プロローグ 地震?
俺、片野陸の通う英間高校。
創立80週年と、歴史ある高校だ。
偏差値はそこまで高くなく、低くもない。
男女の生徒の比は1:5、別名ハーレム高校。
規模も高校にしては広く、グラウンドも広大。
そんな高校生活を俺は楽しんでいるか?
無論、そんなわけがない。
部活も入っていない。彼女はいない。友達はいない。
これと言って取り柄のない普通の高校生だ。
だが、勘違いしないでほしい。俺は人と群れることが嫌いなのだ。
友達を作らないのも、人付き合い(コミュニケーション)が苦手だからではない。
彼女がいないのも、単純に作らないからだ。
いわば一匹狼と言うことだ。
ただのコミュ症ではない。
それに、彼女は二次元で間に合っている。
何もかも上手くいかない三次元で何しに彼女なんて作らなきゃいけないのだ。
結論、俺は孤独を愛するということだ。
◇
「誰も来るな話しかけるな視線が痛いこっち向くな…」
昼休み、俺は机に突っ伏してブツブツ呟く。
何人たりとも俺の孤独の世界を邪魔させない。
「おーい陸!」
来た。俺の孤独の世界を破滅に追い込もうとする者。
こいつは俺の幼なじみの菅原真希。
この学校内で唯一俺に話しかけてくるのだ。
ただのクラスメートだったら無視すればいずれ去る。
真希の場合、実に厄介だ。
こいつは俺が『沈黙世界』を知る前、つまり幼少期から知り合いだった。
クラス連中は、「話せる俺」の姿を見たことがない。
しかし、真希のみは、「話せる俺」を知っている。
長期戦になる。俺は戦闘態勢を整える。
「陸、昨日のニュース見た?」
俺と真希の長期戦が始まり…はしなかった。
「昨日も隣町の高校が消えたらしいよ」
「どういう事だ?」
無意識に出た一言。瞬間、俺は敗北を自覚した。
話してはいけない。『沈黙世界』が破滅してしまう
その綻びから、孤独の世界の滅亡しかねない。
「陸、ニュース見ないの?最近高校の消滅が多いらしいよ」
小学生の時以来の俺の声に、真希は戸惑いながらも意味不明なことを言う。
俺は基本テレビはアニメだけだ。ニュースなど見ない。
「跡形もなく、急に消えちゃうんだって」
なおも真希は、意味不明な言葉を続ける。
全然わからない。
表情からして、俺をからかっているわけではなさそうだ。
「それでね、消えた高校は全て歴史ある高校だったんだって」
こいつの言いたいことはわかった。
うちの高校も消滅するかもしれないということだ。
実に非科学的だが、実際消えているのも事実らしい。
「まあ、そんな事あるわけ無いよね。よほど運が悪くなければ」
おい、こいつフラグ建てやがった。
その時ー
「おい、外見ろ。なんか魔法陣みたいのあるぞ!」
モブクラスメートAがなんか叫ぶ。
他の連中からすれば俺がモブキャラ何だろうけど。
「本当。何あれ!?」
クラス中が一瞬でざわめきだす。
校庭にいる数十人の生徒達のざわめきまで聞こえる。
「ねえ、なんか沈んでない?」
真希の言葉通りに高校が揺れながら沈んでいく。
校内から絶叫が聞こえる。
「ねえ、陸。何が起こっているの?」
俺はなれない大声で叫ぶ。
「地震だろ!」
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