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ダンディ洸一、暴走気味


★第49話目


「しかし、これからどうするのだ?」

ベッドの縁に腰掛けたチェイムが、ふとそう漏らした。


「どうするって、まぁ……逃げ出すしかないんだけど……」

俺はテーブルの上に置かれていたティーセットを弄くりながら答える。

お茶の葉は置いてあるけど、お茶菓子が置いてないとは……職務怠慢ですぞ。

「ただ、街道とかには、既に手配書が回ってるだろうなぁ」


「逃げ出す……か」


「ほい、紅茶が入ったよ」


「ありがとう。でも、何も悪い事をしてないのに、なんで逃げなければならないのか……」

受け取ったティーカップをジッと見つめながら、溜息混じりに愚痴を溢す。

「それに、逃げると言ってもどこへ逃げるのだ?」


「へ?そりゃまぁ、パインフィールドしかないかなぁ」

俺は椅子に腰掛け、砂糖のたっぷり入ったティーを啜りながら呟いた。


「パインフィールドだと?」

チェイムは眉を顰める。

「あそこは敵地だぞ?男爵も追われたし、皇女の私がむざむざ殺されに行くのか?」


「あ、いや……分かるよ?えぇ、分かりますとも。パインフィールドにとって帝国は怨敵だし……でもね、ちょっと誤解している部分もあるかなと」


「誤解?何がだ?」


「え、え~と……その……あそこの連中は基本、良いヤツだから……それにチェイムは既に皇女じゃないし、男爵も帝国を裏切っちゃったワケだし……パインフィールドと立場的には同じじゃないかなぁ~……と僕チンは思う今日この頃です」


「だが私は、あの女魔王や大魔王と闘ったんだぞ」

ちょっとだけムスッとした表情でチェイムが言いながら、カップを差し出しお代りを所望する。


「女魔王って……あぁ、ホリーホックの事か」

空のカップにティーを注ぎながら俺は苦笑を溢した。

「まぁ、彼女はちょっぴり痛い所もある女の子って言うか、幼少期に帝国に国を滅ぼされると言う深刻な体験をしたからねぇ……中々に打ち解けるのは難しいかも知れんけど、その辺は俺がちゃんと頼んでやるよ」


「あの女魔王と会った事があるのか?」


「う、うん。彼女が……実はパインフィールドのお姫さんで、女王に即位したってのは、知ってるよな?」


「それは聞いた。だからこそ、余計に我々を受け入れてくれるとは思わないぞ」

チェイムは溜息を吐き、そしてどこか考えるように、

「しかし、ダイクン殿は一体何者なのだ?口ぶりから察するに、パインフィールドの内情にも詳しいし、あの大魔王のことも良く知っているようだが……」


「あ、あ~……その大魔王って言い方、なんか……ちょっと止めない?」


「何故だ?」


「な、何故って、それを聞くかい?だって彼はただの人間だし……偶々ホリーホックに誤解されて、大魔王とか呼ばれちゃって、そのまま流れに身を任せていたら引くに引けない状況になっちゃった、ある意味この世界で一番不幸な男なワケでして……」

俺はささやかに反論してみるが、

「あの男がただの人間である筈がないッ!!」

チェイムは断言した。


「そ、その根拠は?」


「私には分かるッ!!」

物凄い根拠だった。

洸一、びっくりで御座る。


「う、うぅ~ん……あのさぁ、どうしてそんなに大魔王の事をそんなに恨んでいるのか、ボクにはちと分からんのですが……」


「……アイツは怨敵だ」

チェイムはギュッと唇を噛み締め、搾り出すような声で答えた。

「元はと言えば全てあの男が……あの男さえ居なかったら、私は女魔王を倒せたし、カーレも陥落せずに帝国は平和だったのだ」


「……そしてチェイムはあのヴィンスとか言う男に騙されっぱなしだった、という結末で良かったのか?」

俺は彼女を見つめ、静かにそう言った。

「結果論を言うつもりはないけど……大魔王が居たからこそ、チェイムは誰が敵で誰が味方か分かったと思うんだけど……」


「ダ…ダイクン殿はどうしてそんなに大魔王を庇うのだッ!!」

眉を吊り上げ、少しだけきつめの声。

「あの顔にあの声……どう見ても彼奴は大悪人だぞッ!!」


「……」

どうしよう?

