78.その秘められし血は隠されし切り札
スケルトンロードは英雄の亡骸を元に創られるアンデットだ。
そしてデュオ達の間で通称・巫女スケルトンロードと呼ばれている個体はスケルトンロードとは呼べる代物ではない。
何故なら巫女スケルトンロードは英雄の亡骸を元に創られたスケルトンロードでは無いからだ。
創造主であるDeathが尤も強く美しく強大な魔力を持った人間――七王神最強の巫女神フェンリルを模して創ったスケルトンロード――それが巫女スケルトンロードだ。
巫女スケルトンロードは不完全なスケルトンロード故により、尤も人間らしいスケルトンロードとなった。
その人間らしさが巫女スケルトンロードを最強のスケルトンロードへと押し上げた。
『マスターの仇! 覚悟!』
「仇って何の事だよ? 俺はお前とは直接の面識は無いぜ?」
『貴方が裏で糸を引いてThe Devilを唆していたことは既に知っているのよ』
巫女スケルトンロードはDeathの仇を討とうとThe Devilことケイジの事を探っていたが、実はその裏にはブルブレイヴが暗躍していた事を突き止めたのだ。
仇を討つため巫女スケルトンロードはThe Devilの事だけを中心に調べたが、実はDeathの他にも神秘界に起きた八天創造神とデュオ達や『AliveOut』の争いの影にはブルブレイヴが存在があった。
日曜創造神が密かに他の八天創造神を排除するようにブルブレイヴに指示を出していたのだ。
本当の仇は実行者のブルブレイヴと首謀者である日曜創造神だ。
そして漸く見つけたブルブレイヴを前に巫女スケルトンロードは怒りをぶつける。
巫女スケルトンロードはブルブレイヴとの間合いを詰め、手にした神木刀ユグドラシルを振りかぶる。
『刀戦技・神威一閃!!』
防御の為に無限武器生成召喚で生み出した剣を掲げるも、その剣ごとブルブレイヴの腕が斬り飛ばされる。
「うおぉ!? やるなぁ!」
腕を斬り飛ばされながらもブルブレイヴは笑みを絶やさず、残った片腕で斬り飛ばされた腕を元の位置にくっ付け瞬時に元通りになった。
『くっ、なんて出鱈目な!』
「Deathのところの生き残ったスケルトンロードか。特殊個体だったって記憶しているが、確かにこりゃあ普通の魔物と段違いだな。
確か巫女神フェンリルを模してたんだよな。どうした? 二刀流がお前の武器じゃないのか?」
確かに巫女スケルトンロードは巫女神フェンリル同様に二刀流の戦技を持っており、所持している刀も二刀だ。
一刀が今ブルブレイヴに向けている神木刀ユグドラシル。神木ユグドラシルの柄だから創られた神をも斬り裂く刀だ。
そしてもう一刀が素戔嗚の太刀。だがこの刀は使えない。何故なら素戔嗚――ブルブレイヴの加護を持った刀だからだ。
加護を与える相手にその加護の武器は通じない。
よって、巫女スケルトンロードは巫女神フェンリルの最大の武器である二刀流を発揮できないままブルブレイヴに挑まざるを得ない。
そんな巫女スケルトンロードとブルブレイヴの戦いをウィル達は黙って静観していたわけではない。
確かに巫女スケルトンロードの乱入で攻撃のチャンスが増えた訳だが、今選ぶのは撤退一択だ。
「ウィルさん、今の内です。このままブルブレイヴの相手をあの巫女に任せてわたくしたちは撤退しますわよ」
「ああ、何があったかは知らねえが、巫女スケルトンロードがブルブレイヴの相手をしてくれているなら逃げる隙もある」
直ぐにローズマリーは死んだように動かないデュオを背負い、一目散に逃走を開始する。
ウィルは殿を務め衛星を警戒するも、ブルブレイヴは巫女スケルトンロードに夢中なのか一体も襲ってはこずにすんなりと撤退する事が出来た。
ブルブレイヴはウィル達が逃走を開始しようとしていたのに気が付いていたが、今は目の前の巫女スケルトンロードの方がより楽しめると判断し、衛星で牽制しながらこの戦いを楽しむ。
まぁ、逃げたウィル達も仲間が1人倒されたことで復讐鬼となってより手強くなっていることを望んでいたので、巫女スケルトンロード戦のデザートのように後の楽しみにしていたりするのだが。
「さぁ、楽しんでいこうか!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「取り敢えずここまで来れば大丈夫でしょう」
ウィル達は勇者街を抜け、旧市街区のさびれた通りにある空家へと逃げ込んだ。
元々侵入者を受け入れる体制を取っていた為、実は日曜都市のあちこちにこういった空家が存在していた。
尤も住人達は記憶改竄をされている為、空家の存在に気が付いている者は居ない。
「大丈夫か。そうれはどうだか。Judgementの『審判』があれば一発でここがばれるぜ」
