ジョンの願い
久しぶりに更新します。この小説はシビアで全体的に重めな物語になっています。今回はこの小説を読み込んだファンの方にしか分からない内容になっていると思います。
例えば…
エレベーターの扉が閉まる瞬間を覚えていますか?
高層ビルの屋上で見た幻影を覚えていますか?
絵莉が必死だった時があったのを覚えていますか?
レインとジュリアが不在の中で慎二と銀次のツートップの行動がどう動いていくのかによって、展開が大きく変わるかもしれないのです。
レインの受けた相当のダメージが気になっています。ジュリアの術後の経過、絵莉の居場所、慎二と銀次がザグリフの居所を追跡するためにコンビニ人質事件を解決した一件。バルドラギュラス国の最高位『ディリラバ』である魔法使い、ジャン・ジェイラヴの負傷。艶夢の街は壊滅的になっていて、多数の死者がいるとの情報があります。
傷ついた者たちの立ち向かう勇気、激しい戦闘の数々、慎二、銀次、レイン、絵莉、ジャン・ジェイラヴ。
そして……。
※【注意】
この小説に登場する人物や団体は架空のものです。
朝の風景には場違いとも言える男が時代遅れの背広とロングコートを着てポケットの中にあるリンゴを弄んでいた。男は気持ちが塞いでいるのか、どこか儚げで、疲れ果てて、もどかしいように見える。
男の人柄や職業を想像をしてみると、最初の印象と佇まいから見て、19世紀末の詩人のようにも見えるし、時を現代に遡って考えると、画家がモデルを探すために街を徘徊しているといった野性味溢れる風貌にも見えたし、友達の詩人が小さな紙に書いた自作の詩を左手に持ち、少し前屈みになって右手でスタンドマイクを口元に寄せながら朗読する横で、ギターでメロディーだけを延々に弾きながら悩ましい顔をして詩人をサポートするミュージシャンの様にも見えた。
男の容姿、容貌は『壁が穴だらけになるから止めなさい』と母親に何度も注意をされているのにも関わらず、思春期の娘が悪びれずに、自分の部屋の壁に何枚ものムービースターのピンナップを貼り、娘たちの目をハート型にさせて恋の虜にさせるタイプの雰囲気も確かにあった。
男は何かの弾みで迷い混んだ果てに辿り着いた場所が、運悪く燃え盛った艶夢の街から一夜明けた世界だったとしたら。悲観に暮れた後悔よりも、男の好奇心が勝っているとしたら。
金髪の長い髪、薄い赤色をした瞳、血色のない青白い顔、端整な顔立ちから最初に目を引くのは、深い絶望と憎悪に満ちた暗い眼差しだった。
ある日、男は、雷鳴が轟く夜更けに、葛藤の雨が激しく男の体を痛め付けるように降り注ぐ中で、嗚咽を漏らし2時間近くも無防備のまま天を仰いでいた事があった。おそらく、男は感情を取り戻そうと試みたのかもしれない。
黒いコートに余程の愛着があるのだろうか、何度も修理に出された形跡が窺えた。この世に生を感じない朧気な男が、一口だけリンゴをかじり、我先にと、スクープ写真を撮ろうとするカメラマン達の喧嘩や喧騒をぼんやりと見ていた。
男は事件があった時間帯のコンビニ内の会話、一部始終を全て聞き内容を完全に把握していた。
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『私は最初、向かいにあるビルの非常階段からコンビニ籠城事件の一部始終を見ていた。日当たりが良い時間帯に、出歩くのは然程難しくはない。しばらくしてから屋上に行くと太陽の輝きに勝利し、喜びに微笑む自分がいた。克服までにはそれなりに長い時間が掛かった。
川谷の不可解なコンビニ人質事件のせいで、多少、気が立っている。超能力を持つ2人と会えるチャンスだったのだが。状況とタイミングが良くなかった。
艶夢の街が被災して壊滅状態にある大変な時期に、馬鹿な事件を起こした川谷に対する嘲りや、怒りを静めるためにも内省的になって自分の考えを少しばかり吟味してみたい。
