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まぁいいかな

まさかモシダくんが家まで送ってくれるとは。


さっきまでの談笑でほぐれていたのに、意識すると急に緊張してくる。


「家、近いんですか?」


モシダくんはそんなことなさそうで、

むしろ気をつかってくれた。


「ちょっと離れるんですけど、歩いて15分ほどです。」


当たり障りのない話が続いている中、モシダくんが奥さんについて話しだした。


「もう少し一緒にいたいって思ったのも、実は妻に似ているからなんです。

まぁ怪我させてしまって放っておけないのも、もちろんありますけどね。」


「後半、絶対うそ!」


そんなツッコミを入れながら、心の中は少し寂しかった。

結婚してるのか。それはそうよね。


「うちの妻はエミリって言うんですけど、

さっきのお転婆なところとかほんとそっくりで。顔もどことなく・・。」


「え、うそ。私も名前エミリって言うんです。」


こんな偶然があるのだろうか。


同じような性格で同じ名前の女性が、昔好きだった吉田くんにそっくりな男性と結婚している。

あとさえぎってしまったけど顔も似てるって。


まるで、吉田くんと結婚できた私の世界線・・・。



そこから家まで送ってもらうまで幸せな時間を過ごした。

私の吉田くんへの未練を、この15分に詰め込んだ。


別れ際、彼から友人としてこれからも交流したいとお誘いがあったが

奥さんに悪いので何かのご縁があればと、丁重にお断りした。


もし私が吉田くんと結婚して、吉田くんが女性友達を紹介してくれても

いい気分にならないだろうなと思ったからだ。


家に戻り、ベッドに横たわる。

酔いはすっかり冷め、不思議な想いだけが心と頭をかけめぐる。



もしもの世界、パラレルワールドなんて

異次元のお話だと思ってた。


だけどもしかして、もしも

もしもパラレルワールドが同一世界にあったのなら


私が試合に負けても、別の私が勝っている。

私が受験に落ちても、別の私が合格している。

私が告白でフラれても、別の私が結ばれている。


レジ打ちをしている私。スーツを着た私。テレビに出ている私。


街で一緒に生活しているのは、もしもの先を歩んでいった未来の私。


悲しいことがあっても、

別の私が笑顔で世界のどこかで生きているならまぁいいかな。



そんなことを考えながら、

エミリは幸せそうにイビキをかいた。

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