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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

「どこですの?」


 エメは呼吸を整えると、地図を取り出してテーブルの上に広げブロン領地の外れにある教会を指差す。


「最近、ブロン子爵がこの屋敷の裏手にある教会に寄付をしていたんです」


 そこで驚いたルシールが質問する。


「じゃあもしかして、この教会の下に?!」


 エメは首を振った。


「僕も一瞬それを考えたのですが、教会に彼らが出入りしている様子は一切ありませんでしたし、なによりこの協会はブロン家から遠すぎます」


「なんだ、そうなの? 確かにワーストをそんなに簡単に移動できるわけないものね。でも、なんでそんな協会に寄付を?」


「僕もそう思って、この教会のマチス牧師のことを調べたんです。すると彼が今はもう廃鉱になってしまった鉱山を親から受け継いでいたことを知りました。その鉱山がここにあります」


 そう言って今度はブロン子爵の屋敷の裏手にある山を指差し話を続ける。


「地図にも載っていませんから、ここにかつて鉱山があったと知るものも少ないでしょう」


 アドリエンヌは少し関心しながら言った。


「確かに、廃鉱なら地下に続く堅坑(たてこう)がありますものね。そこから屋敷へ続く地下道を掘ればいいんですわ」


「そうなんです。それにこの廃鉱の入り口へはブロン家の屋敷へ向かう道とはまったく違う道を通りますから、一見まったく無関係にも見えます」


 それに次いでアドリエンヌは言った。


「で、調べてみたらここが地下道への入り口だったのですわね?」


 その問いにエメはゆっくりと頷いた。


 ここまで調らべるのは大変だったに違いない。アドリエンヌはエメの尽力にとても感謝した。


「ありがとうエメ、とても助かりましたわ」


「いいえ、アレクシ殿下から機密文書の閲覧許可をもらっていたり、人手をだいぶお借りしたので。お陰でその廃鉱内の昔の地図も手に入れることができました」


「凄いですわ、その地図があればおおよそどこから屋敷につながっているかもわかりますわね」


 まだ跡を継いでもいない令息に機密文書の閲覧許可まで出すのは、王太子殿下とはいえ流石に難しいだろう。それに、これでなにかあれば責任を追及されるのはアレクシだ。


「殿下、ありがとうございます」


 そうお礼を言ったが、アレクシは表情一つ変えなかった。


「当然のことだ」


 素直じゃない。


 そう思いながら、みんながこれだけ頑張ってくれたのだから、ここからは自分が頑張る番だと気持ちを引き締める。


「いつ奇襲をかけますの? (わたくし)はいつでも覚悟ができてますわ」


 するとアレクシは真剣な顔でアドリエンヌを見つめる。


「できれば君を巻き込みたくなかったが」


 それを聞いてアドリエンヌはにんまり笑う。


「なに言ってますの? ここからは(わたくし)の出番ですわ。(わたくし)とっても強いんですのよ?」


 そこでルシールが笑った。


「確かに! アドリエンヌって怒ると恐いもの!」


「ちょっと、ルシールどういう意味ですの?」


 そういってアドリエンヌも声を出して笑った。


 場所さえわかってしまえば、ワーストを浄化することは難しくなかった。ただ、ワーストのことは世間に知られていない。


 だからあまり騒ぎにしないように忍び込み、こっそりとことに及ぶ必要があった。そのついでに、ブロン家の屋敷に乗り込み悪事の証拠も押さえなければならない。


 それには、シャウラとブロン子爵が確実に屋敷を開ける明日の卒業式に行動を起こすのはうってつけだった。


 もちろん、卒業式には出席したかったがこんな一隅千万のチャンスを逃すわけにはいかない。


 アドリエンヌたちは、彼らが屋敷を出たあとすぐにでも作戦を決行することにした。


 王宮の特殊部隊を借りアレクシたちを抜きに乗り込むつもりだったが、アレクシがそれを止めた。


「ルシールやエメは卒業式に参加してシャウラの様子を探ってくれ。だが、私はアドリエンヌと行く」


 驚いたアドリエンヌはアレクシを見つめる。


「でも、危ないですわ。もしアレクシ殿下になにかあったらどうしますの? 殿下はご自分の立場がありますでしょう?」


 すると、アレクシはアドリエンヌを真っ直ぐに見据えて言った。