涙でティーがしょっぱくなっちまいそうだ。

「そ、その……俺的には、どちらかと言うと彼は正義の人っぽいような気がするんだが……」


「……ひょっとして、ダイクン殿は大魔王に会った事があるのか?」


「ま、まぁ……会った事があると言うか毎日見ていると言うか……」


「……?」


「お、俺の口から言うのもなんだけど、彼はナイスガイの前にザと言う定冠詞すら付いちゃうような素晴らしき男ですよ?。男だったああなりたい、と街の少年達は常に憧れを抱いちゃうと言うか……」


「ダイクン殿は騙されているッ!!」

またもや断言されてしまった。

「あの男の魔法に掛っているのだッ!!」


「い、いや、だからね、そうじゃなくて……」


「そうに決っているッ!!あの男は悪の根源だ……いつかこの私が成敗してくれるッ!!」

チェイムはベッドから立ち上がり、フンガーと鼻息も荒く叫んだ。


うぅ~ん……困ったね。

チェイムも、ホリーホックと同じぐらい、色々と痛い所があるよね。

しっかし、どうしよう?

このままでは、とてもじゃないが彼女を連れてパインフィールドには行けんぞ。


「……チェ、チェイム」

俺は静かに彼女の名前を呼び、至極真面目な顔で、

「君は間違ってる」


「私が……間違ってる?」


「そうだ。君は、かつて彼と闘った時の事を引き摺って……真実を見ようとしていないだけだ」


「……」

今にも噛み付きそうな顔でチェイムは俺を睨んだ。

険のある瞳が俺を凝視している。

その迫力に、俺様の奥義である土下座が炸裂しそうだ。


「か、彼が……チェイムに何をしたと言うのだ?君が闘いを挑んできて、それで勝手に自爆しただけじゃないか」


「な゛…」


「火傷の手当てもしてやったし、そこまで嫌われるような事をした憶えは無いぞ?」


「だ、黙れ黙れッ!!どうしてダイクン殿がそのような事まで知っているのだッ!!」

マントを抑えている両の拳が、怒りの為かブルブルと震える。

うむ、めっちゃ怖いナリよキテレツ。


「実を言うと……俺はダイクンと言う名前ではない。ましてや赤い人でもない」


「な、なにッ!?」


「俺の名は……神代洸一。そこはかとなく哀愁漂う思春期男子。好きな食べ物は鶏の唐揚げ。嫌いな食べ物はナス。その辺はスケボーに乗った某名人と一緒だね」

そう言って俺は、そっと兜を脱ぎ、ニカッと気持ちの良い笑顔を溢したのだった。



「ンな゛ッ……」

チェイムちゃん、絶句。

何が起こったのか分からない、と言うような顔で俺を見つめていた。

だが、明らかになった正体への驚きは、やがて裏切りから怒りへと変化し、眉が急激にカーブを描いて行くと、

「き、貴様は大魔王ッ!!」

長い黒髪を振り乱し、今にも頭から噛み付きそうな勢いで吼えた。

「い、今まで……騙していたのかッ!!」

叫ぶや腰に下げた剣を掴む動作をするが、彼女は丸腰だ。

「チッ…」

そして短い舌打ちの後、テーブルの上の花瓶を引っ掴み俺に向かって構えた。

もちろん、片手はしっかりと胸を隠している。

