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オークと妖精少女

本日2話目です。

 妖精少女との出会いから暫く、俺は未だに彼女と一緒に情報交換を続けていた。とはいえ、基本的には彼女の話を聞いていき、俺は”はい”か”いいえ”で答えるだけだ。

 と、言うのも、俺の頭の中に浮かぶイメージ……どうやら彼女の魔法らしいが、その魔法はあくまでも自分の意志やイメージを相手に届ける魔法のようで、俺の意志を彼女に魔法的な力で伝えることは出来ないのだ。


 ただ、こちらとしてはたくさんの情報を得ることができた。

 この場所は、黒き茂みの森。数多くのモンスターが闊歩する、巨大な魔境の端であるようだ。

 そして、彼女はその巨大な魔境の生態などを(おそらく独自に)調査するためにこの森に入って来て、案の定迷子からの補食という極々当たり前の遭難ルートに入りかけていたらしい。


 そもそも、いくら彼女が隠密行動に長けていると自負しているにしても、たった一人でこの森に入り込むのは非常に危険だし、無謀だ。


 いろいろ話していると、まだしばらくこの森で調査がしたい(と言いながらぼそりと帰ったら怒られるとか言っていたので多分家出をして帰りずらいのだろう)とのことなので、とりあえず現在は俺と一緒に行動しつつ、もしかしたら今後役に立つかもしれないということで、俺の言語習得のための協力をしてもらうことにした。


 とはいえ、現時点で集落に向かうわけにはいかない。なにしろ、集落には興奮したオークたちがひしめいているわけで、こんな少女を連れて行ったらすぐさま標的にされてしまう。


 これはしばらくは集落には帰らずにいるか、と考えていると少女がまた魔法で思念を飛ばしてくる。


"あなたの住んでるところって、もうすぐつくの?"


 俺は静かに首を振る。


"それじゃあ、もう少し先ってことね"


 俺はまた、首を振った。

 それを見て固まった少女は、しばらく考えて、いくつか俺に質問(さっきの返事は冗談だったのか、とか、実は定住する住処がないのか、とか)をした後、こう質問を返してきた。


"もしかして、私をあなたの住んでいるところに連れて行くと、何か問題がある?"


 俺は静かにうなずくと、ついでとばかりに俺の下半身を指さしてから、少女の方を指さした。

 大体察したのだろう、彼女は赤くなってそっぽを向いた。


 なお、彼女の要望により、現在俺は兎の毛皮を腰蓑代わりに纏っている。今までは皮をはぐ技術の不足、そもそも集落全体が全裸であることなどから諦めていたのだが、やはり何かしらを身に着けていると落ち着くものがあった。


 そんなことは兎も角、また少女の俺に対する質問攻めが始まった。オークの数、食事、行動範囲、獲物の分配法、それに、一度の行為の時間や、行為に及んでいないタイミングの周期、それに、オークの行動を変えうる事態はどんな時か、などオークに関するかなりのことを根掘り葉掘り聞かれることになった。


 そんな話をした後、彼女は少し考え込み、一つの木の実のイメージをこちらによこしてきた。

(……これは、ザクロ ?)

 まるでザクロのような見た目の木の実と共に彼女の自慢げなイメージが送られてくる。


 なんでも、これまでも数度、オークの襲撃にあったにもかかわらず、オークを討伐することなくほぼ体に異常をきたすことなく逃げおおせることができた人物(全て女性)というのが一定数いたらしい。そして、それらの人物の逃走直前の話には決まってある木の実、シィラの実を食べていたという共通点があるそうだ。


 これだけではただの偶然か、眉唾物の噂でしかなかったのだが、俺の話を聞いて一つの推測が立てられたらしい。

 即ち、オークはシィラの実から発せられる芳香を、妊婦の体から発せられる何らかの匂いと勘違いしているのではないか、という推論だ。


 ……正直逃走者の話と言い、そこから導かれた結論と言い、到底信頼に足るものだとは言えなかったものの、とりあえずシィラの実を探すこと、もしもシィラの実が入手できなかった場合は、諦めて放浪しながら出口を探すことを決めた。


 ただ、そう悩むこともなく、シィラの実自体はすぐに発見できた。何しろ俺にとっては歩きなれた場所だ。直接ある場所を知らなくても、どういったところに生えるか、どんな特徴を持っているかが分かればそれに合わせて案内するのは難しくなかった。

 

 シィラの実を見つけると、俺はまずその実の匂いを嗅いでみる。信憑性の薄い彼女の言葉だが、確かにオークが視覚以外で何かを判別するならば、匂いであろうというのは確かだったからだ。


 ……うん。何も感じない。いや、正確に言えば確かに甘い芳香の中に何やら哺乳類の生物が発する汗のようなにおいがするのは確かなのだが、だから何、という話である。これは俺が雌を孕ませたことがないからなのか、それとも別の理由があるのか……。


"その表情を見るに、あんまり効果は期待できなさそうね"


 彼女が伝えて来た言葉に、俺は静かに頷いた。そして、森の外へと出る手助けをしようと振り向くと……。


"それじゃあ、あなたの精液をその実にぶっかけてみて"


 そんな非常識なことを伝えられた。

 彼女曰く、逃げ出した女性たちがシィラの実を食べたから妊娠していたと思われたなら、そのシィラの実はどこから入手したのか、という謎が浮かび上がる。

 オークは基本肉食性であるし、シィラの実自体に妊娠しているのと同じ芳香がするのであれば、もっとシィラの実がオーク避けとして使われてもおかしくないとのことだ。

 では、彼女たちと、今のシィラの実の相違点は何かと言えば、食す前か後か、そして、行為の最中、彼女たち又はオークの体液に触れていない、という事くらいしか思いつかないということらしい。


 いや、だから、と逡巡する俺だったが、少女が見ているのも悪いから、と茂みに隠れて行ったのを見て覚悟を決めた。……この森、安全そうに見えるところでも蛇とか兎とかいるので、小動物にはかなり厳しいのだ。


 そうして俺の心の何かを捨てて完成した物は、なるほど、何やら自分の精神に訴えるものであった。シィラの実から立ち上る芳香は、俺に庇護欲や独占欲を沸かせるのに十分な効力を発揮していた。

 これがオークの婚姻状態におけるオークの心理だとするならば、この実は十分効果を発揮しているだろう。


 なお、それを指示した彼女は、体液でドュルドュルになっているシィラの実に、内心のドン引きを隠しきれていない表情をして俺を見つめ、取り繕うように成功かどうか聞いてきた。……一瞬彼女をここに置き去りにしようか逡巡した俺は悪くないと思う。


 保管や携帯性のことはまた考えなくてはいけないが、とりあえず彼女を比較的安全に、拠点に連れて行くことができる算段が整ったため、やっと、俺たちはオークの集落に向けて歩き出したのだった。

因みに、妖精少女は清廉潔白な乙女ではありません。

むしろ若干マッドな方に寄っています。

いくら、怒られるのが嫌だからって、オークの集落に留まろうとするやつがマッドじゃないわけないじゃないか。


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