ローズマリーは一息ついたが、ウィルの方はJudgementの存在が自分たちを狙っていることにより気が抜けず警戒を怠らない。
「その事ですが、多分大丈夫でしょう。ブルブレイヴの性格を考えればそれほど心配する事でもありませんわ」
空き家だった為、埃をかぶったベッドを叩き、死んだように眠るデュオを寝かせていたローズマリーはウィルに気を落ち着けるように言う。
「どういう事だ?」
「ブルブレイヴは戦いを楽しみたいが為、わたくし達を襲っています。もしわたくし達を容赦なく排除するならJudgementと同時に襲ってくるはず。
おそらくですが、ブルブレイヴは楽しみを邪魔されないようにJudgementに手を出すなとでも仰っている可能性があります」
「あ、あ~~~、ありうるな。あのブルブレイヴの性格じゃ」
「少なくともブルブレイヴがわたくし達を狙っているのならJudgementの『審判』を心配する事は無くなりますわ。
なので今は少しでも体を休め英気を養う必要があります。ウィルさんも気を張り詰めすぎるのは良くありませんわよ。いざと言う時動けなければ今の状態のデュオさんを誰が守ると言うのですか」
「・・・分かった。今は助言に従って休ませてもらうよ」
「ええ、そうして下さい。わたくしも少し休んでから疾風さん達仲間の捜索に向かいますわ」
「仲間? まて、そう言えばさっきからブルブレイヴの事を呼び捨てに―――」
この状況で仲間を探す。普通に考えれば当たり前なのだが、ローズマリーにとっては巻き込まれただけで仲間などいないはず。
そこでウィルはローズマリーが先ほどまでブルブレイヴを〝様″付けで呼んでいたはずが呼び捨てになっている事に気が付いた。
「ええ、わたくしも記憶が戻っていますわ。デュオさんが死んだと思った瞬間に記憶が戻りましたの」
「そう、か。あ、いや待て。今はそれでいいが、デュオから離れたらまた記憶が改竄されるぞ」
「そうなのですか?」
ウィルはデュオの持っているクオのペンダントが起点となって日曜創造神の記憶改竄を防いでいることを説明した。
「それでしたらわたくし達はデュオさんの傍から離れられませんわね。口惜しいですが、ここはデュオさんが目を覚ますまで待つのが良いでしょう」
「そう、だな」
ウィルはまるで死んだように眠っているデュオを見ては本当に目を覚ますのか、心が抉れるような思いでいた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ここは・・・あたし死んだんじゃ・・・?」
真っ白な空間にデュオは立っていた。
自分の記憶が確かなら、ブルブレイヴの手刀に心臓を貫かれたはず。
「ここは神域だよ。君はまだ死んではいない」
突然かけられた声にデュオは驚き見ると、先ほどまで誰も居なかったはずなのにそこに1人の男が居た。
真っ白な空間と同じように真っ白な台座に座り肘を掛けてこちらを見ている。
よく見ればその男は見知った顔だった。
「アッシュさん・・・?」
「おや、知り合いかい? 今の姿は仮の姿でね。ユニーク職を選んだ者の姿を借りているんだよ。
差し詰め今の姿は天魔を選んだ者の姿だね」
「アッシュさんじゃない・・・?」
「そう、中身はまるっきりの別物だよ。うーん、今がどうなっているかは知らないけど、君たちから見れば8人の神の内の1人って事になるのかな?」
8人の神と言えば八天創造神の事を指すのだが、今残っている八天創造神は日曜創造神と木曜創造神だけで他の創造神は既に攻略済みだ。
だがデュオはそこで1つの間違いに気が付く。デュオが数えた八天創造神は7人だ。本来の八天創造神の人数は8人。
つまり目の前の男の正体は――
「裏切りの神・サカキバラゲンジロウ・・・!?」
「おや、その名は知られているのかい? それにしても裏切りの神とは。面白い伝わり方をしているね」
「一体どういう事? お爺ちゃんやソロお兄ちゃんの話じゃ裏切りの神は既に居ないはず」
「あー、うん。確かに僕の本体はもう既に居ないね。あ、いや、居ないと言うのはちょっと違うか。まぁどちらにせよ変わらないから同じか。
僕は君の言うその本体・・・裏切りの神が残りの7人の神に対抗するために色々仕掛けた内の1つだよ」
確かに謎のジジイの話によれば、裏切りの神は八天創造神に対抗するために色々な策を用いていた。
謎のジジイの暗躍もその内の1つだ。
そして目の前のアッシュの姿をした裏切りの神もその内の1つだと言う。
「そう言えば、あたしはまだ死んでないって」
「ああ、うん、そうだよ。ここは神域。まぁ神域って言ってもそんなに偉そうなものじゃないけどね。言ってみれば選択の間かな?