「正体を隠し、私に近付いた理由はなんだッ!!」


いやぁ~ん……超荒ぶっておられますね。

「あ、いや……別に隠していたワケじゃなくて、単に喋る機会を逸してしまったと言うか……おっかなくて話せなかったと言うか……」


「……」


「そ、それに、近付いたのには特に理由は無くて……ただ、助けがいると聞いたもんだから……」


「……」


「あ、あのぅ……チェイム?」


「……私の名を……軽々しく呼ぶな」

彼女は静かに言った。

「肉親にも……姉にも……婚約者にも裏切られ……そして……」


「や、だからね、俺は別に裏切るとか、そう言った事じゃなくて……」


「もう……誰も信じない」

彼女はそう呟くと同時に、いきなり音も無く間合いを詰めるや、力一杯俺の頭目掛けて花瓶を振り下ろしてきた。


「――ッ!?」

普通の男だったら、多分これで人生にザ・グバッイを迎える所だが、伊達に俺は、まどかや真咲姐さんに鍛えられてきたワケではない。

それこそ、血と汗と涙と小便と体中の体液を垂れ流しながら修行と言う名目でボコられて来たのだ。

花瓶だろうが刃物だろうが、彼女達の拳に比べれば全然怖くないやい。


俺は殆ど反射的に彼女の手首を掴み、そのまま体を入れ替えるように投げを一閃。

チェイムはクルッと綺麗に弧を描き、床に叩きつけられた。

――ドスンッ!!

重い音が部屋中に響き渡る。


「い、いきなり、なんちゅう攻撃を……僕チャンを撲殺する気ですかい?」

俺は仰向けになって倒れているチェイムに向かって、ヤレヤレと言った具合に肩を竦めるが、

「……」

彼女は半ば心ここに在らずといった態で、ただ黙って虚空を見つめているだけであった。

その瞳は、虚無の色に彩られている。


「お、おい……チェイムさん?もしかして……頭でも打ちましたか?」


「……ろせ」


「はい?」


「私を……殺せ」


「……へ?」


「もう……独りで生きて行くのには……疲れた。だから……」


「あ、あほぅか、お前は?」

俺は横たわるチェイムの脇にヤレヤレと言った感じで腰を下ろし、ボリボリと頭を掻きながら心底呆れた口調で言った。

「あのなぁ、寂しいとか孤独とか……そんな理由で死のうなんて、お前は文学者か?」


「……」


「死んじゃったら、それこそずっと独りなんだぞ?それでも良いのか?第一俺には、不殺の誓いがあるでござるよ。ま、うっかり殺しちゃう場合もあるけど」


「……」


「あ~……なんだ、今のチェイムは独りじゃないだろ?ナッシュの爺さんもいるし、ヘナチョコな男爵もいる。無論、この神々しささえ漂う偉大な俺様だって側にいるじゃないか。だからちっとも孤独じゃないだろ?」


「……でも、お前は敵だ」

チェイムは静かに言った。


「い、いや本当に困ったな、もう。……だからね、何度も言うけど、それがそもそも間違いなんだって。さっきも言ったけど、俺はごく普通の人間で、偶々成り行き上大魔王って事になっちゃってるけど……別に世界を征服しようとか人間を家畜ヤプーにしようとか、そう言う事は考えたこともない訳でして……」


