オークの改革
ここから物語が動き出す……!
……遅くね?
というわけで、本日2話目です。
アンネと話し合いの結果、当面の目的を「オーク族の存続及び、継続的な繁栄が可能なシステムを作ること」と「オークの生態調査とその活用法の研究」に据えて、行動することになった。
それから数日。
「だから、オークの継続的な存続を考えるなら繁殖数を増やすべきよ!そうすればこっちの被検体も増えるし、この森の広さなら、人里に入っていくのも最小限!母数が増えればそれだけ生き残る数が増えるのよ!」
「シカシ、食料ノ問題モアル。マズハ個体ゴトノ強化カ、オーク達ヲ人ノ里カラ離セナイカヲ考エタイ」
俺たちは今後のオークについて、喧々諤々と意見をぶつけ合っていた。
理由はおそらく、俺とアンネの目的が微妙に差があることと、持っている情報の違いだと思う。
俺はオークが簡単に殺されるのを見たくないという思いがある。それはある意味オークと言う種族全体を改革したいという思いに近いし、その思いはオーク一体一体にも親近感という形で表出している。
一方でアンネの考えは、オークをいくつかの群れと見て、最低限俺といくつかの集落さえ残ればそれでOK、ついでに被検体が増えればなおよし、みたいなところがある。しかも、彼女にとって俺以外のオークは人格ある存在ではなく、野生動物程度の認識のようだ。
……いや、まあ、まさに野生動物そのものと言った生態ではあるのだが。
なるべく損耗を減らし、今生きるオークを維持しようとする俺と、どれだけの被害が出ようが、種として存続していれば問題ないアンネ。これでは、意見が食い違っても仕方ないだろう。
しばらくにらみ合った俺たちだったが、少しするとアンネがため息を吐きながら目を離した。
「……まあいいわ、今回はあなたの意見を尊重しましょ。あなたの方が関わりは強いでしょうしね」
「……感謝スル」
「でも!できそうなら繁殖も狙っていくからね!」
そう言うアンネに、俺は苦笑しながら頷くのだった。
一応話し合いが決着し、我に返って恥ずかしかったのだろうか、少し顔を赤くしながら、アンネがコホン、と咳ばらいをし、話を切り替える。
「さて、それじゃあ、オークの強化か移住を狙うわけよね……。武器でも持たせたら?」
「武器、武器ナァ……」
正直、俺もオークに武器を持たそうと考えたことはあった。だが、そもそも俺以外のオークで武器を使っている者を見たことがないし、それ以前に……。
「残念ダガ、アマリ意味ガ無イカモシレナイ。タダノ木デハオークノ拳ニ勝テナイ。ダカラトイッテ、ハモノノ刃ヲ合ワセルナンテコトモ不可能ダ」
「なら、重量があるハンマー的な武器なら……あーそうね。ちょっと厳しいかもね」
もし武器が選り好みできるなら、アンネの言う通り、オークにはハンマーのような重量武器が理想である。
しかし、そもそもこの集落にはハンマーのような物はないし、俺も作っていない。もしも作ろうとするならば、死んだオークの骨を柄にすれば強度は十分だろう。そこらに落ちている石を使えば打撃に使う頭の部分も問題ない。
だがここまでは良いとしても、柄と頭を結びつける素材が無いのだ。植物の蔓を使おうにも、この森に生える蔓は割と細いものが多く、オークの腕力ですぐにちぎれてしまうものばかりだ。
アンネに出会うまでは仕留めた獲物の皮を剥ぐこともできなかったため、動物性の素材もお察しである。
さらに言うならば、オークという種族の体は器用なことをするのに向いているものではないため俺は武器の制作自体を断念するしかなかったのだ。
とはいえ、現在であれば、アンネという技術に優れた者もいる。もう一度やってみても良いかもしれないと、俺たちはハンマーを作ることに決めたのだった。
そして、数日後。この集落で初めて、斧とハンマーが完成した。素材は、オークの骨、俺がいい形に割った石、そして、ジャイアントスパイダーの糸(アンネが最初に捕まっていたあの蜘蛛だ)を使ったものとなった。
俺たちはオークの集落の目立つところにその二つを置き、様子を見ることにした。
「あ、来たわね」
早速一体のオークがやって来て、斧に気付……かない。本来そこにないはずのものでも、オークには関係ないようだ。木の枝だとでも思ったのか、何とも思わず素通りしていった。
それから数十分たったが、オークが武器に興味を持つことはなく、そのまま終わるか、と思ったその時、一体のオークが姿を現した。
「……ゲッ!?」
「ん?あのオークがどうかしたの?」
「イヤ、ナンデモナイ」
それは、例の雌オークだった。俺は少々苦手意識を持ちながらも、しかし知能の高そうな雌オークなら、他のオークと違う結果が出るかもと期待しながら、改めて行動を見守った。
「グォーク!見てみて、斧を持ったわよ!」
そう、雌オークは、今回初めて武器を手に取った!俺とアンネは固唾を呑んで、その様子を見守る。
そして、そんな瞳に見つめられた中、雌オークは……。
斧を、噛んだ。
「えぇぇ……」
突拍子もない行動に愕然とする俺とアンネが見守る中、食べられないと確認した雌オークは、怒りのままに斧を叩き折ると、そのまますたすたとどこかへ行ってしまった。
「アンネ……トリアエズ武器ヲオークニ使ワセルノハ、後回シニシヨウ」
「そうね、あれは無理だわ」
俺たちは、何とも言えない敗北感にさいなまれながら、ハンマーと斧の残骸を回収したのだった。
重ねて言いますが、アンネちゃんは割とイイ性格をしています。
彼女と関わりがあった種族(要は人間)が被害にあっている場合は顔を顰めていますが、ゴブリンやウルフの場合は普通に観察しています。まあ、犬と猫が××してるのを見たら、二度目するか、凝視するか、子どもの目を塞ぐよねって言う話。
研究者なら間違いなく凝視しますよね?研究的な意味で。
一応、知的生命体として認識されている種族がいろいろと加味するとかなりの数に上るため、異種族で××することに関する抵抗感はそれほどでもないのも憤らない理由の一つにあります。
まあ、怒って攻撃を仕掛けても、普通に返り討ちに会うというのが一番の理由ですけどね。




