真夜中の用務員(3)
今年最後の投稿。
珍しくちょっぴりホラーエンド。(=゜ω゜)ノ
昇降口の外を誰かが通り抜けて行った。幸い明かりも無い状態だったため、その人影は晶たち3人に気付くことは無かったようだった。
謎の人影が過ぎ去ってから少し経った後、晶たちは物陰から顔を出した。
「さっきの人影は何だったんだ?」
開口一番に晶がそう疑問を他の2人に投げかけた。
「分からない…生徒会長さんが教えてくれなかったらあのまま鉢合わせしてたかもしれないね」
「…ぐぅ…すぅ」
返ってきた答えはどちらも疑問に答えられるものではなかった。というよりも、千紅の方は目を離した隙に再度晶の背中におぶさった上で寝ているようだった。
結局、答えのでないまま3人は昇降口から外に出るのだった。
先程まで降り続いていた雨のため外の土は酷くぬかるんでおり、先程の謎の人影が付けたと思われる足跡が1人分のみ残っていた。
どうやら3人が訪れた時についた足跡は、既に雨によってかき消されてしまったようだった。
「結局怪談の謎もさっきの人影の正体も分からずじまいだったな…」
「そうだね、晶ちゃん…」
「…むにゃ…」
若干落ち込んだ様子の2人であったが、千紅は一切自分には関わりがないとでも言うかのようにひたすら眠り続けるのだった。
「仕方ねえ、このまま一旦校門まで戻るか!」
そう決意した晶たちは、謎の人影を無理に追おうとはせずに校門に向けて歩き出そうとするのだった。
「んっ?君たち不審者かい!?こんな時間にどうして学校にいるんだ!!」
すると突然、謎の人影が去った方向から若い男の怒鳴る様な声がするのだった。
声がした方向に晶たちが目を向けると、晶たちのいる場所から少し離れた所に警備員のような服装をした30過ぎ位の男が懐中電灯を片手に立っているのだった。
どうやら建物の影から出てきたと思われるその男は、自分に背を向けた形で歩いていた晶たちを見つけて声を掛けたようだった。
「それで、君たちはこんな時間に学校に一体何の用で来たんだい?」
晶たちの近くに来た警備員風の男は、さっきの怒鳴っていた口調とは打って変わって優しい口調で尋ねるのだった。
「ちょっと学校に用事があって…」
「君たち二人共、学校の制服という訳でもないけど部外者なのかな?」
警備員風の男は懐中電灯で晶たちの服装を照らしながら、そう質問するのだった。
「いや、俺たちはこの学校の生徒で…」
「だとしても、君たちは夜中の学校に無断で侵入したんだよね?つまり不審者ということだよね?」
晶が説明をしようとする度に、警備員風の男は晶の発言を遮りながら晶たちの行為を責めるのだった。
そして、警備員風の男が言葉を遮る度に、徐々に和やかな口調は剣呑なものなって行くのだった。
「…ふぁ…彼らは無断で校内に侵入した訳ではないわ」
そんな雰囲気の中、晶の背中から制服姿のまま千紅が眠たげな声を上げるのだった。
「…学校にも夜の校内を探索する許可を得ているし、嘘だと思うなら生徒会役員として責任を持って証明もするわ…」
至極真面目なことを話しているはずなのだが、背中越しで眠たげな声で話すため警備員風の男は若干困ったような顔を晶たちに向けるのだった。
「…それに不審者だったら、ついさっき反対方向に行ったはずよ…」
そう言って、晶たちも見かけた謎の人影の向かって行ったであろう方向を指差すのだった。
「そうなのか…さっきからずっと外を巡回していたが気付かなかったな…。ご協力感謝するよ!君たちも周りに迷惑を掛けないように、夜の学校は決して出歩かないようにするようにね!」
そう言って警備員風の男は地面に残った足跡を頼りに、謎の人影が向かった方向に走り出して行くのだった。
「…さてと、私たちは早く帰って寝ましょう…明日も学校よ…?」
「ああ…会長さんには色々と迷惑を掛けちまったな」
「そうだね、晶ちゃん。後で副生徒会長さんにも謝らないとね」
その後、晶たちは校門で待ち続けて副生徒会長の刀真と合流し、再び降り始めた台風の猛威の中、家へと帰るのだった…。
そして翌日、その日の放課後も晶と冬亜は生徒会室での手伝い(ごうもん)に追われるのだった。
「…とあちゃん…昨日より書類の量が多くねえか…?」
「そうだね晶ちゃん…昨日やった量の2倍はあるよ…」
「一応生徒会が許可したと言っても、手前らの行動に対する罰則的な意味合いもあることを忘れるなよ?」
刀真の一言もあり、昨日の2人の行動に対するペナルティの意味も込めた大量の書類を前に2人は絶望の表情を浮かべるのだった。
そんなやりとりこそあったが、2人は淡々と書類を片付け終え、生徒会室を後にするのだった。
結局、あの人影の正体も用務員の謎も解けないままこの事件は幕を下ろすのだった…。
~第日夜:真夜中の用務員…Fin…?~
~Extra Episode~
Side:逆馬刀真
あの問題児2人が生徒会室での仕事を終えて帰って行ったのを確認した俺は、未だに机に突っ伏したまま眠っている幼馴染の方に顔を向けた。
「それで、手前は何であいつらに興味を持ったんだ?」
俺は、相変わらず机に突っ伏して眠っている幼馴染に唐突に声を掛けた。
こいつは寝ながらでも周囲の状況ぐらいは簡単に理解出来るからこそ、こんな聞き方をしたんだが…。
「…くぅ…くぅ…ちゃんと名前で呼んでくれなきゃ…また寝るわよ…?」
こいつの場合、何故か俺しかいない時だけは謎の甘えを発揮すんだよな!?
