密やかに姿を隠す
リヌラウンは魔法使いの中でも最強の存在です。リヌラウンこそが悪の元凶であり、支配者、全ての魔法使いたちが、もっとも恐れている存在でもあるのです。
「ガザインよ」
「はっ、なんで御座いましょうか?」
「ジルアズバ国を占領して20日が経過した。ジルアズバ国は完全な形で支配下に置いている。残りは、バルドギュラス国のみだ」
「その通りです」
「ジャン・ジェイラヴがバルドギュラス国の最高の魔法使いだというのは私も認めているが、自国を見捨てるかのような空白期間を作り、人間界に行くなど愚の骨頂だ。何故に大きな過ちを犯してまで人間界に行くのか、その理由について考えられる事は1つだけ。人間に希望を託したからだと推察される。フッ、愚かで未熟な人間に何ができるというのだ? 人間に希望があるとでもいうのか? 明日、午前0時を回ったらバルドギュラス国への攻撃開始の合図を軍隊や魔法使いに送る。ガサインよ、一堂に集めておけ」
「分かりました」
「バルドギュラス国も我が魔法要塞都市ジュズダの支配下に置かれるだろう」とリヌラウンは自分に話しているように言った。
リヌラウンは2つの白い箱からガルバの妻と娘の頭部を取り出すと息を吹き掛けた。
妻と娘の頭部と思われた物が大きな石の塊に戻った。
「ガルバに妻のレナと娘のセーラの頭部の幻視を見せれば怖じ気づいて口を割ると思ったのだが。実際にはガルバの妻と娘は今も健在であり、既に人間界に脱出をしていて何処かに隠れて避難していると考えられる」リヌラウンは石を浮かばせると壁に向かって飛ばした。石は大きな衝撃音と共に粉々に砕けた。ガザインは耳を押さえて粉々になった石を見ていた。
ガルバは魔法要塞都市ジュズダの全体のマップと、リヌラウンの宮殿の内部資料やリヌラウン自身について書かれた細かいデータ300ページに及ぶ極秘の書類を盗んでいた。
リヌラウンは魔法要塞都市ジュズダについての情報はどうでもよく、リヌラウン自身の情報を拡散される危うさを警戒していた。
おそらくガルバは極秘の書類を妻に預けて、何処かでジャン・ジェイラヴに渡す手筈を整えているはずだ。ジャン・ジェイラヴに渡り己を分析されるのは非常にまずいとリヌラウンは考えていた。
だがリヌラウンには余裕があった。リヌラウンは目を閉ざして静かに微笑んだ。
「ガザインよ、引き下がっていい」
「リヌラウン様、失礼致します」ガザインはリヌラウンに敬礼をして頭を下げると出ていった。
リヌラウンの宮殿は全体的に闇に溶け込んでいるために、形がはっきりとは認識ができなかった。
宮殿の周りは常に濃いガスに包まれていてリヌラウンがいると思われる塔の詳細についても、いまだに分からず仕舞いだった。一説には塔の高さは300メートルもあるといわれていた。塔は通称『黒い祈り』と呼ばれた。
いつもガスに包まれている朧気な塔は、儚げに祈っている女の姿のように見えていた。
リヌラウンは目を閉ざしたまま微動せずにいた。
「妻のレナと娘のセーラめ。私から逃げられるとでも思っているのか。必ず捕まえてやる。ジャン・ジェイラヴ、人間界に何があるというのだ?」リヌラウンは部屋を出ると塔の最上階に向かった。
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