市場
「よし、これで3個目の[懐中魔力灯]の完成だ」
俺は早朝に魔導具店で素材を買い足して
宿に戻り魔導具作成をしている。
今日は夜から露店をしようと思っているからだ。
王都の規則でも夜に露店をしては駄目というわけではないらしい。
ダグさんがいうには治安が多少悪くなるようだけど…とりあえず試しとして開いてみることにした。
「冒険者のためになる魔導具を作りたいよな…」
試行錯誤しながら魔導具を作成していく。
「お姉ちゃ〜ん!昼食だよ〜!」
扉の向こうからベルちゃんの声が聞こえる。
そういえばこの宿でお昼を食べるのは初めてだな。
一階に降りるとけっこうな人数の客がいる。
食堂としてもこの宿は人気なようだ。
宿泊者用の席に座る。
「はいっ!昼食です!」
ベルちゃんが昼食を持ってきてテーブルにおくとそのまま俺の隣りに座る。
ベロアさんがベルちゃんの昼食を持ってきた。
「一緒に食べるんですか?」
「うん!お姉ちゃんといっしょにたべる!」
昼食はボールウサギのサンドパンと野菜のスープをベルちゃんと一緒に食べる。
「お姉ちゃんはお昼食べたらどこか行くの?」
「ええ、市場を見に行こうかと思っています」
主に果物系を見てみたい、薬水の味を増やせるかもしれないからな。
「ベルも一緒にいきた〜い」
どうしよう…困ったな。
「ベル、カエデさんを困らせちゃ駄目よ、夕方になったらお母さんと一緒に買い物にいきましょ」
「うん!」
ベロアさんナイスフォローです。
ベルちゃんと会話しながら昼食を食べ終え、宿を出る。
さて市場を見てみるか。
×
中央広場から西に行くと市場がある。
以前行こうとした七神教会のトンガリ屋根のようなのが見えている。
機会があったら行ってみよう。
「すっごい人混み…」
芋洗い状態の一歩手前という感じだ。
とりあえず近くの店から見ていくことにする。
「あ、ナードベリーが売ってる…でもコレは…」
鮮度が悪いな色が黒ずんでいる。
他には…
「この果物は初めてだ。ナードチェリンてやつか」
さくらんぼのような果物
…でもコレも鮮度がいまいち。
この店は諦めて隣の店に行く。
「ここは…香辛料かな?」
唐辛子っぽいものや塩、砂糖などの品揃えから推測する。
「なるほど。薄味が多いわけだ」
香辛料は全体的に高めだ。これでは飲食店とかでは使いにくいだろう
比較的安いのは塩くらいだ。
「このトリンガというのは買っておくか」
これは薬の材料にもなるようだ。
なので唐辛子のような香辛料トリンガを購入。
乾燥されているので鮮度に問題なしのようだ。
他に数点の香辛料を購入し次の店に行く。
「しかし鮮度がいまいちだよな」
寄る店のすべての鮮度がいまいちなのだ。
「せっかく見たことない果物があるのに…」
鮮度によっても薬の質が変わるので妥協したくない。
今度は果物店のようだ。
「リゴナ…林檎に近い果物か…おっ!これは鮮度がいいかも」
ようやく鮮度のいい果物を見つけたので購入する。
「ナシャン、これは梨かこれも大丈夫だ」
これも購入。
どうやらこの果物店は鮮度にこだわりがあるようだ。
「これはスイケ…スイカかな。季節感がバラバラだよな、流石は異世界」
もちろんこれも購入決定。
これで薬水の味を増やせそうだ。
果物店を出て更に歩くと肉屋が多く並んでいる通りに入る。
「日本じゃありえないな」
吊るされている肉、肉、肉で山積みされた肉もある。
衛生面平気か?と心配になる光景。
見たことのない肉ばかり、角鼠、ボールラビ、マルウシなどなど…
「まー、もう角鼠とかは食べてるから平気なのかもしれないけどさ…」
品揃えはどの店も似た感じ、肉屋通りは通り過ぎることにした。
「ドラゴン肉とかあったら興味あるんだけど…」
あったとしても高級品なのだろう、と考えていると…
「あ…なんか嫌な感じがする」
そう、嫌な気配を感じた。
「泥棒だ!」
先の方の肉屋で店主が叫ぶ、店主の視線の先には逃げる泥棒らしき男が手に袋らしきものを握っている。
「売り上げ金か…」
毒魔法は…万が一があるか、なら植物魔法の出番だな。
男の逃げる先に花屋がある。
「あれだな蔓薔薇」
植物魔法を使うには媒体がいる。
植物を異常成長させ操るのが植物魔法だ。
「ソーンバインド…」
ボソッと呟き植物魔法を行使。
蔓薔薇が蠢きだし花屋の前を走り抜けようとした泥棒に巻き付く
「いてててぇ!ぎゃああ〜〜!」
巻き付いた蔓薔薇の棘が痛いらしい…自業自得である。
肉屋の店主や他の店の店主達も集まってきた。
どうやら市場全体で自衛をしているようだな。
その横を通り過ぎていくと骨董店のような店があり入ってみることにした。
「ん〜…骨董店というよりは中古店かな」
錆びついた鎧に錆びついた剣、使い古された革の鎧に使い古されたランタンなどが商品棚に並べられている。
それを新米冒険者らしき人達が品定めしていた。
どうやらこの店は新米冒険者に人気な店のようだ。
樽の中にたくさん入れてある剣を見てみる
「すっごい錆、でも表面だけか…一本銀貨1枚」
この中古武器を魔導武器化して売るのもいいかもな。
錆びた剣一本と錆びた槍を買うことにした。
「盾も買うか…」
ぼろぼろの木の盾、でも壊れてはいないな。
錆びた鉄の盾も売っている。
「これも買おう」
総額銀貨6枚を払い店を後にする。
「そろそろ露店の時間か…」
日が暮れそうだ。
市場を眺めながら露店の場所に向かった。