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「あたし女なんだけど……」美男死頂上決戦 ~イケメン死亡DEATH〜  作者: たま8


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9/9

エピローグ 世界は今日も平和DEATH

『おめでとうございます』


 女神の声が、今までで一番、明るく響いた。


『アキノ・ツカサ。あなたは、この会場の優勝者です』


「この会場?」


 すごく、嫌な言い方だった。

 巨大モニターが、切り替わる。


 そこに映ったのは、世界地図だった。

 日本。

 アメリカ。

 フランス。

 イギリス。

 中国。

 よく知らない国まで、光の点がびっしりと並んでいる。


『本大会“イケメン死亡DEATH”は、全世界128か所で、同時開催されていました』


「は?」


『各会場、参加者128名』


「は?」


『つまり、世界中で16384名のイケメンが、真なるイケメンの座をかけて戦っていたのです』


「規模が馬鹿!」


 モニターに、各地の優勝者らしき顔が、ずらりと映る。

 金髪。黒髪。褐色。長髪。短髪。眼鏡。筋肉。民族衣装。

 全員、顔がいい。

 そして全員、目が少し怖い。


『したがって、アキノ・ツカサ』


「嫌な予感しかしない」


『あなたには、各会場の覇者が集う――“真イケメン死亡DEATH”に、進んでいただきます』


「もうリタイヤしたいんだけど」


『リタイヤは認められません』


「ですよね……」


『ご安心を。あなたを私がいただくのは、すべてが終わってからです』


「その安心、いる!?」


 女神の声が、楽しそうに笑った。


 * * *


 “真イケメン死亡DEATH”がどうだったかは……正直、もう、思い出したくもない。


 本当に、色々ありすぎた。

 初日からいきなり全員でのバトルロイヤルが始まり、気づけば百人以上のイケメンが入り乱れて殴り合っていた。


 次の日には、なぜかチーム戦になっていた。


 組んだ相手が裏切ったと思ったら、その裏切りは演技で、本当はあたしを守るための二重スパイだった。

 でも結局その人も、別の理由で死んだ。


 ある日は、全員の記憶が消された。

 ある日は、会場がまるごと無人島になっていた。

 ある日は、競技がいきなり恋愛リアリティショーに変わって、あたしだけ部屋でひとり、頭を抱えていた。


 ルールは毎回、理不尽に変わった。


 女神は毎回、楽しそうだった。

 そして、あたしは、相変わらず何もしていないのに勝ち進んだ。


 逃げて、困って、つい本音を言って。

 そのたびに、誰かが勝手に自滅していった。


 ……思い出したくない、と言ったけど。

 たぶん、一生、忘れられない。


 * * *


 それから、半年が過ぎた。


 駅前の巨大モニターで、白い歯の白人モデルが、歯磨き粉のCMに出ていた。


「見て。あの人、笑顔すごく素敵」

「歯、めちゃくちゃ綺麗だよね」


 あたしは、少しだけ足を止めた。

 画面の中で、マイケルが白い歯をキラーンと光らせている。


 その笑顔は、少なくとも、誰かを殺そうとはしていなかった。

 隣のビルでは、大きな男がスーツの広告に映っていた。

 大黒寺ミノルが、優しく微笑んでいる。


「なんか、包容力ありそう」

「分かる。安心感あるよね」


 少し離れたカフェの窓際では、銀髪の男が手鏡を見つめていた。


 その向かいで、眼鏡チェーンの男が、難しそうな本を読んでいる。

 誰かに何かを説明しているようだったけれど、相手は少し眠そうだった。


 横断歩道の向こうでは、長身のモデルがまっすぐ歩いていく。

 姿勢は、完璧だった。

 ただ信号待ちをしているだけなのに、やっぱり少し目立っていた。


 駅前の花壇のそばには、怖い顔をした大男が、花束を持って立っていた。

 その目の前には、困った顔の女の人。


「……あの人、告白してる」


 結果は、分からない。

 でも、少なくとも、彼はまだそこにいた。


 雑踏の向こうには、白いTシャツの男が、空を見上げて立っていた。

 白い髪が、風に揺れている。

 あの日のことなんて忘れたみたいに、穏やかな顔で、誰かを待っているようだった。


 みんな、元気そうだった。


 あたしは、空を見上げた。

 何が起きたのか。

 なんで、こうなったのか。

 たぶん、ぜんぶ、分からないままでいい。

 

 ただ……世界は今日も、わりと平和だった。

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