真夜中の用務員(2)
年内にもう一話投稿できると思います。
現在も外は激しい風雨が降り続いている中、真夜中の櫂耀高校の廊下に2つ(・・)の(・)足音が響いていた。
「くぅ…すぅ…むにゃ…」
「会長さん、さっきからずっと眠ったままだな…」
「そうだね…」
懐中電灯の明かりが廊下を照らす校内では、3人分の声が響いていた。
何故、3人いるはずなのに2人分の足音しか聞こえないのだろうか?
その理由は、晶たちが昇降口から校内に入ろうとしたところで、千紅が晶の背中に飛び乗ったからである。
最初は、力仕事でもあるため心配した冬亜が代わろうかと提案したのだったが、晶は自身の背中に押し付けられている千紅の豊かな2つの膨らみが冬亜を誘惑してしまうのではないかと本能的に危惧し、最終的には晶が千紅を背負ったまま校内探索を行うのだった。
ちなみに、当の千紅自身は晶の負担にならないような絶妙なバランスで背中にしがみつきながら、現在まで熟睡をしているのだった。
ともあれ、校内に入る直前に千紅から渡された各部屋に入るための鍵を使いながら、晶たちは時間を掛けて校内を探索するのだった。
晶たちは生徒会室を始め、調理室や音楽室、各クラスの教室を次々に回って行った。途中で現世千代子が養護教諭を務めている保健室も覗こうとしたが、3人(1人は熟睡中)は本能的な危険を察知したためあえなく断念するのだった。
「それにしても、とあちゃん。本当に何もないな」
「そうだね、晶ちゃん。外も台風の影響なのか明かり1つ点いていないみたいだしね」
そう言いながら2人は、校内の窓から見える真っ暗な街並みを見下ろすのだった。
その後も3人は校舎内を探索するのだったが、当然のことながら自分たち以外校内には誰もいる様子は無かった。
そして、時刻は既に真夜中の12時を過ぎようとしていた。
「これだけ回っても何も収穫なしかよ…」
「仕方ないよ、晶ちゃん。それにこれ以上はダメだと思うよ?明日も学校があるんだから」
「くぅ…くぅ…」
相変わらず千紅だけは寝息を立てているが、晶と冬亜の2人は校内探索の切り上げを検討しようとするのだった。
「ちぇ、せっかくなら本校舎だけじゃなく旧校舎も見て回りたかったな」
そう言って晶は、校内の窓から見える少し離れた場所に存在する古びた外装が特徴的な建物に目を向けるのだった。その建物は櫂耀高校が出来る前からあった建物を改装したもので、今でも取り壊されることなく校内に存在していた。
普段の授業で教室として使われることこそないが、定期的に清掃も行われており部活動などで少数の生徒が利用するのみである。
「…だめよ、私があなたたちに許可したのは噂のあった本校舎まで…」
そこへ、強い意志を感じる声が晶の背後から聞こえるのだった。
「うわぁ!?会長さん起きてたのかよ!?」
晶たちの会話に割り込んだのは、晶に背負われていた千紅だった。
「…ええ起きているわよ…ZZZ…?」
「いや、起きてんのか寝てんのか、どっちなんだよ!?」
「晶ちゃん、生徒会長さんの言う通り、今回の噂の出ている場所は本校舎だけだからあきらめようよ?」
「うーん、仕方ねえ。今回は諦めるしかないか…」
そう言って渋々ながら納得する晶と共に、3人は昇降口に向けて歩き出すのだった。
晶たちが昇降口に着く頃には、晶たちのいる場所が台風の目にでも入ったかのように雨が殆ど降っていない状態だった。
「んっ?懐中電灯の明かりが急に弱くなったな?」
晶がそう言うと同時に、彼女が家から持ってきた懐中電灯は突然電池が切れたかのように点かなくなるのだった。
「わっ!?晶ちゃん急に暗くなったよ!?」
「大丈夫だ、とあちゃん!俺の視界には眩しい位可愛い天使が見えているぞ!」
「晶ちゃん!?凄く嬉しいけど、状況は何も変わらないよ!?」
「…ふぁ…慌てすぎよ2人共…校内に(・)入った(・・・)とき(・・)から(・・)ずっと非常灯が点いていたわよ…」
2人が混乱している中、千紅だけは冷静に校内を照らしている非常灯の存在を指摘するのだった。懐中電灯の明かりが無くなっただけ薄暗くなったものの、昇降口はわずかな明かりが残っており晶たちの顔が確認出来る程度には視界が確保されているのだった。
「本当だ。懐中電灯の明かりがあったからあんまり気にしてなかったな…」
「僕たちちょっと慌てすぎていたみたいだね…」
千紅の指摘もあり2人は落ち着きを取り戻すのだった。
こうして多少のトラブルがあったものの、3人はこの台風の中、外の校門で待つ副生徒会長の逆馬刀真と合流するため、上履きから運動靴へ履き替えに各々の靴箱に向かおうとするのだったが…。
「…2人共、物陰に隠れなさい…」
すると突然、声を潜めながらも有無を言わせない雰囲気の指示を千紅が2人に出すのだった。
「えっ…?う、うん…分かりました」
「お、おう?分かったぜ、会長さん」
晶と冬亜は千紅の指示に従い、玄関側からは気付きにくい位置にある物陰に3人は身を隠すのだった。
すると、3人が隠れた直後に昇降口の入口辺りを人影が通り過ぎたのだった…。
~第日夜:真夜中の用務員…continue~