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遅くなってしまいました。読んでくれたら嬉しいです。宜しくお願い致します!


 翌朝、絵莉は家族が寝静まる中、1人、台所でココアを飲んでいた。明け方の午前5時近くに真梨が家に来ることになっている。一緒に自転車で占い師がいた場所に行くのだ。


 ひんやりとした朝の新鮮な空気が僅かに開けた窓から入ってきた。ラジオから悲しいニュースが何回も伝えられていた。朝から、一々、感情を揺るがすニュースを伝える理由が分からない。釈然としない。人は罪深いと擦り付けてくるみたいで腹ただしい。


 「明るい世界にしよう。わざわざ落ち込みたくないし、墓穴を掘るようにして暗くなるというのは一種の甘えなのよ。愛だけを知らせてよ」と絵莉はラジオを消しながら自然に呟いた。

真梨からラインがきた。


 『おい、絵莉って娘は、いるかい?』


 『誰?』


 『おっはようー!真梨でぇーす!到着』


 『今、行きまーす』


 絵莉が静かに玄関で靴を履いていると、飼っているメス猫の『アン』が絵莉の横に来て座った。


 「アン、おはよう!留守番ヨロシクね。可愛い子タンだからさ。ねっ!」と絵莉は甘えた声を出してアンにキスをした。


 絵莉は扉を開けて真梨に投げキッスをすると「真梨っぺ、おはよう。さっそく行こうぜ」と絵莉はマンテンバイクに股がって親指を立てて言った。


 「絵莉、お菓子食べる?チョコレートとね、クッキーとね、ごま塩せんべいとカステラを持ってきたの。あとさ、昨日買った『美少女戦士・エリカ』のマンガの5巻も持ってきたよ!」と赤いリュックサックを背負う真梨はピクニック気分で言った。


 「ウソ〜!5巻発売していたの!やった!貸して」


 「うん、良いよ〜」と真梨はリュックサックを下ろして中からマンガを取り出して絵莉に渡した。


 「ありがとー!」


 「絵莉、チョコレートを食べる?」と真梨はチョコレートを手渡そうとした。


 「真梨、ごま塩せんべいをちょうだい。さっき、ココアを飲んできたのよ」


 「ごま塩せんべいは美味しいよねー」と真梨は喜んで絵莉にごま塩せんべいを手渡した。


 「美味しいね」と絵莉は3枚も続けて食べた。


 「塩っけがあると喉が渇くわね。真梨、ちょっと、一回、家に来ない?」と絵莉はマンテンバイクを降りながら言った。


 「別に良いけどもさあ、気が変わならない?」


 「なりそう。既に、真梨と家で一緒に遊びたい」と絵莉は気分が変わってきていた。というより、妙な不安感があったのも事実だ。


「遊ぼうか?どうする?」と真梨も気分が変わっていた。


 「一回、お茶を飲んでから出掛ける事にしよう」と絵莉は玄関を開けながら言った。


 アンが『あれ?もう帰宅したの?』と首を傾げて絵莉を見ていた。


 「アン!おはよう!相変わらず可愛いね!ウフフ」と真梨はアンの頭を撫でながら頬擦りをして言った。


 絵莉と真梨は茶の間でお茶を飲んでいた。テレビを付けるとおっさんが消えたニュースが大々的に流れていた。


 「改めて消えた瞬間を見ると、やっばり凄いよね」と絵莉は唇を噛み締めて言った。


 「私、あの時はマジックだと思って拍手をしたけども、今は凄く怖い」と真梨はクッションを胸に抱えて震えながら言った。


 「大丈夫よ!」と絵莉は真梨の背中を擦って落ち着かせようとしていた。画面が辺りを映し出した。二人はテレビに近付き僅かに映った占い師の姿と若い男ね佇む姿を目に焼き付けた。

 「行こうか?」と絵莉は立ち上がって言った。


 「うん。絵莉が拘る訳が何となく分かるような気がする」と真梨は何かを感じ取っているのだろう、絵莉の顔を見つめて言った。


 絵莉は真梨の後に続いて自転車で着いて行った。


 絵莉の家を出て道路を左折すると直ぐに左側に細い小道が現れる。

 その曲がりくねった小道をしばらく自転車で走ると時間帯からして出勤前の車が並ぶ交通量の多い新道へと出る。


 上手く交通渋滞を交わしながら今度は新道を西へとひた走る。


 50メートル先にあるスクランブルの交差点の手前を左折すると、大衆食堂の店があって後はひたすら5丁目先までを走れば問題の場所に辿り着く。時間にして28分間自転車を走らせた。


