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セーラー服と雪女 第10巻「雪女の婚前旅行」  作者: サナダムシオ


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7/10

⑦ 時の流れは残酷

「そうだ。面白いものをお見せしましょう。」

 また良からぬことを企んだ顔をして、サン・ジェルマンは次の目的地を入力した。

 京子がチラ見すると、1503年4月15日の14時。北緯45度85分、東経9度23分となっていた。


 またも窓の外の風景が流れて滲む。

 今度は割とすぐに到着した。

 窓の外は相変わらず郊外の…いやむしろ山麓に近い田舎の風景になっていた。


 京子とサン・ジェルマンが車外に出る。

 クルマは相変わらず、二頭立ての馬車に見える。

 ご丁寧にフェイクの御者まで乗っているのだった。


 すぐそこにイーゼルを立てて、小さめの板に絵を描いている老人が居た。

 見たところ、目の前の風景を描いているようだった。

 京子は邪魔にならないよう静かに後ろから近づいた。


 近くで見ると、その人物は老人と言うには、少しばかり若いかもしれないと思えた。たくわえた豊かな髭のせいで、年寄りに見えたのだった。

 絵の方はもう人物が描かれていて、緑系統の色を使って、その背景を描きかけているところだった。


「こんにちは。」

 京子は後ろから、邪魔しないようになるべく静かに声をかけた。

 その人物は一瞬ビクッとなり、次にゆっくりと振り返った。

 そして京子たちを見て、少し涙ぐんで微笑み、こう言ったのだった。

「ああ、やっと来てくれた。」


 それは、50歳を過ぎてすっかり老いぼれてしまったレオナルド少年だった。

「あれからずっと待っていたのですよ。それにしても、あなたたちは、全然歳をとらないのですね。神か悪魔と契約したのか…どちらにせよ羨ましいことだ。」

 そう言う彼に対して、何だか申し訳ない気分になる京子だった。


「ほら、見てください。あの時スケッチだけで終わってしまった貴女の絵を、今まさに仕上げている最中なのですよ。」

 彼のその発言は、京子にとって衝撃的なものだった。

 何故なら、彼が今描いているその小さな板の絵は、世界中の誰もが知るあの有名な絵だったからだ。


 それは❝モナ・リザ❞だった。

「えっ!この絵のモデルは私だったってこと!?」

 京子は思わず叫んでしまった。


 イタリア人でもなく、フランス人でもない。

 どこか東洋系のその顔。

 確かにそれは自分に似ていた。


 すぐ後ろで、サン・ジェルマンがニヤニヤ笑っているのが、見なくても分かった。

 まんまとやられたわ。


 宇宙広しと言えど、自分のパートナーをモナ・リザのモデルにするなんてこと、サン・ジェルマン以外にできる気がしなかった。

 京子はいよいよ彼に、格の違いを見せつけられた感じがしたのだった。


挿絵(By みてみん)

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