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ソウルズ!麒麟覚醒篇  作者: オレンジタイフーン


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1/12

#31


 

本当に悲しい時は…


切ない時には…

 

人は……………

 

『嘲笑うんだ………』

 



 

 

「………嗚呼、月だ。」

 

 

 

 

見る者の心を吸い込んでしまうような紫色に染まる不思議な月夜であった。

 

 

 

 

「こんなにも美しい……… 

いつも…いつもなんだ。

 

君は………

 

………罪な存在だな。」

 

 

そう独り言ちた若者がいたのだった。

 

 


 

 

歳の頃は…楓くらいの高校生ではなかろうか。

 

 

彼は泣き疲れ…喉を枯らして、ガラガラと…しゃがれた声で呟いた。

 

 

誰に語りかけるという訳でもなく、ゆらゆらと焦点の定まらぬ…ぼんやりとした虚ろなる瞳で、月を…月だけを、ただ…ただ見続けていたのだった。

 

 

 

彼の第一印象は…絶世の美少年と言って、差し支えはない。

 

 

 

彼の長く伸ばした艶のある青みがかったサラサラの黒髪は…無造作に紫色のヘアバンドで束ねられていた。 

 

 

さらに…水晶みたいに澄んだ緑色の瞳は…異国の人間のようにも見えた。

 

 

 

 

「ハハハ…なぁ……私は生きているのか?」

 

 

 

嘲笑するかのように自棄になっているかのようにも見受けられた。

 

 

 

「ハハハ…月よ!

 

………なぁ、月よォォォ!! 

コイツは悪い冗談だ…そうだ、悪夢だよなぁ。

 

ハハ…ハハハハハ…ッ!!」 

 

 

月を眺めていた……

 

こんな時だと言うのに…月を見つめていた。

 

 

月を見つめていれば…何もかも忘れられそうな気がしていた。

 

 

 

いつだったか………

 

無性に月が見たくなった…恋しくなった時があったのであった。

 

 

鏡月(きょうげつ)は…深夜、自らの通う学校の屋外プールに忍び込んで…水中から見上げた月の美しさを思い浮かべていたのであった。

 

 

 

今…見上げている月も、あの時の儚さに憂う月に似ていた。

 

 

何故だろう………

 

月の輪郭が…ぼやけて見えるのだった。

 

 

あぁ…それは間違いなく瞳に溜まる涙の仕業だろう。 

 

こんなにも空っぽなのに…流せる涙が尽きないなんて………

 

 

どれだけ…泣けば……悲しみは癒えるのか………

 

 

 

彼の名は…紫雲鏡月

(むらくも・きょうげつ) 

 

室町時代以前からある由緒正しき…紫雲神社の次男である。

 

 

 

しかし…現在…彼は鮮血に塗れていたのである。

 

 

 

いつも…日の高いうちは、幼い子供たちがボール遊びや鬼ごっこ…かくれんぼ等の外遊びを楽しんでいる広い広い境内。

 

 

今は…空襲にあった後のように破壊され、ボロボロとなった境内………

 

 

その境内の石畳、そこら中に血溜まりがある。

 

 

鏡月は…境内の真ん中で弱々しく膝を抱えて座り込んでいたのであった。

 

 


 

 

今もなお…指先に残る感触と兄の断末魔の残響が…… 

彼の心を暗い暗い闇へと… 

復讐に燃える鬼へと変貌させていくのだった。

 

 

大好きな兄だったらしきモノを…

 

その自らの手により亡き者としたのだ…葬ったのだ。 

 

兄の身体を貫く閃光の刄を伝わってきた感触が…

 

その生々しいまでにリアルな感触が鏡月の心を蝕んでいくのだった。

 


 

 

願わくば…今宵の惨劇が起こる前まで時計の針を戻せたらと思う鏡月なのであった。

 

 

鏡月は静かに目を瞑るのであった。

 

 

「せめて…愛しき魂達よ!安らかにあれ」

 

 

今宵…天に召された父…母…兄…そして…あどけなさの残る可愛い妹を弔おうと。

 

 

夜空に輝く月は…無慈悲な程に美しかった。

 


 

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