心の中であれば、どんなに過激で辛辣な意見や訴えを叫んだとしても漏れる心配はない。心の声を吐き出す事で、新たな価値観が生まれる事もあるはずだ。
思うに、若さは苦しくて滑稽だ。柔らかく言えば滑稽に見えることがある。
のっぺりとした味気ない若さは無垢と言えば綺麗な言葉に聞こえるかもしれないが、実際は、己を省みる事のない無謀という言葉が相応しい連中も中にはいるものだ。
若い肉体のエネルギーが枠からハミ出て、満ちた溢れた状態になった時、行動を起こす度に傲慢さと強さが先立ちやすい。早く言えば、若いとは、自分勝手で我儘になりやすいという側面が浮き彫りになる事が多い。
もっと砕けて言えば、若さは恐れを知らない向こう見ずという事だ。
無謀な若者の場合、『若さを台無しにする』といった自滅するタイプの若者。 それとは対局に、若さは傷つきやすくて自分を追いつめやすいというナイーヴな場合は、感受性が豊かで繊細なタイプの性格を持つ若者が多い。
後者はアーティストのような職業に就くものが多く見受けられる。
川谷は前者だ。
若さは流星の如く消えやすいものだ。結局、若さを生かしきれずに若さを終える瞬間に立ち会う日が必ず来るのだ。その時になって誰もが慌てふためき室内を歩き回って戸惑うことになるだろう。
だが若さは愚かではないというのも事実だ。バイタリティーにある状態が若さだからだ。
警告を言うならば、若さを押さえ付ける連中の言いなりには絶対になってはいけない。外の世界を見たらきっと今までの価値観が吹き飛ぶし変わる。
若さが滑稽に見えるというのは、人生の経験が熟して醸成されていないからだと言える。経験こそか何よりも生きる醍醐味であり人間の存在証明だ。
経験といっても、ありきたりな経験、レールに敷かれた経験、つまらない経験や、ありふれた経験の事ではない。
選ばれた人間は、極端に人と違っていて恐ろしいほど特別な経験をしている。 絶望的な孤独の中で厳しい現実を乗り越えてきているので、肝が座っていて箔が違う。
私も不可解な出来事で人生が一変した。おそらく、特別な経験の部類に入るだろう。
私は若さが憎い。もはや心でさえも変貌を望もうとはせずに、時間に追い越された矛盾に苦しんだ結果、闇を生きざる終えない立場に置かれた無念の中に私はいるからだ。
私が若さを苦悩と憎しみと後悔と認識したのは、若さを執着する以前の頃だ。例えて言うなら、降り掛かった災難による濡れ衣を着せられてしまい、証言台に立たされてしまった様な屈辱を味わったからだ。
もし若さが総動員して私に襲い掛かって来たとしても、私は全ての攻撃を容易く弾き返すだけの究極的で膨大な力を既に身に付けてしまった。
かつての友よ、老いることを絶望してはいけない。老いることに抗うこともしてはいけない。生きるというのは、生き抜くという事は、己の生命を最後の一滴まで搾り取るようにして全うすることだからだ。
最近の艶夢の騒がしさ、ざわめきで、目眩を起こす毎日を過ごした。嫌気が差すとはこの事だ。夜ともなれば幾分落ち着いてはくるのだが…。
深い森や洞窟、街の外れにある廃墟の館に身を隠して過ごす自分にも、いささかうんざりしていた。
逃げている訳ではない。現実が私を受け入れる事は難しいだろうと思う。長年の経験と知恵と勘がそう判断をさせている。
私は300年間も生きてきたヴァンパイアだ。
28歳の若さで、時が止まってしまった。
私の身元が明らかにされる前に、自ら前に出て『彼らに』力を貸したいと強く思っている。今が絶好のチャンスであろう。
追い詰められた状況にある世界を肌で感じ、微かに残されていた私の中の善や正義の力が『行動』する事を駆り立てているのだ。久しぶりに現れた魔法使いと超能力者の存在。どれだけの能力と才能があるのか是非ともこの目で見てみたいものだ。
ただ、魔法使いが現世に来るのは滅多にないし初めての事だと思う。かなり差し迫った問題が起こったのだろう。
