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絡繰異聞  作者: 和条門 尚樹
かくて耀夜は白華を構う
14/55

甘えなくとも甘やかす

 (はっ)()と少女を名付けたは良いものの、(かの)(じょ)耀(かぐ)()や周囲の(あた)えようとするものをことごとく断ろうとしたため、結局耀(かぐ)()に気の休まるときはなかった。

 まず翌朝、新たな服への()()えを断ろうとした。(もち)(ろん)、それだと()()える側として(おも)(しろ)くない、もとい不潔であるため(はっ)()の意見は(きゃっ)()され、その日のうちに何人かの見立てで客間のクローゼットに(さら)に洋服が追加された。どんどん運ばれてくる洋服を見て、(はっ)()の表情は引きつっていた。

 その次に、朝食を断ろうとした。朝食だけであればまだしも、よく聞けば、食事(ぜん)(ぱん)(きょ)()しそうな勢いだったため、見かねた耀(かぐ)()(もう)(れつ)に説教し、見張り、結果、(はっ)()は半泣きになりながら食事を()った。ただし、それこそ、小鳥の(ついば)む程度に。

 (はっ)()からすれば、そもそもの食事の形態が人間とは異なるというか、光発電さえできれば十分に動けるところを、食事の分解に余計なエネルギーを()かれることになる。傷ついた身体(からだ)のことも相まって、食事は()()とも(えん)(りょ)したいところだったのだが、正体を(かく)している現状では反論ままならず。

 食後、食事の分解に要するエネルギーを確保するために、(まど)(ぎわ)で半(きゅう)(みん)状態になっている姿は、一見何かの絵画のように美しくはあったが、あまりにも長時間、ピクリともしないために、(たび)(たび)(だれ)かが生死(かく)(にん)(おとず)れる羽目になった。

 ()()(しん)(さつ)を受けるよう(うなが)しても、(はっ)()(おび)え、(きょ)(ぜつ)する。

 返事の一言目からしてまず「すみません、結構です」、二言目には「構わないでいただけませんか」、三言目には「もう帰りたいんです」、そろそろ言われる言葉に予想が付きながらも耀(かぐ)()が客間を(おとず)れると、(はっ)()は相変わらず(まど)(ぎわ)で、(かざ)られた(にん)(ぎょう)のようにじっと(すわ)っていた。

(はっ)()

 声を()けると、びくっと(かた)(ふる)わせ、(おそ)(おそ)るといった様子で耀(かぐ)()を見上げる。手負いの(けもの)(ほう)彿(ふつ)とさせる様子に()(しょう)しつつも、耀(かぐ)()(はっ)()に、(けい)(たい)(つう)(しん)(たん)(まつ)を差し出した。

(ひま)(つぶ)し用に、一個(けい)(やく)してきた。家に(れん)(らく)するなら、しても良いぞ」

 (はっ)()はまじまじと耀(かぐ)()の手の中の(たん)(まつ)を見つめている。(はっ)()()ぐに(きょ)(ぜつ)しないのは、初めてのことかもしれなかった。

「ですが、そんな」

 はっと我に返り、断りの言葉を口にしようとする(はっ)()の手に、耀(かぐ)()(たん)(まつ)()()()()(にぎ)らせた。数秒の(もん)(ちゃく)の末、(はっ)()(たん)(まつ)を手に取る。

「ありがとう、ございます」

 ようやく聞けたお礼の言葉に、耀(かぐ)()は破顔した。(おそ)らく、外との(つう)(しん)手段を(わた)すことで何かしらの(そう)(どう)はあるだろうと(けい)()(がい)(しゃ)の社長として予想している耀(かぐ)()だが、それでも現状を打開できそうな(はっ)()(たい)()は喜ばしかった。

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