↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
路地裏の魔法屋  作者: 珠日乃 らいす゛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/6

6人目。物語の結末。そして…

あの国は呪いの国と呼ばれるようになった。

店主はあの国を離れ、違う国で再び魔法屋をやっている。

まるで、何事も無かったかのように。

いや、店主にとっては本当に何も無かったのだ。

一つの国の存亡など、さして意味などないのだから。

ただ、しばらくして、店主には一つ予想外の出来事があった。

「…魔法屋さん。」

「おや……これは、本当に予想外のお客さんですね。」

新しい魔法屋にやってきたのは、かつてどんな願いでも叶える魔法を買った、あの兵士だった。

その表情はどこか虚ろで、悲壮感を纏っている。

そして左目は包帯で隠れていて、左半身が火傷跡のようになっていた。

「…お久しぶりです。」

「えぇ、お久しぶりですね。あなたはもう来ないと思っていましたよ。」

「僕も、もう魔法に頼ることはないと思っていました。」

「僕から言うことでは無いですが、あれだけのことがあったのですから、魔法には絶望したでしょう?」

「えぇ、それはもう。あの絶望の中で死ねたら、どれだけ良かったか。」

「あの日のこと、もう一度詳しく聞いても?」

「…相変わらず、正直な人ですね。」

「褒め言葉として受け取っておきます。」

「あの日、僕が戦っていると、一人の男がやって来ました。彼は愛する人を助けるために、どんな願いでも叶える魔法が欲しいと言いました。ただ、僕はもうその魔法を使っていたんです。もう、この国で誰も死なないようにと願って。」

「おや…それは、一番残酷な願いですね。」

「はい、そうだったみたいです。それを聞いた彼は安堵のため息をついて、走っていきました。僕も無理して一般人を守る必要はないと思っていましたから、彼の後をついて行きました。彼の愛する人は、無事でした。彼らはしばらく言葉を交わしていましたが、そのうち彼女が彼から離れ、別れの言葉を言い残しました。そして次の瞬間、彼女は上半身がぐちゃぐちゃに弾け飛んだんです。一瞬、何が起きたのか分かりませんでした。僕は誰も死なないように願ったのに、と。ですが、気づいたんです。彼女の残された下半身が、まだ動いていることに。」

兵士が悪夢のような現実を語っている時も、店主がいつもの笑みを崩すことは決してなかった。

「その時やっと、僕はとんでもないことを願ったのだと気づきました。彼も、ほぼ同時に同じことに気づいたみたいで、僕に襲いかかってきました。とても正気ではいられなかった彼の攻撃は一切躊躇なく、そして強力でした。僕は自己強化の魔法を使って、彼の四肢を切り落としました。僕のこの身体はその時こうなりました。しかしそれでも、何も知らずに、死ぬことすら出来なかった人々からすれば、ほんの僅かな怪我でしかないでしょう。」

兵士も、もう表情を変えることはなかった。

それは、大罪を犯した自分には、悲しむ権利などないのだと言い聞かせているようだった。

「燃えている人、押し潰されている人、首のない人。その後も、大勢の生きているはずのない人間を見ました。あれは、僕が作った地獄。僕は確かに、絶望しました。………ですが、同時にどこか感動もしていたんです。僕が使い方を間違えただけで、魔法には可能性がありました。」

その言葉を聞いて、店主は笑みを深めた。

「そうする必要はないのかもしれません。ですが、僕は決めました。僕が起こしたあの地獄を、僕は否定しません。あの不死の国も、喜ぶ人だっているでしょう。ですから魔法屋さん。」

「えぇ、なんでしょう?」

「僕に魔法を教えてください。」

「フフ……。」

一体何十年ぶりだろうか。店主は本当に久しぶりに声に出して笑った。

「まだ、この世界で魔法の力は強すぎる。魔法の間違った使い方、悪い部分、それらを知っても魔法から離れようとしない人には、魔法を使う才能があると僕は思っています。…えぇ、ようこそ、魔法の世界へ。」

店主が差し伸べた手を、兵士は…いや、元兵士は迷わず掴んだ。

これが、新たな魔法使いの誕生の日だった。




しばらくして、どこか遠い国で夜にひっそりと営業する魔法屋があった。

「…ここが魔法屋だよな…?…やってないのか…?」

外套を羽織った男は、明かりのついていない店内を覗き込み、様子を伺っていた。

「また今度来るか…。」

「お客さん、やってますよ。」

「えっ?」

声がどこから聞こえたのか、分からなかった。しかし予想は出来る。

男は恐る恐る入口のドアに近づいた。

「入って…いいのか?」

「はい、どうぞ。」

男が店内に入ると、突然明かりが点った。

「うっ…まぶし……。」

「ようこそ、魔法屋へ。」

男が声のした方を向くと、顔の左半分を隠した一人の男が立っていた。

「お客さん、本日はどんな魔法をお求めでしょうか?」

こんにちは、もしくはこんばんは。

このお話はお盆休み、自宅にいない間に書いたお話で、これでおしまいです。(少なくとも予定では)

最初からハッピーエンドにする気はあまり無かったのですが、この終わり方はバッドエンドでもないですね?

割と行き当たりばったりで、特別こういうことを伝えたい、みたいなのも無かったんですが、個人的には登場人物達の事は結構気に入ってます。

ちなみに店主の種族なんですが、これも特に元ネタとかはなく、適当に考えました。ぜーんぶ適当。

明日からはまたいつものお話(救世戦葬)に戻ります。(まぁ更新頻度は低いんですが)

あっちはすっごく長い予定です。

というわけで、この作品を知ってくださり、ありがとうございました。

良ければ救世戦葬もよろしくネ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。