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30)西の問題児達

 間もなく、ヨアヒムに伴われ、五人がやってきた。

「遠路はるばるお疲れ様でございました」

出迎えたのは、今は竜丁をしている先代の王都竜騎士団団長のゲオルグだ。


「これはこれは、先代の王都竜騎士団団長、ゲオルグ殿。自らのお迎えとは、ありがたい。息災でいらっしゃるようで何よりです」

「ヨアヒム殿、今は私はただの引退した竜騎士ですよ。恐れ多いのはこちらです。竜丁も半ば引退したようなものです」

「ラインハルト侯は」

「侯爵家の屋敷の調査です」

「竜丁殿もご一緒ですか」

「えぇ。庭を掘り返すと、(くわ)を担いでいかれました」

既知の二人は旧交を温めあった。


「は、女連れで調査だと、ばかばかしい」

「まったくです」

聞こえてきた声を二人はあえて無視した。

「では、西方竜騎士団の方々は、御前試合会場の竜舎を臨時でご使用下さい。王都竜騎士団の竜舎には、現在空きがありません」

「馬鹿な、歴代で最も少ない人数しかいないんだ、空いているはずだ。使わせろ」

竜騎士の一人が叫んだ。


「いえ、空いておりません。今後の建築に必要な材木や石材をこちらに置いております。他、支援の物資などありますので、本当に空きなどございません。ご確認されたければご案内いたします。御前試合会場の竜舎は、これから宿泊される騎士団の宿舎に近いですから、便もよいと思われます」

「ゲオルグ殿、先代団長である方に、わざわざご丁寧にご説明をいただき申し訳ない」

「いや、何をおっしゃいますか。ヨアヒム殿。引退した身ですよ」

「ご謙遜を」


 ゲオルグは先代の王都竜騎士団団長だ。若い五人は、ようやく目の前の偉丈夫が誰かを理解したらしい。威勢は虚勢だったのか、大人しくなった。


 竜舎には、本当にそこかしこに資材が置いてある。アリエルに頼まれ、ハーゲスと一緒に昨日までの間に運び込んでおいた。

「いや、出来た嫁さんだ」

いつかのアルノルトと同じことを呟いた自分に気づき、ゲオルグは苦笑した。


 ルートヴィッヒから、彼らの竜に御前試合会場の竜舎を使わせると言われたとき、ゲオルグは顰め面になった。ルートヴィッヒの意図が推測できたが、納得できなかった。ルートヴィッヒが案内するようにといったのは、御前試合会場にある竜舎の中でも最も不便な場所だ。水場からは一番遠い。


 アリエルのように、竜が水桶を(くわ)えて自分で運ぶならば良い。だが、あの距離を水桶を抱えて歩けといわれたら、今のゲオルグでもつらい。問題があるとわかっている西方の竜騎士達が真面目に水汲みをするとは思えなかった。


「やりすぎではありませんか。竜が不憫です」

ゲオルグの言葉に、ルートヴィッヒは頷いた。

「御察しのとおりです。水も藁も近くにはありません。今のままであれば、騎士団から分けてもらう必要があります。彼らが頭を下げるかどうかですね。ライマー達は、寝藁など、自分達で業者と交渉しました。私に西方竜騎士団の予算でなんとかならないかと申請してきました。業者に近くまで運んでもらったようです。一度、解約させましたから、彼らは全て最初からです」


 ライマーは王都に残った。今は王都竜騎士団の兵舎にいる。他の四人は、彼らと入れ替わりに西方に帰った。西方竜騎士団の気風が変化することを、ルートヴィッヒは期待している。


「しかし、あの場所では竜が不憫です」

ゲオルグの言葉に、ルートヴィッヒが微笑んだ。

「ゲオルグ。あなたのお手を借りれば、竜を巻き込まずにすみます。ご協力願えますか」



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