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僕を恐れるがいい

最新作の投稿です。読んでくださる読者の皆様が心配している絵莉についてですが、現在も所在が分かっていません。宜しくお願い致します。

 「艷夢が燃えてしまった。街は死んでしまった」と僕は呟くしかなった。この呟きに非難の声を浴びせる者はいなかった。

 

 艷夢は都会だ。およそ290万人の人が暮らす大都会で素晴らしい街だ。

 

 僕は紋絽病院(もんろーびょういん)の窓を開けた。艷夢は瓦礫の山、完全に崩壊の街と化してしまった。

 

 謎の襲来に怯える人々は我先にと車に乗り込んで郊外まで、或いは見知らぬ土地を目指して脱出を図ろうとしていたが、道路は渋滞で身動きができず、至るところからクラクションの合唱が聞こえていた。

 

 郊外付近の道路は軍隊によって完全に封鎖されていて、警護している兵士を振り切ってまでも逃げる者がいたならば『迷わず射撃せよ』とのニュースがナースステーションにあるテレビから繰り返し流れ続けていた。異世界の魔人や魔法使いや悪魔の使いが紛れ混んでいる可能性が高いというのが射撃命令の理由だった。


 僕は食い入るように音声の無いテレビを見続けていた。

 

 ナースステーションには看護師が独りもいなかった。

 

 まったく動かなくなった女性が通路に横たわっていた。

 

 毛布すら掛けられていない。僕は入り乱れる病棟を掻き分けて行き、倒れている女性の傍に行った。

 

 女性の年齢は30代半ばくらいだろうか? ビジネススーツを着ていて化粧も綺麗にしてあった。女性の瞼から一筋の涙が零れているのが確認できた。僕は女性の顔をしばらく無言で見つめ続けた。僕はゆっくりと女性の前にしゃがみ込んで手を合わせた。既に女性は死んでいた。まだ体には温もりが残っていたが、次第に青くなる顔からは命の灯、魂における意思なるものと、生気が未知なる暗黒の彼方へと消え去ろうとしていた。

 

 「お母さん、お母さん、苦しい、死にたくない、私、まだ20歳だよ! 死にたくない、お母さん、助けて、苦しい、苦しい、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、お母さん、怖いよ、死にたくないよ、助けて!」と血塗れの女性が担架で運ばれてきた。女性は右足がなかった。爆風により右目も負傷していた。左肩の半分が消えていて骨が突き出ていた。血と汚水と汚物の混じった臭いが漂っていた。 


 娘の(かたわ)らで手を握る母親は泣きながら「早く助けてあげて!」と看護師に叫び続けていた。

  

 廊下を行ったり来たりと走り回る看護師の口元にはマスクが掛けられていて、マスク越しのくぐもった声のために聞こえずらく、何度も確認をしながらの作業や仕事となっていた。

 

 医者も血相を変えて走り回っている。医者もギリギリの中で戦い続けていた。血塗れの女性は手術室に運ばれていくようだ。医者も看護師も形振り構わずといった感じだ。

 

 傷だらけの患者が運ばれている最中であるので、医者の怒号や命令や看護師同士の苛立ちが見てとれた。

 

 テレビによると、膨大な数の人が艷夢から脱出しているようだと報道していた。

 

 周りが見えなくなった者達は我先にと逃げているようで、ある区域では狙撃の嵐に見舞われているようだ。狙撃による怪我人が続出していて、その数、約250人にも(のぼ)るという。

 

 運悪く肩を狙撃されて貫通した人は車を乗り捨てて走って逃げようとしたが、更に狙撃を受けてしまいその場に倒れ込む。それが次から次へと雪崩れ込むように人が溢れて、警告の声を無視してでも逃げ出す。

 

 兵士による無差別な狙撃が頻発していて、年齢に関わらず命を落とす者(7才の男の子が狙撃によって命を落としたとの報道も流れていた)、重傷で倒れた人に対しての救護は一切認められない等、同じ人種なのに兵士が民間人に向ける軽蔑と恐れの眼差し、血塗れで息も絶え絶えの人が見捨てられる現実、怒りのカオスと不条理が増えていくばかりだった。

 

 最新の速報によると政府の指揮系統は完全に機能不全のマヒ状態に陥り、国のトップは意味不明な政策を掲げるばかりで無策を露呈し続けていた。

 

 国のトップの緊急事態宣言の会見においは「まずですね、艷夢の住民の皆様、お亡くなりになられた約17万人近くの方々にですね、御悔やみの言葉を申し上げると共に、艷夢の全住民の皆様に対しては、必要なケアを無料で提供したいと思う次第であります。

 

 避難先につきましは、小、中、高の学校の体育館、または児童会館、地下街等にある広いスペースを検討されておりまして、避難命令の発令は今日の午前7時を回った頃になります。発令が出されるまでの間はですね、自宅待機という形を取る事になりますので御理解ください。外には出ないようにしてください」と時の首相は何とも的外れな力も覇気もない政策を述べるばかりだった。

 

 僕は「一刻も早く避難させるのが先だろう。何を言っているんだか。全ての学校は燃え尽きたよ」と言ってテレビを消した。

 

 僕は政府の危機に対する心構えや無策同然の対処に唖然として驚いていた。

 

 僕らの存在についてはメディアは気付いていなくて確認をしていないようだ。

 

 僕らは人知れず戦い続けている。誰かに誉め(たた)えられたくて、賞賛(しょうさん)されたくて戦っている訳ではない。戦う理由は1つだ。

 

【自由を守り抜く】

 

 いつの時代も愚かな支配者は浅はかな事ばかりを仕出かす。

 

 今回の襲来の元となる原因、支配者は何処かに潜んでいるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 闇の支配者が人間に対する差別や冒涜をするならばだ、よかろう、僕たちが相手だ。

 

 

 

 

 

 

 

 僕たちを倒さない限り人間を支配する事は出来ない。不可能だ。

 

 

 

 

 

 

 

 慎二、レイン、銀次、ジョン・ラファロ、絵莉。

 

 

 

 

 

 

 

 一筋縄ではいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 僕たちはここにいる。

 

 

 

 

 

 

 

 いつでも相手になってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 こちらとしてはだ、策ならいくらでもある。

 

 

 

 

 

 

 

 当てにならないものを頼るより、自分たちの信念だけで行動する方が断然早い。

 

 

 

 

 

 

 

 まだ見ぬ、

 支配者よ、

 

 

 

 

 

 

 

 僕が行くぞ、

 仲間を連れて行くぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 僕を恐れるがいい。

 僕を恐れるがいい。

 僕を恐れるがいい。

 僕を恐れるがいい。

 僕を恐れるがいい。

 

 

 

 

僕はテレビを付けて見ている看護師の姿を眺めた。

 

 今、入った速報ニュースによると艷夢の死者は30万人以上と流れていた。繰り返し30万人以上とニュースキャスターが絶叫している。

 

 若い女性の看護師は口を押さえて黙って泣いていた。

  

 もう一度言おう。

 僕を恐れるがいい。

  

 おい、聞こえるか?

 僕を怒らせたな。

 ただで済むと思うなよ。


ありがとうございました!

また頑張って更新します✨

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