 占い師がいた場所には何の痕跡もなかった。


 真梨が詳しく当時の状況を説明しながら辺り一体を歩いた。


 「ここに占い師、手前にハンサムな男、ここから7メートルくらいのあの道路に消えたサラリーマンがいて、私たちは野次馬から少し離れたここにいたのよ」と真梨が絵莉の手を引っ張って説明した。


 絵莉は奇妙な何かを感じていた。胸が熱くなり目を閉じた。


 「絵莉、どうした?具合悪いの?」


 「気分は何ともない…」


 「絵莉、顔色が悪いよ」


 「真梨!下がって!!」


 「えっ!?」


 横断歩道に黒いマントを身に纏う男がいた。

 男は二人に向かって歩いて来ると、左手に持っていた小型の杖を二人に向けてきた。

 男の杖から光が溢れて緑色の陰鬱な光線を放った。

 絵莉は咄嗟に自分のマンテンバイクを浮かばせて光に向かって投げ飛ばした。

 光線とマンテンバイクがぶつかると雷鳴に似た音が耳に響き渡った。遮断された光線が僅かに明滅をすると萎むように消えた。


 男は薄ら笑いを浮かべると杖を二度振りかざした。青色に変わった陰鬱な光が速度を上げて絵莉の方向に向かってきた。


 絵莉は真梨を抱き締めると20メートルほど宙に浮かび上がり、右手を男に向けて「ギャボッグ」と呪文を唱え男の歩みを止めた。

 男は強ばったまま動けない。 


 絵莉は更に黒焦げのマンテンバイクを浮かばせて男にぶつけた。男は手で頭を覆うがマンテンバイクは何度も激しい当りを繰り返した。


 男は焦った顔をして耐えていた。

 絵莉はしつこくマンテンバイクをぶつける。


 男は絵莉を睨み付けると何かを呟いた。左手の杖が浮かび絵莉に向かって飛んできた。


 絵莉は真梨を抱えたまま地面に着地をするが、杖も方向を変えて誘導弾のような速さで絵莉に標準を絞りロックする。


 絵莉は真梨を後ろに隠し両手を広げると大きな声で「カルケディプ」と怒鳴るように叫んだ。

 金色に光輝く、大きさにして7メートル程のドーム状の結界が張られた。

 絵莉は冷徹でクールな瞳をしていた。


 真梨はしゃがみ込んだまま、人が変わった絵莉を黙って見ていた。


 杖は結界を破れずに地面に落ちた。


 結界を解いた絵莉は男の姿を探した。

 すでに男の姿は消え去っていた。絵莉が結界を張った時に動きを止めていた魔法が解けたのだろう。


 絵莉は辺りに不審がないか警戒しながら見回した後に真梨に顔を向けた。


 「真梨…、大丈夫?」と絵莉はおずおずとした態度で真梨に話し掛けた。


 「大丈夫…」と絵莉は小さな声で言った。


 『ああ、正体がバレてしまった。魔法が使えるとバレてしまった。魔法使いの家系、血筋を受け継いだせいだ。普通の家系に生まれたかった。たった独りの親友を失いたくはないよ。大好きな親友を。友達を。泣きたいのに泣けない、このもどかしい気持ちが居たたまれなくて非常に辛い』と絵莉は涙ぐみながら真梨に微笑んだ。


 「真梨、ごめん…。私、魔法が使えるの」と絵莉はうつ向きながら言った。

 『今後の生活が怖い。差別や偏見の目で見られる覚悟が出来ないと思う。男子には、毎日、怪物と罵られそうだし。困った』と絵莉は思っていた。


 「絵莉……」と真梨はゆっくりと立ち上がって、自分のお尻の埃を払い落とした。


 「こんな私を嫌いになったでしょ?」と絵莉は泣きながら真梨に言った。


 「絵莉…」


 「うん?」


 「絵莉、凄いじゃーん!!なんで隠していたのよー!凄いじゃん、凄いじゃん!!私の身近に魔法が使えるの人が居たなんて凄い凄いじゃーん!!透視でテストのカンニングとかも出来そうじゃん?絵莉、何で隠していたのよ?空を飛んだしさ、カッコいい。マジでクールで超カッコいい」と真梨は普段通りにバシバシと絵莉の肩を何度も叩きながら笑っていた。





つづく


ありがとうございました!久々の更新でした。読者様の反応があればとても嬉しいです。続けれるように頑張ります。




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