不死の急襲
背後を見るとそこには色白の肌を際立たせる黒い服に、傷だらけだがとても整った顔、しかしその全てを台無しにするような狂気的な笑みを顔に貼り付けこちらを睨みつけた女と、先程までどうにかしようと対策を考えていた白銀の鎧を着た騎士に黒い布で目を隠している全体的に薄汚い感じの少女が立っていた。
ショウコの両手は光の壁に触れており、先ほど唱えた魔術によるせいなのか、触れている部分から光の壁がだんだんと消え去っていった。
ラストも自分の魔法が消されたのに気づき、ショウコたちの方を向き魔法を発動させる。
「主、頭下げて!【風爆線】!」
言われた通りに頭を下げた瞬間、
凄まじい風が頭の上を通りとっさに手を出し身を守ろうとしたショウコを吹き飛ばす。
ショウコが吹き飛ばされた間にラストに近寄り、残った2人に対して身構える。
しかしオルギリウスと黒づくめの少女はこちらを見たまま立っているだけで攻撃して来ようとする様子はない、
すぐさま攻撃が来るだろうと予想していたから思わず呆気に取られてしまう、そんな事に気を取られているとあの2人の間を縫うように複数の魔弾が飛んできた!
「主!危ない!【魔断壁】っ!」
ラストの素早い反応でなんとか魔弾は当たらずに済むが、魔弾を防いだ瞬間に棒立ちだった2人がバッと構えを取り襲いかかってくる。
黒づくめの少女は鈍く光る黒色の結晶を付けた長い杖を持ち正面から突っ込んで来て、
それとは対照的にオルギリウスは横へ後ろへと動き回りどこから来るかがわからないようにしている。
「とりあえず黒いのからやるの!【火蝕翔】!」
ラストの手から黒い炎が出て、突っ込んで来る少女を一瞬にして包み込む。
火だるまになった少女は声にならないような叫び声を発し、もがき苦しむように身を激しく動かし倒れこみ辺りには何とも言えない異臭が漂う。
少女の方を見ていた間にショウコが起き上がりこちらに向かい様々な魔術を撃ってくる、
魔術は魔断壁により防がれるがラストがショウコに気を取られている間にオルギリウスが背後から襲いかかる。
「ぅおぉらぁッ!!」
「リ、【逆転世界】ッ!!!」
今まさに自分へと斬りかかってくるオルギリウスを見て思わず口から出たのは女神からもらったスキルだった。
逆転世界をかけられたオルギリウスは気にする様子もなく剣を振り下ろす…が、
剣はエヴァルに当たった瞬間粉々に砕け散る。
オルギリウスはその光景が理解できないのか狼狽え、棒立ちになってしまう、その隙を見逃すことなく蹴りを鎧に向けて繰り出すと、
剣と同じように鎧もバラバラに砕け散ってしまう、
蹴りでハッとしたのか素早く距離を取り砕け散ってしまった胸部の鎧を気にしながら新たな剣を取り出す、
しかし逆転世界を警戒したのか近寄らずむしろ距離を取り始める。
くそッ…!なんだ今のスキルは…逆転世界だと…⁈
聞いたこともないが…スキルの能力は多分わかった…おそらく名前のごとくモノの性質を逆転させる……はずだが…本当にそれだけか…?
まぁいい…私が気をつけるべきことはただ1つ、あのスキルを使わせないことだ、
あれほどのスキルなら標的を目視で定めないといけないはず……
見られないなら簡単だ…一線撃葬で一気に距離を詰めそのまま…貫いてやる!
オ、オルギリウスをなんとか離れさせられたぞ…!とっさに逆転世界を使ったが……使ってよかった!ありがとう女神さま!
ともかく奴が近づいてきたら逆転世界で剣を使用不能にさせよう…
……あ!それよりショウコはどうなった…⁈
「ラスト!ショウコはどうだ⁈」
「だ、大丈夫だよぉ…!でも…あの人すごいいっぱい魔力をもってるの…!もしかしたらラストより持ってるかもしれないよ…!」
ラストはそう言いながら絶え間無く飛んでくる魔弾を確実に防いでいるが少し辛そうだ、逆に魔弾を飛ばしてきているショウコは遠目から見てもわかるほど余裕そうである。
ショウコめ…ガチもんの化け物じゃねぇか!
これはアイツをどう対処するかで俺たちの未来は分岐するな…オルギリウスは逆転世界があるからどうにかなるとして…ショウコには何が…………ん?…あれ?
そういえば……一番最初に燃やされた子の死体は………どこに消えたんだ?
そんな事を考えた時、背後から棒などを振り回したときになる様な風を切る音が聞こえた。
すぐさま背後へ振り返るとそこにはラストが燃やしたはずの少女が持っていた長い杖を振り下ろした直後だった、
振り下ろされた杖は振り返ったことにより狙いがズレたのか右肩に当たる。
細い杖だったからだろうか、特に危ないとは思わなかった。
しかしその杖はエヴァルの右肩に尋常ではないダメージを与えた、ただ杖が当たっただけなのにかなりの重さのあるもの…例えるならマンホールの蓋を思い切り叩きつけられた様な激痛が走る。
激痛に耐えきれず苦痛に満ちた声を上げるとラストの注意がこちらへ向き、駆け寄ろうとするが、その瞬間を待っていたかのようにショウコが姿を現し、ラストへ素早く近づくと強烈な蹴りを食らわせバラバラに吹き飛ばす、
ラストを蹴り飛ばしたショウコはエヴァルが逃げられないということを確信してゆっくりと歩いてくる、オルギリウスもいつの間かすぐ近くへ来ているが攻撃してくる様子はない、
あの黒づくめの少女は何も言わず、ただ立っているだけだった。
「エフフ、エフフフフフフフフフフ…あらぁ?どうしたのかしらねぇ?地面なんかに這いつくばってッ!」
そう言いながら右肩をこれでもかと踏みつける、踏まれるたびに骨が軋むような音と体中に電撃のような激痛が走り、耐えきれずに大声で叫んでしまう、肩を踏みつけているショウコはその声を聞いてニヤニヤと笑い、グリグリと力を入れてさらに踏みつけてくる。
「ぅぐっ…!くぁぁっつッ!」
「ん〜?うるさい大声をあげて無様ねぇ?…エフフ……笑いが止まらないわぁ、エフフフフッ!」
「………ショウコさん、私たちの目的は『意思ある核』ですよ」
「わかってるわよ!ちょっとした気分転換でしょ!」
オルギリウスにそう答えると再び足を上げ肩を思い切り踏みつける、奇妙な笑い声を響かせながら踏みつけているのを無言で見続けるオルギリウスはショウコの関心が早く元の意思ある核に戻らないかと考えていた。
どれだけ時間が経ったのかはわからない、踏まれていたはずの右肩の激痛はなくなったがまだジンジンと痛む。
ぼやける視界で少しだけ周りを見るとオルギリウスとショウコが何かを話しているのが見えたが何かまではあまり聞こえない…耳を澄まし、聞き取ろうとするとショウコのある一言だけ聞こえた。
「うーん…さぁって、気分転換もできたし……ダンジョンマスターぁ……アンタには消えてもらうから」




