいペンデリに話かけた。


「大変!ペンデリちゃん!昨日とは違うオークが孤児院に入って来てる!」


 それを聞いて、ペンデリはすぐさま頭に手を置いて意識を集中させる。


”助けて!”


 その場に居る……否、その場に居なくても、周囲にいたものすべてにその意思は伝わり、明確な危機感として伝わったそれに、孤児院の大人たちがせわしなく動き出した。勿論それだけでなく、孤児院の子ども達もすぐさま身を隠したり、孤児院の外へと続く隠し扉に集まったりしていた。


 そんなことが起こっていることを知ってか知らずか、そのオークは中央広場の真ん中に立ち、大きく息を吸った。


「我は!オークである!この孤児院の子ども達よ!我はお主らを害したいわけではないのだ!」


 理性的な言葉を吐くオークに、シューラが安心したように出ていこうとするが、それをリトーが押しとどめた。何しろ相手がただ言っているだけのことだ。それを鵜呑みにするにはあまりにも危険……と子どもながらに臆病なリトーはそう判断した。


 それを知ってか知らずか、オークは舌打ちを一つすると、これ見よがしに背負っていた剣を背中から手に持ち替えると、そのままその場で座り込んだ。


 それを見て、リトーはさらに顔を蒼くしシューラも生唾を呑み込んだ。果たして、先ほど顔を出していたら、一体どんな目に合っていたことか……。


 そんな風な絶望的な想像を頭から振り払い、慎重に隠れ場所を調整していると、そこに大音量の念話が届いた。誰からか分からない念話ではあるけれど、今まで受けたことのない念話であることを確認し、受け取った情報は要約すれば単純なものだった。つまるところ”グォークの知り合いのオーク達が非常時の対応を見るためのテストの協力をしただけ”ということが分かったのだった。

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