ジャン・ジェイラヴが現世に現れた驚き。レイン。闇の世界で生きる我々の間でも彼は有名だ。彼を追うのは難しくて、何とかホテルまでは行けたが。
レインが屋上で他の魔法使いと戦うのを見れる寸前で、私の存在をレインに気付かれたので慌てて瞬間移動で姿を消した。
現世を乱す者がいるならばどんな敵であろうとも、実力で行動しなければならないという人間達の宣言に対して、私なりに賛同する意思を表明したかったのもある。
ヴァンパイアは血を求めて自ら争いを作り出す傾向がある。自身の乾いた生に何も思うことなく、感じることもなく、時間や愛の不毛に削り取られる事もない世界を、本能的に静寂と安らぎを求めて闇をさ迷い続けてしまう。
永遠を生きてきた私の願望とは、ただ1つ。いつの日か、自分の身にも安らかな死が訪れる事を切に願う事のみだ。
この絶望に震えた艶夢の街は暗黒の悲しみに沈んでいる。私の最後として相応しい舞台になれるかもしれない。
死神が私の肩を叩いていると信じたいのだ。
だが、悲しいかな、私は顔を歪ませて、生きる苦痛に耐えながら、絶望の底を歩きながら生き続けてしまう事になるだろう…』ヴァンパイアのジョン・ラファロは唇を噛み締めて10階建てのビルの屋上から一気に飛び降りると、表情を変えずに瞬間移動で消え去った。
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三杉慎二は腕を組んで物思いに耽っていた。無事に森の入り口付近にワープをしたのだが、川谷の変貌ぶりには面を食らっていた。
銀次は慎二を邪魔する事なく、少し離れた場所にある木に寄り掛かっていた。
慎二は銀次に考えや思考を読み取られないように脳細胞全体に防御の魔法を張り巡らせた。
『人を惹き付けるというのは、生まれつきの才能と言っても過言ではない。誰もが振り返り、目を離すことのできない魅力的で希有な存在。
自分を偽り過大評価しすぎて、壮大に見せたがる人間はメッキをまとい退屈な人間だと自ら表明しているだけだ。
川谷亮三郎は、まさにその程度の人間だ。
僕は俳優をしているが、期待を込めて芸能界で魅力的な人はいないかと探してみたのだが、見かけ倒し連中があまりにも多すぎて、当惑から幻滅へと変わり、今となっては怒りさえ感じている。
以前、ある映画で出会った、売り込み中の新人俳優について思い出すと、彼は映画や演劇に情熱を注がないし、端から学ぼうとしていないし演技を高めることの努力を全くしていない、映画の歴史や基礎にについて何1つ学ばずにだ、一流の監督と脚本家を迎えた、稀に見る破格の制作費90億円も費やされた期待のSFアクション大作映画の主役に抜擢された。
世界を変える期待の新人俳優とやらは、スクリーンに無様にも大根役者がぶりが露呈されて大作映画は見事にコケた。セリフは全編に渡って棒読み、ぎこちない動きの連続、緊迫感のない先が読める無様な展開は主役の下手すぎる演技力の賜物だった。
脇役は素晴らしかったのだが、世界を甘く見た期待の新人俳優が無能すぎた。
撮影中に馬鹿な主役の無能ぶりのせいで、一流監督は『映画にならない。お願いだから頼む。今すぐに主役を代えてくれ』と映画会社に直訴して揉めに揉めたが結局、受け入れられず、一流監督は自ら降板を申し出てしまった。
降板が決定したのにも関わらず、しばらくの間、映画会社はメディアやマスコミに監督の降板の知らせをせずにいた。
他に名のある有名な監督たちに打診をしたが制作費のプレッシャーからか、引き受ける者はなく、降板騒ぎから2か月後、ようやく決まった代理監督の元で撮影は強行された。代理監督は五流のポルノ映画の監督だった。
90億円の制作費は水の泡で、世界を舐めた期待はずれ新人俳優は監督や映画会社や所属事務所に借金だけを残して、あっさり芸能界を引退して逃げた。
実力も無い奴を事務所の力で売り込む俳優もどぎをどうにかして欲しいと思う騒動だった。
