もしかして・・・
パラレルワールドという概念を知っているだろうか。
「if」・・・「もしもこうだったら」の世界のことだ。
あなたも一度は考えたことはあるだろう。
もしもあの時、試合に勝っていたら。
もしもあの時、受験に合格していたら。
もしもあの時、告白できていたら。
もしもあの時、彼氏と別れていなければ。
もしもあの時、もしも、もしも、もしも、・・・。
そんなタラレバ話を五万と抱えながら人は生きている。
私も御多分に洩れず、その一人。そして今日も、それは一つ増えた。
「もおおおおおお!!!!ムカつくゥーーー!!」
ガチャンとビールジョッキを大きく鳴らして、彼女の苛立ちは友人のA子に向けられた。
「そんないいじゃない。マッチングアプリで会った男にブロックされたくらいで・・・。」
「くらいで済んだらこんなにイラつかないよ!」
彼女はマッチングアプリで会った男とデートをしたのだが、次のデートの話をしている時に未読が続き
ブロックされていることが発覚した。
「で、なんでブロックされたのか心当たりはあるの?」
A子が彼女に尋ねる。
「私が思うに、次のデートは近所がいいなって話してたんだけど、テレビで見た脱出ゲームに行きたくて
そこに行こうよって提案したの。そしたら返信が返ってこなくて。」
A子は軽くあきれた顔をして
「急に心変わりしたら、そりゃ不安になるよ相手も笑」
まぁたかだか一回デートしたくらいで舞い上がり過ぎた私も悪い・・。
いやでもイイことだよね?!この私直々にときめかれるなんて光栄なことだよね?!
そんな見栄っ張りは夜が明けるまで続いた。
A子と別れ、静かな路地を歩く。
家に帰って昼まで寝ようか、目覚まし気分でカフェに寄ろうか、
半分寝ている頭でふらふらしていると一人の男性が前を横切った。
私の頭は一気に目が覚め、記憶は中学時代にまで遡った。
それは、私が初めて恋愛を知った人。そして初めて失恋を知った人。
「あ、あの・・・!」
思わず声が出た。声をかけずにはいられなかった。
「中学一緒のクラスだった吉田くんですか?」
「えっ・・・?」
大人びていたけれど、
振り返った姿は紛れもなく吉田くんだった。
吉田くんはニコッと微笑みながら答えた。
「失礼ですが、どこかでお会いしましたっけ?」
私の返り咲きそうだった蕾は、ポッキリとへし折られてしまった。




