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第84話 究極完全態グレートアホゲロ男

 麺太に巻き込まれて久奈と金城は一切フォローせず。こうして俺のことを知らなかった人も「あ、久土って頭イカれたクレイジー野郎なんだ」という認識を持ってしまった。

 ま、まだだ。ここから挽回してやる。真剣に授業を受けて勤勉さをアピールしよう!


「一年生の復習だが、原子間で電子対の共有をともなう化学結合を何と言うか。では久土」

「フォル○スワーゲン力です!」

「違う。なぜ自動車メーカー? ファンデルワールス力と言いたいのか?」

「フォル○スっワーゲンんん」

「おい向日葵勝手に喋んな。CMの感じで発音するな」


 化学は苦手だった。次は頑張る。


「世は定めなきこそ、いみじけれ。久土、訳してみろ」

「ふっ、我の住むこの世に法も縛りもない、いみじけれだ」

「全然違う。肝心のいみじけれは訳さず完全スルーか」

「くっくっく、世は定まらない―――イミジケレ!」

「おい向日葵勝手に喋るな。なんで呪文みたいに言っているんだ。お前らがあないみじだよ」


 古文も苦手だった。次の体育でカッコイイとこ見せる。


「ぜえ、ぜえ! 今日に限って体力テスト……じ、持久走は無理ぃ」

「はい直弥二周抜かしー。これでも飲んで頑張って」

「ペットボトルなら大丈夫か……ありが」

「中身はそば湯に移し替えておいたよっ」

「おぼぼぼぼぉ!?」






 昼休み、午後の座学、体育。以上で俺の評価は決まった。その名も『究極完全態グレートアホゲロ男』だ。なんでグレートモスみたいになってるの。そば湯を噴き出しただけで吐瀉はしていないのに……。


「じゃあね究極完全態グレートアホゲロ男」

「バイバイ究極完全態グレートアホゲロ男」


 女子高生に究極完全態グレートアホゲロ男と呼ばれる男子は俺が人類史上初だろう。全然嬉しくない。

 放課後、女子達が帰り際にわざわざご丁寧にニュー蔑称でさようならの挨拶をしやがる。新手のイジメ? あれ? 涙が出てきた。


「つーか誰だよこのあだ名考えた奴」

「あたしだよー」

「お前かよ!」


 金城はニシシと愉快そうに笑みこぼして俺の髪をワシャワシャ撫でる。指先で髪を掬ったり梳いたり超触ってくる。


「ふー、満足っ。じゃあね~」


 栗色の髪を翻して金城は出入り口で待つ女子グループの元へ駆け寄っていく。去年はいなかったメンバーがいる。

 あいつもう勢力を増やしたのか。今後さらに厄介なことになりそうだ。


「では直弥殿っ、拙者は部活だからこれにてさらば」

「どうして急に武士口調?」

「困った時はこの言葉を唱えたまえ、イミジケレ!」


 麺太はホップステップジャンピング空中元彌チョップのアクションを繰り広げながら教室を去る。元気溌剌だね。持久走では四分台という好タイムを記録していた。なんだあいつ。

 はぁ、今日は最悪だった。さっさと帰ろう。あ、久奈に癒してもらいたい。手を繋いでキュンキュンしたいですっ。


「帰ろうぜ~!」

「今日は舞花ちゃん達と遊ぶ」

「そっか……」

「ごめんね。バイバイ、究極完全態なお君」

「究極完全態なお君って何!?」


 久奈は手を振って別れを告げると俺のシャウトには何も返さず金城の後を追っていった。

 残された俺、ポツンと突っ立つ。はいはいそーですか今日の放課後はボッチライフを送れってことですね。……くぅーん。


「一人でダーツしようかな……」


 ため息一つ、鞄を持って立ち上がる。途中コンビニでLチキか揚げ鶏かファミチキを食べてネカフェに行くべ。

 二年生になって早速ボッチライフだよ~、僕は友達が少ないだよ~。あっははは、はは……あぁ、虚しす。


「落ち込んでばかりだなぁ」

「待ってください」

「ゴリラの真似したらテンション上がるかな?」

「聞いていますか」

「ウホウホ、ウッホ」

「ちょっと工藤君!」

「ウホ?」


 誰かが話しかけてきた。究極完全態グレートアホゲロ男の俺に声をかける人がいるなんて感激~。キャピ♪ はい今のでブクマ減った。


「私を無視しないでください!」


 振り向くとそこに立っていたのは一人の女子生徒。

 ……えーと、あなた誰だっけ? 名前が分からない。クラス替えしたばかりだからね、しょうがないっすよね。


「俺に何か用?」

「工藤君、学級委員長としてあなたの蛮行は見逃せません」


 親しみと遠慮を全く感じさせない険しく鋭利な瞳が俺を睨む。何やら不穏な空気だ。

 あの……一つ言わせてください。俺は工藤じゃなくて久土です。

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