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妖精少女との日常

少女との共同生活(意味深)

 妖精の少女と出会ってから数日がたった。

 結局、あれからシィラの実の効果が実証され、オークからは襲われなくなった。

 ただ、シィラの実とあれの匂いは相当きつい上に時間が経つと腐って効果がなくなることが判明し、定期的にシィラの実を交換して、彼女が用意した木の籠に入れておくことにした。


 そして、現在俺は言葉を習得しつつ、冒険者への対策を考えていた。


「さて、一応少しづつ確認してはいるけど、もう一度確認するわよ」


「アア、ワカッタ」


 少女の()()に、俺は()()で返事をした。

 どうやら、念話というのはかなり有用な魔法のようで、片言とはいえ、俺は短期間での言語習得に成功していた。声帯の関係もあり、発音については多少怪しいところもあるが、聞き取りに関しては日常会話に問題ないほどの習熟をすることができた。

 と、それは兎も角として、今は彼女の話を聞くことにする。


「とりあえず今話さなきゃいけないのは、今後どうしたいかね。前から言ってるけど、私はオークの生態調査をしたいわ。これだけ安全にオークの生態調査をできるなんてなかなかないでしょうしね。そうすれば塔に帰っても何とか面目が……あ」


 そう言えばと彼女は俺を指さした。


「そう言えば、あなた、名前は?」


 そう言われて、俺は困った顔を浮かべた。


「スマン、名前ハナインダ」


 オークはアホである。協調性も皆無で、オーク語は基本的に言語というか鳴き声である。この状況で名前などあるわけがない。

 因みに、今までは俺が言葉を話せなかった上に、念話で話しかける相手を間違えることはないため、結局主語を抜いて話すことが主流になってしまっていた。……ん?よく考えると、俺、彼女の名前を知らないぞ?


 そこで、俺は彼女に名前を聞くことにした。


「ソチラコソ、ナマエハ?」


「……ああ!そう言えば名乗ってなかったわね。私の名前はアンネよ。よろしく」


 あっさりと自己紹介を済ましたアンネは、指を鳴らして答えた。


「じゃあ、グォークってのはどうかしら?」


「ハ?」


「だから、名前よ。オークのグォーク、なかなかいい名前だと思わない?偶に、オークがあなたにそうやって声かけてるのも見たことあるし」


 ……オーク語で力の弱いオーク、とかいう意味なのだが……さらに言えばその場限りの称号みたいなものだから、一般的な言語に直せば「お前ザコだな」くらいの意味合いである。


 まあ、実際俺自身オークとしてはそれほど強くないし、わざわざ考えてくれた名前を無下にするほど拒否感があるわけでもない。

 それに、実際オークが俺に向かってそう言うこともよくあるし、オーク語での意味を考えなければ理に適っていると言えなくもないだろう。


「……マァ、ソレデイイ」


「あの、不満だったら無理しなくていいわよ?めっちゃ渋い顔なんだけど……」


 その後、半分意固地になった俺が貫きとおした結果、俺の名前はグォークということになった。アンネは不満そうだったが、それだけを話し合うこともできないので、しぶしぶ話を元に戻した。


「それで、グォークは何を目標にするの?」


「……ソウダナ、オレハ、オークヲスクイタイ。アンネトアウマエ、ニンゲンノセンシニ、イッポウテキニヤラレテイルノヲミタ。ソレハ……イヤダ」


 少したどたどしくなってしまったが、俺はアンネにそう伝えた。そして、静かに俺は彼女の言葉を待つ。

 彼女は、少なくとも文明的な生活をしている場所から来たのだろう。そして、俺の前世と同じ程度の理性があるならば、人間の戦士たちは文明側に属する存在のはずだ。


 即ち『人間の戦士にオークが狩られるのは嫌だ』という言葉は、『オークが文明側の人間を狩り易くする』と取られてもおかしくない発言でもある。

 そして、俺が見る限り、アンネはそういう風に俺の言葉の裏を読み取ることができるくらいの頭脳は持ち合わせている。

 

 もしかしたら、彼女との関係はここで終わってしまうかもしれない。だが、ここで俺の思いを言わなければ、遅かれ早かれこの関係も破たんするだろう。


 そんな緊張の中、彼女はあっけらかんと告げた。


「そうね、私もしばらく研究続けたいし、オーク族が存続できるように頑張りましょう!」


 そう言って、アンネは何の屈託もなく笑うのだった。


 

10話超えて初めて名前が出る主人公がいるらしい。


因みに、主人公が前世の名前を答えないのも、些細な理由があります。

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