外見だけで売り込もうとする古い体質のワンパターンが未だに蔓延っている。『何か光るものがあるし、人間性が優れている。良心があって人間力が高い』というインスピレーションがあれば育てるに値するが。
奴は真剣に俳優という仕事を考えていないし、受け止める努力もしていない。
世界から干された期待はずれの新人俳優は、複数の女性タレントと付き合っていたり、怪しげな場所の出入り等をしていたり、窃盗疑惑もあったりと素行が悪すぎた。「女にキャーキャー言われてーし、もっと有名になりてーし。金ができたら、外車に乗って全世界の女と付き合いまくりたいね」等と腑抜けな事を毎日抜かしていた。
内面よりも計算ずくめの表面を見せることに躍起になっている連中の様は、ほとんど病的といっていい。
僕は、そんな嘘八百は、もう見たくはない。生々しい真実の姿をさらけ出して見せて欲しい。リアルな内面を見せて欲しい。その勇気が自分の内面を育て、演技力を磨いていき、人間力を高めていくのだからと思っている。
アイドルからアーティスト、芸術家から人間宣言と進化を遂げたビートルズ、ビートルズ解散後の4人というのは、やはり、本物で偉大な存在だ。いかに4人がクリエイティブだったのかが、よく分かる。今の文化を辿れば全てビートルズに行き着く。決して古びることのない魅力、それがビートルズというリアルだ。
本物になるためには、若さに執着していてはいけない。『成熟する事に目を向けよ』という気持ちでいた方がいい。
芸術とは、形振り構わず突き進んだ先に小さな光が現れて、光の中から美の達成と僅な恩賞が見えてくるものだ。映画や演劇もそうであって欲しい。今以上に本気で真剣に取り組んで欲しい。
代わり映えのないマンネリとワンパターンな内容の番組、その場限りで適当に取り繕うくだらない番組の氾濫には、業界の方々も日に日に危機感を強めているし、焦りが出ているし、警鐘を鳴らし始めている。
それがテレビを見ない人が増えた理由の1つになっているだろうし、逆説に考えてみれば、テレビから離れる事が出来て、ようやく自分の時間を取り戻せた勝利として喜ぶべき事なのかもしれない。
センスもあって人を唸らせる見事な番組がまるで無い現状に対する苛立ち。ごく一部に狙いを定めた作品等を提供するのは、視聴者や観客を馬鹿にしている事にもなりかねない。
媚を売る軟弱なゴマスリとしか思えない作品は、やはり見ていると凄く辛い。そこには何も描かれていないからだ。よそよそしいものばかりだと、白けてしまう。
『「芸術というのはね、権力に媚を売って成り立つ物が1番優れているのさ。芸術はこの世で最も下らない物なんだ」と言ったKという輩の戯言に耳を貸すな。諦めを持つな。誤った考え方で、芸術の基準や信念を歪めるな』とTさんは言っていた。
俳優は孤独な存在だ。演技力のみだけで、俳優としての評価や存在や価値に結びつけて欲しいという考えを持っている。
表面的な魅力は決して人工的であってはならない。内面から醸し出される雰囲気や精神が表面に表れてくる事を『宿る。備わる』という。つまり、俳優が求める美意識や魅力的というのは、内面的なことを指している。
僕は本物だけを知りたいし触れていたい。人生は短すぎるので、下らないものに囚われていたくはない。常に自分の頭で考えて行動したい。未完成は永遠に成長できるから僕は未完成でいたい。
芸能人の川谷亮三郎は、妻や子供がいる身でありながら、コンビニを襲撃して人質まで捕るという暴挙に出た。一昔前の人気ぶりからは考えられない事態であった。
若さの暴発は、時として地獄にいくための代償となり得る。表面を着飾ることだけに長けて、浮わついた気持ちでいる奴等は、反省と内省をせずにいるし、全く後悔をしないので、早くに腐り朽ちていくのだ。
『自分さえ良ければ周りはどうにでもなれ。周りはどうでもいい』と言う奴は罪だ。川谷亮三郎が、まさに、その悪い見本である。 川谷は自分のことだけしか考えていなかったので、馬鹿丸出しで社会に対して中指を突き立てたのだ。
