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手が届かない箱

大変長らく御待たせ致しました。

あと少しで最終回を予定しています。

 「リヌラウン様、私に御用件は何で御座いますか? いよいよ明日、総攻撃の日ですね。全ての準備が整いましたので、後は命令を下すのみです」緊張のあまり震えた声で話すガルバは顔全体に冷や汗が出ていた。喉の乾きのせいで何度も唾を飲み込むと荒い鼻息を洩らした。

 

 「リヌラウン様、いかがなさいましたか?」ガルバはリヌラウンのただならぬ威圧感に圧倒されていて面目丸潰れのような枯れた気持ちに支配されていた。

 

 少しでも間違った進言や助言を与えた場合、確実にガルバの命は闇の中へと消されてしまう。

 

 リヌラウンは細部に渡り極め細やかな戦術を巧みに使いこなす闘将、闇の魔法世界を牛切る伝説的な存在、悪魔の化身、神をも恐れぬ自己中心的な絶対君主、つまりは最強の支配者、絶対的な魔王と言う称号に相応しい存在といえば理解と納得をするであろう。

 

 ガルバは恐怖心からリヌラウンの顔を見ることが出来ずにいた。

 

 200年という長いことリヌラウンに忠誠を誓い続けてきた片腕的なガルバは、いつ豹変するのか分からないリヌラウンに対して心底怯えきっていた。

 

 ガルバは大した理由もなく気まぐれに数々の部下や魔法使いを殺戮してきた暴君リヌラウンの行動に、事実上、何度も目を伏せてきた。

 

 リヌラウンのカリスマ性に引きずり込まれた結果に、今の自分があるとガルバは悔やんでいた。正気には戻れないのだと思っていた。

 

 リヌラウンは椅子から立ち上がると下界を見下ろせる側までゆっくりと歩いた。

 

 「ガルバよ、下にある魔法要塞都市ジュズダが漆黒の闇に包まれた日を覚えているか?」リヌラウンの地の底から響くような深い声がガルバの鼓膜を震わせた。


 「はい、覚えております」ガルバは静かにひれ伏せて言った。

 

 「私に反逆する者たちの末路は苦しみだ。苦しみを、苦痛を、絶望を感じながら闇に苛まれて奴隷として生きる事になる。光や明かりを消すのは容易い。私に逆らった結果が今のジュズダの姿だ。魔法使いや住民200万人が私に抵抗を試みながら闇に苦しんでいる。私に忠誠を誓ったフリをしながら闇に苦しんでいる」リヌラウンは光が消された魔法要塞都市ジュズダを眺めていた。

 

 「はい」ガルバは今すぐに熱い湯船に浸かりたいと思っていた。震えのために体中が冷えきっていた。

 

 「私を倒す時とタイミングは永遠に訪れないと知るべきなのに。愚かな魔法使いと住民どもよ。ところでガルバよ、私を嘘や偽りで欺くならもっと上手いやり方があるのに、何故、そうしなかったんだ?」リヌラウンは冷めた視線でジュズダを見下ろしていた。

 

 「はっ!? 一体、何の事でしょうか?」ガルバは強く目を閉じて唇を噛んだ。

 

 「ガルバよ、何故、私を裏切り、ジャン・ジェイラヴを人間の世界に送り込んだんだ?」

 

 「ご、誤解されています」とガルバはリヌラウンの元に駆け寄って言った。

 

 「私に近づくな!」


 リヌラウンは振り返ってガルバを睨み付けるとガルバの左腕が吹き飛んだ。

 

 「ギャー」とガルバは鈍く重い悲鳴をあげた。

 

 ガルバの左腕は跡形もなく消えていた。

 

 「私が留守をしている間に、ガルバの家族を人間の世界に脱出させたのも知っている。脱出の事案はジャン・ジェイラヴとの取り引きで成立した話だというのも知っている」

 

 「リヌラウン様、どうかお助けを」

 

 「今さら命乞いをしてどうなる? 200年間の付き合いがあったのに、お前は私を裏切った」

 

 「不徳の致すところでした。私は騙されたのです」ガルバは吐き気に襲われながら話した。

 

 「もう嘘をいうな。ガザイン、来い!」リヌラウンは扉の前にいた1人の魔法使いを呼び寄せた。

 

 「ガザイン、済ませたのか?」リヌラウンはガザインの肩に手を置きながら力強く言った。

 

 「はい」ガザインは扉の前に戻ると扉を開けて出ていた。

 

 しばらくしてガザインは白い箱を2つ胸に抱えて戻ってきた。

 

 「開けろ」リヌラウンはガザインに命令をした。

 

 ガザインは箱を開けると箱の中にはガルバの妻の頭部が入っていた。もう1つの箱を開けるとガルバの娘の頭部が入っていた。

 

 「ああああー!」とガルバは発狂しながら箱に駆け寄ろうとしたがガザインが制止した。

 

 「どうだ? ガルバ。ジャン・ジェイラヴと何を話したのか言え」リヌラウンはガルバの髪を掴んで言った。

 

 「リヌラウン様、許してください、許してください、許してください」ガルバは届かない箱に向かって手を伸ばしながら言った。

 

 「ガルバよ、裏切り者には死を与えなければならないのだ。私を裏切った罪は消えないのだよ。ジャン・ジェイラヴに助けを求めたのだな? 

 

 ジャン・ジェイラヴに何を託したのかは察しがつく。得体の知れない人間に何かを見出だしたのだな。人間の可能性に賭けようとしたのだな。人間にそんな力は備わっていないはず。人間は弱くて脆い」とリヌラウンは言ってガルバの額に手を当てるとガルバは青白い炎に包まれて目を見開いたまま灰になって消えた。

ありがとうございました!

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