「……」


「それにさ、助けた時に言ったじゃないか。何があろうと、この俺様が守ってやるってな」


「あ……」


「だから、チェイムは決して独りじゃないんだぞ?」

俺はそう言いながら、ゆっくりと手を伸ばし、優しく彼女の頬を撫でた。

「まぁ、今すぐ味方だと思わなくても良いけど、それでも敵じゃないんだから……もう決して、自分から死のうとか言うな。俺様も、時には怒りますよ」


「だけど…」

彼女はまだ何か言うとしたが、俺は不意に彼女の頭を掴み、ちょっと強引にその愛らしい唇を自分の唇で塞いでやった。

自分でも、どうしてそんな事をしたのか分からない。

分からないが、何となく、彼女には温もりが必要だと思った。

婚約者に裏切られ、実の親や姉にも疎まれて、人間不信に陥った彼女には……誰かが傍に付いていなければならないと思った。

もちろん、それは同情などではない。

俺自身、心のどこかで彼女を愛しいと思ったからと言うのと、後は……俺様若いし、この世界に来てから禁欲生活を続けていたから。

いやもう、上手くは言えないが、何かこう、心の底から突き上がる衝動と言うのか、いきなりムラッと来たと言うか……ホント、怖いね思春期って。


「――ッ!?」

驚き、俺の肩口を強く押し除けようとするが、その力が段々と弱まって行く。


チェイム……

彼女の唇は、何故かとても懐かしい……

遥か遠い昔を思い出させるような、そんな感じがした。



そっと唇を離すと、

「ンフゥ…」

彼女の口から甘い吐息が漏れた。

潤んだ瞳で俺を見つめるチェイムの頬は、少しだけ上気している。


ぬはッ!?か、可愛い……

愛しさが怒涛の如く込み上げてきた。

と同時に、脳裏に怒り心頭のホリーホックと、悲しそうないづみチャンの顔を過る。

ごごご、ごめんなちゃい……

心の中で土下座しつつ、俺は今の気持に正直に生きる事にした。

そう、今を生きるのだ。


「チェイム…」

そっと彼女の名を呼び、長く艶やかな黒髪を撫でる。

「俺が、ずっと守ってやるから」


「大魔王……」


「違うよ」

俺は彼女の耳元でそっと囁く。

「大魔王じゃなくて、神代洸一だ。洸一と気さくに呼んでくれぃ」


「コーイチ?」


「うん。呼び捨てで構わないから……」

そう言って、俺はもう一度彼女の柔らかい唇を奪うと、

「ん…」

チェイムは少し震えながら俺の髪に指を差し入れ、まるで離れないようにギュッと頭を抱き締めてきた。

「ん…んふぅ…」


熱い彼女の唇が、俺の脳を痺れさせる。

チェイム……

そっと唇を離し、彼女を見つめ、そして3度目のキス。

だが俺の人生は、その辺のエロゲーのように、順風満帆に進むほどスィートではない。

「チェイム……」

今まさに、俺の手が禁断の聖地である彼女の膨らみに触れようとした瞬間、

―――ドンドンドンドンッ、ガチャ!!