「自分が惚れた女すら守れずに立場もなにもない。アドリエンヌ、君が『フィリウスディ』だろうとなんだろうと関係ない、私は君を守る」


 いつもと違うその迫力にアドリエンヌは思わず頷くと返事を返す。


「は、はい」


 アレクシはそれを見て満足したように微笑む。


「うん、わかったならいい」


 そう言うとアレクシは普段と変わらぬ様子で話を続ける。


「エメ、アトラスたちはその鉱山をまだ見張っているのか?」


「はい。僕たちの動きがばれて、彼らがその出入口を塞ごうとしたらすぐに報告がくることになっています」


「そうか、わかった」


 そうして、アドリエンヌたちは応接室で廃鉱の地図を囲み、入念な計画を立てた。


 必死になってそれに取り組むことで、アドリエンヌは先ほどアレクシに言われたことをあまり考えないようにした。


 もっと遅くまで計画を見直したかったが、休息を取ることも重要なことなのである程度形になったところで解散となった。


 屋敷へ戻っても、興奮して眠れないのではないかと思ったが疲れていたのかすぐに寝てしまった。






 決行の朝、ブロン子爵の屋敷から離れた森の中でアレクシたちを待った。木の葉を踏む音に振り返ると、アレクシが一人でこちらに向かってくるのが見えた。


 アドリエンヌはなるべく小声でアレクシに訊く。


「騎士団の方たちはどちらに?」


「心配しなくても大丈夫だ。そばで待機している。私が君と二人きりになりたくて、そうするように頼んだ」


 そう聞いてアドリエンヌも護衛のドミニクに少し離れて控えるよう指示を出した。


「どうしたんですの?」


「少し歩こう」


 そう言われ二人は並んで歩く。いつもと雰囲気の違うアレクシに戸惑いながら、アドリエンヌはその後ろに続いた。


 アレクシが立ち止まったので、アドリエンヌも立ち止まりアレクシを見つめた。


「アドリエンヌ、これが解決したら婚約についてしっかり決着をつけるつもりだ。それまでまってもらえるか?」


「はい」


 アドリエンヌがそう答えると、アレクシは悲しそうに微笑んだ。


「今さら言っても仕方ないが、私はもっと以前から君と話をするべきだった」


(わたくし)もそう思いますわ」


 それを聞いてアレクシは頷く。


「私が悪かったんだ。その罰は受けなければならないと思っている。君には謝らなければならないな、すまなかった」


「わかりました。その謝罪は受け入れます。それに、ちゃんと今は(わたくし)たちのことを考えてくださっているとわかっていますから」


 アドリエンヌがそう答えると、アレクシはしばらく無言で前方を見つめたあと頷く。


「そうか、ありがとう。私たちの関係はやっとここからスタートするのかもしれないな」


 そう言うと、アドリエンヌに微笑んだ。


「さぁ、行こう」


 そう言ってアドリエンヌの手を取ると、控えている騎士団のもとへ歩き出した。


 廃鉱の入り口にはかなりの人数の見張りが立っていた。これは想定内である。問題は中に何人配置されているかだろう。


 そんなことを考えながら、シャウラとブロン子爵が屋敷から出たことを探知したアドリエンヌは、いよいよ作戦を決行することにした。


 できれば騒がれないうちに対処したいが、一人でも見張りを取りこぼしてしまえばそれは不可能となる。


 アドリエンヌは探索スキルで廃鉱の中をくまなく探索すると、探知できた見張りすべてを一瞬で気絶させた。


 そうして、倒れている見張りの上を跨ぎながら廃鉱へ入った。


「やはり君は凄いな」


 アレクシはポツリとそう呟いたので、アドリエンヌは震える手でアレクシの手をつかんだ。


「これでも、緊張してますの」


 するとアレクシはその手を力強く握り返す。


「すまない。君を守ると言ったのに」


 アドリエンヌは首を振った。


「今こうして守ってもらってますわ」


 二人はしばらく見つめ合ったのち、奥へ進んで行った。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※堅坑とは、物資や人を坑道へ送るため上から下へ続く縦の坑道のことです。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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