「…仕方ねえな……起きてんだろ…千紅…」
「…おはよ、まーくん。何で私があの2人のことにこだわるのかでしょ……それとも、2人の危機を救ったことの方が気になるかしら…?」
相変わらずこいつは何処まで物事を見通しているんだか、幼馴染の俺でも分からない時があるな。
「まあ、どっちも気になりはするんだが、あえて言うならお前があいつらを助けたことは言わなくていいのかよ?」
「…あの子たちは今回の真相は知らない方がいいと思ったから言わなかったわ…」
そう言って、千紅は手元にあった1枚の書類と今朝の新聞を俺に差し出してきた。
書類には、この学校における過去に起きた事件の資料や、それに関係して実在する怪談の事細かな詳細が書かれていた。
そこには様々なことが書かれていたが、その中には今回あの2人が調べようとしていた深夜に現れる用務員のことも書かれていた。
資料によれば、過去に本校の生徒と他校の生徒を併せた複数名が深夜の櫂耀高校の本校舎に肝試しで侵入した際に、警備員風の30過ぎの男に遭遇したらしい。
その際に、本校の制服をたまたま着ていた生徒は厳重注意されるだけに止まったが、他校の制服を着ていた生徒はそのまま警備員の男に連れていかれ、その後行方不明になってしまったというものである。
また、今朝の新聞には台風の影響で深夜にかけて周辺地域は大停電に見舞われており、多くの企業に影響が出たというものだった。その企業の中には、櫂耀高校の警備体制に関する契約を結んでいる企業もあり、昨晩の時点で千紅たちが遭遇した警備員風の男は警備会社とは全くの無関係の人物であると推測される。
さらに記事の隅には、昨日の台風の最中に強盗殺人事件が1件発生しており、犯人は未だ見つかっておらず、高校の周辺での目撃情報を最後に消息を絶っているというものもあった。
おそらくは千紅たちが見た謎の人影は逃亡中の強盗殺人犯で、遭遇した警備員風の男は怪談の用務員であると推測出来る。
その上で、消息不明になった強盗殺人犯がその後どうなったのかは容易に想像が出来ることだ。
「…それにあの警備員風の人…大雨の中、外を巡回していたのに服は全く濡れていなかったわ…」
千紅たちが校内から出た直後には雨が止んでいたが、少なくとも外を巡回していれば吹き荒ぶ風雨によって傘を差していたとしてもびしょ濡れになってしまうことは、昨日俺自身が体験したこともあり、千紅の指摘した警備員風の男の不可思議な点には納得するしかなかった。
それに機械設備が普及した近年では、深夜の校舎の巡回などをするような学校用務員はほぼ姿を消しているため、用務員の服装を警備員の服装と間違える可能性も十分にありえるだろう。
結局、千紅の奴があの問題児2人を気に掛けている理由は聞けず仕舞いだったが、それでも俺はあの幼馴染には今後も付いて行くことになると思う。
もしかしたら、千紅はアイツらに対して何か思うことがあるのかもしれないのかもしれないしな…。
そんな柄にもないことを思いながら、俺は千紅と残りの仕事を片付けるために生徒会室に残るのだった。
~第日夜:真夜中の用務員…Fin~
皆様、来年もよろしくお願いします!(=゜ω゜)ノ




