ある死神の物語(1)
新章開幕。(=゜ω゜)ノ
普段とは違い怪談のない話です。
ある日突然ソレ(・・)はこの世に誕生した。
ソレは、全身を覆うような長さの黒い外套を着ており、顔も頭まで被ったフードによって、顔を確認することは出来ないがフードの奥には仄かに青い瞳が輝いていることが確認出来る。
小学生位の身長をしているが、背中には自分の身長程もある大鎌を担いでおり、大分人間味が薄れている印象を受ける。
ソレは死神と呼ばれる存在である。
死神は人を死に誘う者であり、老若男女に対して平等に訪れる死の概念でもある。彼らは常に一定の個体数がこの世に存在し、彼らが減る度に何処かで新しい死神が誕生する。
彼らはこの世に生まれるときには、基本的にはある程度の必要な知識を持った人型で生まれ、服装や得物はその個体によって微妙に異なっている。加えて、人間とは違い彼らには性別という概念がないため、どの死神も多少の差異はあるものの中性的な容姿をしている。
さらに、未来から過去までどの時代にも移動することが出来るため誰しも彼らから逃げ切ることは出来ない。
だが、命を狩る存在である彼らにもルールはある。
彼らが命を狩る対象は、彼らの目から見て命の灯の発する光が鈍くなった者だけであり、それ以外の者を狩ることはない。
そして、対象の身体の中にある命の灯を自分の持つ得物で切り裂く。
それだけで、普通の人間ならば命を落とす。
また、死神側にも対象を殺す時間制限がある。
49日を過ぎても対象を殺すことが出来なかった場合、対象を殺せなかった死神は消滅してしまうようだ。
加えて、命を狩る対象を助けてはいけないらしく、昔、酔狂にも人間を助けようとした死神はその人間を助けた後に、消滅してしまったそうだ。
後は、同じ死神が同じ場所の同じ時間には存在することが出来ないらしく、死神同士が直接鉢合わせすることはないようだ。
一応、他の死神たちのことも生まれると同時に知識として得るのだが、果たして必要な情報なのか怪しいものだ。
そんな孤独な仕事にも疑問の感情も抱かず、彼らは仕事を淡々とこなしてきた。
何故なら、彼らは人ではなくある種の死という自然現象である。
例えば、台風自身が自らが過ぎ去った後の農家の人達の農作物の被害の心配をしないように、自然現象が個人に感情を抱くことなどない。
新たにこの世に誕生したソレ(・・)が唯一不満を抱いたことがあるとすれば、自分の知識の中にある死神の平均的な身長の中でも自分はかなりの低身長で生まれたこと位である。
ともあれ、生まれたばかりの名も無い死神は、自分自身が生まれてから初めて行う仕事に対して、疑問も不満も抱くことなくただただ遂行するために歩き出すのだった。
これから先も疑問を抱くことなく仕事をこなす日常を繰り返すだけだと思っていた。
あの日、あの場所で彼女に会うまでは…。