「守護天使様ッ!!ピッケンズ、ただいま戻りましたッ!!」


「やはっ!!は、早かったねぇ」

俺はベッドに腰掛けながら、入って来た男爵に片手を挙げてご挨拶。

ちなみにもう片方の手は、猛り始めた下腹部の将軍を抑え込んでいるのは言うまでも無い。

そしてチェイムはと言うと、彼女は椅子に腰掛け、優雅にティーを啜っていた。


「いやぁ~、偶々通りでエバ達を見掛けたもので……って、守護天使様?何か怖い顔をしてますが……」


「……気のせいだ」


「そ、そうですか?それに殿下も、少しお顔が赤いようで……まさかお熱でも?」

「……気のせいよ」

チェイムはつっけんどんに言った。

「それよりピッケンズ男爵。そなた、私を騙していたな?」

「は、はい?」

「こ、コーイチの正体を……私は知ってしまったぞ」

「ふへッ!?」


「ま、まぁ……ナッシュの爺さんが合流したら全てを話すから……あんまり男爵を責めるな、チェイム」

俺はそう言って、彼女に向かって苦笑を溢す。


「う、うん……分かった。その代り、ちゃんと全部……話してくれる?」


「もちろんだよ。チェイムにはその権利がある」

俺がそう言うと、彼女ははにかみながら頷いてくれた。


「あ、あのぅ……何だか妙にホンワカとしてますなぁ」

男爵は少しだけ困惑した顔で俺とチェイムを交互に見やる。

「私がいない間に、何かあったのですか?」



夜も深まった頃、ナッシュ老人が疲れた顔をして合流してきた。

「いやはや、親衛隊の者ども、家中を引っ掻き回していまして……抜け出すのに一苦労でしたよ」


それから俺達6人、チェイム・ナッシュ老・ピッケンズに御婦人二人は、僕チャン待望の夕食を大部屋の方で頂くことにした。

その席で俺は、自分の正体と今までの経緯を語り、これからの事を相談するのだが……

「……なるほど」

黙って話しを聞いていたナッシュ老が重々しく頷いた。

「まさかダイクン殿……あ、いや、ジンダイ殿でしたな。貴方が大魔王だったとは……」


「まぁ、大魔王とか言われているけど、その正体は見ての通り、御町内でも徳を極めたアバタールとか呼ばれているナイスガイなんだがね」

俺は食後のデザート(大好きなアップルパイ)を頬張り、そう答えた。


「そうですわ。ジンダイ様は私の目を治して下さいましたし……」

「私の命も助けてくれましたからね」

と男爵夫妻。


「しかしピッケンズも、まさか最初から帝国を裏切ってたとはな。話してくれても良かったものを……」

「す、すみません伯父上。色々と、ありましてなぁ」


「あ゛~……男爵は密偵の仕事を引き受けてくれたから、俺が黙ってるように頼んだんだよ」

俺は大きく膨らんだ腹を擦り、幸せな溜息と共にそう言った。

「ま、でも、その男爵のおかげで、チェイムを取巻く陰謀を防げたワケだし……結果的には良かったと俺は思うぞ」


「ですが、代りに反逆者となってしまいましたな」

ナッシュ老がどこか苦虫を噛み潰したかのようにそう言うと、俺の隣に座るチェイムは少しだけムッとしたように、

「こ、コーイチがいたから私は生きてるんだ。それに帝国には、もうなんの未練も無い」

「ひ、姫様…」

「わ、私はもう、姫ではないッ」


「あ~……そんなにキツイこと言うな」

俺は苦笑を溢しながら、彼女を窘めた。

「ナッシュ老は、チェイムの事が心配なんだよ。君もそのぐらいの事は分かってるだろ?」


「だ、だって……ナッシュはいっつも、私を子供扱いする」

少しだけ唇を尖らせ、どこか拗ねたような顔で、チェイムは俺を見つめた。


う~む、そう言う所が子供っぽいんだが……

でもまぁ、お兄さんは可愛いから許しちゃうぞッ!!


「ハハ……それだけチェイムの身を案じてくれてるんだよ」

俺はそう言いながら、彼女の豊かな黒髪の上に手を置き、ポスンポスンと軽く撫でつけた。

長い髪から、とても良い匂いが漏れてくる。


「んふぅ…」

チェイムは目を細め、気持ち良さそうな顔をして少しだけ俺に擦り寄ってきた。


「な、何だか……物凄い勢いで仲良しさんですなぁ」

ピッケンズは苦笑しながらポリポリと頭を掻くが、ナッシュ老人に至っては今にも卒倒しそうだった。

歳が歳だけに、ちと危険である。

「ひ、姫様……な、なんとはしたない。ジンダイ殿は恩人とは申せ、目下帝国と抗争中のパインフィールドの実質的指導者なのですぞ」

「私はもう、帝国とはなんの関係も無いと言ったであろ。それに、これからはコーイチが守ってくれる。そう約束したんだ」

「ひ、姫様ぁ」


「あ゛~……なんか話が横道へ逸れちゃいそうだから戻すけど……」

コホンと咳払いをし、俺は真面目な顔で皆を見渡した。

「これからの進むべき道だが、俺は元よりパインフィールドに戻らなければならない身だから良いとして、男爵はどうする?」


「私は既に帝国を裏切り、守護天使様にお仕えする身です。出来ましたら、何卒、妻共々パインフィールドへと」


「そうか。まぁ、それは仕方ない。で、チェイムは……」

チラリと俺は隣の彼女に目をやると『あぁ゛?言わなくても分かってるだろ?』ってなスパルタンな感じの視線を返してきた。

「ま、まぁ……当然ですよね。で、ナッシュ老とご夫人はどうする?」


「……姫様が行くのでしたら」

姫様付き質の執事の老人は、難しい顔をして頷いた。


「そっか。だったら明日の朝一で出発、と言う流れで良いかな?」


「それは構いませんが、主要街道は封鎖されている可能性がありますぞ?」

ピッケンズが重々しい口調で言った。

「それに下手をすれば、パインフィールドへ向けて進軍中の第三軍団と鉢合わせになる事も考えられます」


「むぅ……そっか。かと言って、遠回りしている余裕はないし……まぁ、いざとなったら突っ切って行くしかないだろうなぁ」









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