その中指を突き指にしてから骨折させたのが、さっきの僕たちの仕事だった。
川谷亮三郎には、俳優だとか、タレントだとかという肩書きを、今後、2度と名乗らないで欲しい。
川谷亮三郎がザグリフに洗脳され尽くしたのも、自分の弱い性格と、正義を捨てたがための結果だろう。
川谷亮三郎を考えると、滑稽な若さ、いや、現実的にもっと考えてみると『悪の魂は決して変わらない』ということの証明にすぎなかっただけ、ということになるのかもしれない……。
僕は苛立ちとフラストレーションが溜まっている。本来はここにいるはずではない。職業欄には常に俳優と書いてきた。書いてきたのに、ここにいる。やりきれない。
僕は俳優で映画の撮影中だった。映画に情熱を注いでいた。これからという時だった。夢や希望に溢れていた。
ジャン・ジェイラヴに出会い、自分の運命を悩みながら受け入れて躊躇った。俳優の仕事がしたかった。映画に出たかった。芸能人の肩書きを持つ、かつての人気者、川谷亮三郎が狂い出した。僕は腹が立った。その訳は、数少ない芸能人としてのチャンスを自ら棒にふり、踏みにじった川谷の生き様が胸糞悪いということだからだ。
本音を言うと、僕は映画の仕事を途中でほっぽり出した自分の職業に対して、未練と後悔、無念な思いが強く胸に残っている。
僕は必ず生きて戻って、俳優の仕事をしたい。来年には、ニューヨークに行って本格的な演技の勉強をするんだ。必ずしてみせる。
僕は本物の世界を感じてみたい。狭い世界では視野が狭くなる。俳優として胸を掻きむしりたくなるほどに、痛感している。
わずか325ドルしか持たないで、LAに行って成功した俳優もいるんだ。
僕はまだ駆け出しで、これからという大事な時期、基礎的な演技の勉強をしてきた自信はあるし、まだ技術的には真っ白な状態にあるので、本物の演技の勉強が出来る場所に行くべきなんだ。本物の色に染まりたい。
今は、少しばかり、自分夢を胸に仕舞い込んで、この戦いを乗り越える事に専念するしかないんだ。
今はとてつもない怒りがある。哀しみがある。奴等は艶夢の街を破壊し人々を苦しめたんだ。憎しみを込めてザグリフや悪の魔法使い達を迷うことなく必ず叩き潰してやる。僕の力を甘く見る奴は、どんな結果になるのかを見せてやるつもりだ。僕の原動力は行動する勇気と愛だけだ』慎二は頭痛がしてきたので右手でこめかみを強く押さえた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
慎二と銀次はワープをして森の入り口付近に来ていた。
都会の喧騒から離れて、緑溢れた森の香りに包まれていると、確実に正気に戻っていくのを感じていく。
「銀次、大丈夫か?」
「慎二、大丈夫さ。こんなの怪我のうちにも入らないよ」銀次は自分の左手で顔を翳すと一瞬淡い光が煌めいた。
銀次は静かに左手を離して、銀次は腕を回した後、しゃがんで右手で土の感触を確かめた。
「土の優しい匂いが良いね。久々に嗅いだので凄く懐かしいよ」銀次の目にも優しい光が宿っていた。
「!?」慎二は空を見上げて雲間を睨んた。
「どうした!? 慎二」
「銀次、一先ず、隠れた方がいい。あの奥にある木の後ろに隠れよう」 慎二と銀次は足早に木の後ろに隠れると、空の彼方を黙って見つめていた。
「な、何なんだ!? この不思議な気配は?」銀次は目を見開いて戸惑いの表情を浮かべていた。
「確かに、今までに出くわした事のない珍しい気配だけど、妙に穏やかな気配だ」慎二は疲れた顔をして眩しい空から目を伏せた。
「慎二、どうする?」
「待て、焦るな」
何者かが『囁きの森』に迫っていた。
何者かが囁きの森に来るまで、少し時間と距離は掛かるはずだとは思うが、慎二と銀次はお互いに不安な気持ちを隠して木の後ろに控えていた。
つづく
ありがとうございました!




