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12)領民と新領主2

「ラインハルト侯は、控えめな方です。ここまで褒められると気恥ずかしいのでしょうね」

手元の手紙を眺めながらライマーは言った。手紙には必ずと言って良いほど、ラインハルト候への感謝、彼が常に傍らに置く彼の想い人である黒髪の女への感謝、二人がこれから故郷の領主となることへの期待が書かれているのだ。


「こんなに凄い人なのか」

手紙を受け取った者の言葉も無理はない。

「素晴らしい人ですよ。無敗の竜騎士です。我々の最高峰である王都竜騎士団団長に任命される前年から、御前試合で毎年優勝されています」

「前の試合ってなんかあったんじゃ」

「えぇ。私を助けて怪我をなさったので、準決勝で試合が止まってしまったのです。私の命の恩人です」

「宰相代行でもあらせられる。彼がその地位に就任されてから、貴族間での贈収賄が減っているというから素晴らしいものだ」

別の竜騎士も加勢した。


「凄い人だな」

「えぇ、素晴らしい方です。最強の竜騎士であり宰相代行も務め文武両道、政治の場では公明正大、私人としては清廉潔白、貴族の鑑です」

心から敬愛するルートヴィッヒをライマーは心の底から褒め称えた。


「奥方様を大事にしているみたいだしね。うちの人に見習わせたいよ」

無論、そんなことを言われているとは本人達は知らない。今も広場で、物珍し気に竜の周りに群がる子供達の相手をしてやっていた。


「ラインハルト候の肩車か。いいな。俺も子供ならやってほしいな」

「えぇぇ、領主様の、うちの子じゃないか」

竜騎士の言葉を聞いて、外を見た男は慌てた。


「いや、気にするな。ほら、お二人ともそんなことで、どうこうおっしゃることはない」

止めに走ろうとした男を竜騎士が制した。

「避難所でも、いつもあのように、子供達と過ごしておられる」

「はぁ」

子供達の甲高い笑い声が聞こえてきた。


 ルートヴィッヒが子供を肩車している横で、アリエルも背に子供を背負っていた。

「おじちゃん、竜騎士なの」

「そうだ」

「ねぇ、強いの」

「弱くはない」

「とても強いのよ」

「竜丁」

「いいではありませんか。団長様。他の竜騎士達の身にもなってください」

「ねぇ、どうやったら、おじちゃんみたいに竜騎士になれるの。俺、竜に乗って飛んでみたい。塔よりずっと上だろ」

少年は町で最も高い教会の鐘楼(しょうろう)を指した。


「読み書きと計算と剣の稽古、高いところを怖がらないこと、何より、国王陛下への忠誠が必要だ。王都では三年に一度、竜騎士見習いの募集がある。募集基準に達していたら、見習いに採用される。見習い訓練の後、必要な基準に達したら竜騎士になれる。来年募集はあるが、お前くらいの年ならば、その次だろうな。西方竜騎士団は、少し落ち着けば来年にでも募集が開始になるだろう」

「ねぇ、それって難しい」

「簡単ではない」

「じゃぁ、おじちゃんすごいんだ」

答えに詰まったルートヴィッヒの横でアリエルが笑った。


「ルーイ、素直に褒められておけばよろしいのに」

「慣れない」

仲睦まじい新領主夫婦だと、領民たちは受け入れて行った。


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