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絡繰異聞  作者: 和条門 尚樹
かくて耀夜は白華を構う
13/55

頼れないなら頼らせるまで

 消灯された部屋の中、(はっ)()と名付けられた少女が、(しん)(だい)()かせられた姿勢そのままに、ぼんやりと(てん)(じょう)(なが)めている。

(はっ)()……ですか」

 ふと、その(ひとみ)(うる)み、静かに(しずく)(あふ)()す。

「本当、不思議な人間ですね。そんなところまで、似なくても良いのに」

 何を思い出しているのか、(なみだ)(ぬぐ)うこともせずに(まぶた)()せた。

「帰りたい。早く、帰りたいですよ」

 何処(どこ)へ、とも、(だれ)の元へ、とも言わず、(はっ)()はそのまま(ちん)(もく)した。

 そんな様子を客間に()()けられた(かん)()カメラを通して見ていた人物たちがいる。

「うーん、()()かりとなる言葉も無しっすね」

 耀(かぐ)()()()()()(かえ)って報告した男性職員は、()()()によく似た(おも)()しをしている。

(せい)()(こと)()(づか)い!」

「えー? 良いじゃないっすか。社長さんだって、(とが)めないし。姉貴がちょいと、厳しすぎるんっすよ」

 姉に頭を()()かれて(なみだ)()(せい)()は、そのまま耀(かぐ)()に視線を向けた。

「社長さん、あのお(じょう)ちゃん、いつまでここに置いとくんで?」

「せめて、歩けるようになるまで、とは思うんだがな。大方の予想通りとはいえ、()(りょう)(きょ)()されてしまっては、いつになることやら(わか)らん」

「早く帰してあげないんっすか。あんなに帰りたがってますよ」

「危なっかしすぎてな。送ると言っても、それも(きょ)()された」

 ()に落ちない表情で、(せい)()は姉に目を向ける。()()()は、(かた)をすくめた。

「なんだ、お前たち。何か引っかかるのか?」

 姉弟(きょうだい)の無言の()()りに、耀(かぐ)()が疑問を(てい)すると、二人は(さら)に視線を()わし、やがて()()()が口を開いた。

「帰りたがっているのですから、単に(くるま)()()をお(あた)えになり、そのまま(げん)(かん)から帰して差し上げれば良いと思いますが」

 (せい)()も続ける。

「なぁんか、ヤな予感がするんすよね、あのお(じょう)ちゃん。あんまり、引き留めておくと、(やっ)(かい)の種になりそうな(ふん)()()。あれは(はっ)()なんて()(わい)らしいもんじゃない。もっと……」

 言葉が()(ちゅう)で消えたのは、耀(かぐ)()の表情が(ゆが)められたからだ。

(たよ)ることすら(あきら)められているうちは、帰せん」

 姉弟(きょうだい)は顔を見合わせ、それぞれに降参の言葉を返した。

 耀(かぐ)()(たよ)(すべ)もない相手に弱いのは、今に始まったことではない。耀(かぐ)()自身が、他人に(たよ)れない半生を送ったが(ゆえ)に。

 それを(こく)(ふく)するべく立ち上げられた(りゅう)(じん)(けい)()(がい)(しゃ)の社員が、今の社長を止める理由は、なかった。

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