君はここで神の力を手に入れるか、死を受け入れるかの選択をしてもらう」
「神の力・・・どういう事か説明はしてもらえるんでしょうね?」
「それは勿論。でもその前に今の外の世界がどうなっているか知りたいね。特に残りの7人の神とか」
どうやら目の前の裏切りの神はまるっきり現在の状況を知らないようだ。まるで今目覚めたかのように100年前に置き去りにされたように見えた。
「ふーん、八天創造神に神秘界ね。大体は本体の予想通りってわけだ。
どうやら僕の存在は無駄にならないで済みそうだ」
一通りの説明を聞き終えた裏切りの神は面白そうに笑っていた。
「それで、一体何がどうなっているか説明して頂戴」
「そうだね。まずは君は七王神の血を引いている。君の言う魔導血界がユニーク職・天魔――天魔神の血を引いている証拠だね」
自分が七王神の血を引いている。それはThe Hermitにも既に言われていた事なので左程驚きは無かったが、こうして改めて言われれば信じがたいものでもあった。
「実は当初の予定では君以外にも七王神の血を引く者が現れる予定だったんだけどね。
どうも神域の記録を確認したところ、結婚システムを利用したのは君の言うアッシュって人だけだったみたいだ」
「結婚システム・・・? よく分からないけど、アッシュさんしか結婚しなかったって事?」
「そう。結婚システムで子供を作ってもらってこの世界に七王神の血をばら撒く予定だったんだけどね。
残念なことに結婚システムで子供を作ったのはアッシュだけで、七王神の血を引く者は天魔神の一族――君とトリニティしか居ないみたいだ。
で、君は一族の中で一番その血を強く受け継いだ。その表れが莫大な魔力と魔導血界だね」
確かに天魔神はその強大で莫大な魔力で魔法を行使していた七王神だ。
デュオがその血を引いていたなら自身の魔力の強大さにも納得がいく。
「さて、ここからが本題だ。
僕はユニーク職――七王神の血の中に隠されたプログラムだ。血を引く者がその才能を開花させ強者として成熟した時に命を落とす。その時になって初めて起動するように仕掛けられていた。
何故なら強者として命を落とす時はより強大な敵――八天創造神と戦った時だと思われるからね。
つまり僕は君を八天創造神に打ち勝つために神の力を授ける存在だ」
表立って仕掛けを残せば八天創造神に目を付けられる。だから七王神の血を引く者が強くあらん時にだけこの仕掛けが発動するようになっていた。
尤も日曜創造神だけが僅かなその可能性に気が付き、魔王信者の召喚従魔師アレスト=グロリワールやThe Hermitをけしかけ抹殺を図ったのだ。
「但し、これは強制じゃない。
もう戦いは嫌だ、静かに眠りたい。そう思うならここで死を選ぶことが出来る。ここはその為の神域で、君の選択の為に命を一時的に預かっている」
「なるほどね。だから最初に言っていた力を手に入れるか、安らかな死か、どちらかを選べと言う事なのね」
「そうだ。まぁ僕としては神の力を手に入れて欲しいところだけどね。その為の存在だし。
まぁでも死を選んでも責めやしないよ。生きると言う事はそれだけで辛い事でもあるからね」
アッシュ(裏切りの神)はさぁどちらを選ぶんだい?とデュオに選択を迫る。
「あたしの答えは決まっているわ。あたしが選ぶのは―――」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
日が暮れるころにサンフレア神殿を訪れ記憶を取り戻し、日曜創造神を倒す為にそのまま夜の日曜都市へ出たところブルブレイヴに襲われて迎撃したウィル達だったが、デュオがブルブレイヴの一撃を受けてしまい今は逃亡中だ。
幸いと言うか、何故かデュオが死んでいるのに生きていると言う不思議な状態で、もしかしたら目を覚ますかもしれないとウィルとローズマリーはその時をただ待ち続けて一晩が過ぎ夜が明けた。
「デュオはまだ目を覚まさないか・・・くそ、どれだけ待てばいいんだ!?」
「落ち着いてください。デュオさんは必ず目を覚まします。その時に備え、わたくしたちは休んでおかなければなりませんわ」
「そんな事は分かってる! 分かってるんだよ・・・」
一向に目を覚まさないデュオを心配しているウィルは、もしかしたらと言う不安が拭えずイラついていた。
ローズマリーもウィルがデュオを想う気持ちを知っているのでその焦燥感は分かるのだが、今はデュオの大事な時なため外に――ブルブレイヴに見つかるわけにはいかないのだ。
何とかウィルを落ちつけようと言葉を掛けるが、ウィルの心の波は簡単には治まらない。
「なぁ、サンフレア神殿に向かうのはどうだ? サンフレア様なら今のデュオをどうにかできるんじゃないのか?」
「・・・確かに太陽神サンフレアなら今のデュオさんに何が起きているか調べることが出来るかもしれませんわ。
それに、サンフレア神殿に向かうと言う案は日曜創造神の記憶改竄の影響を受けないのでわたくしがクオさんのペンダントを預かって疾風さん達の捜索をすることが出来ますわね」
「だったら!」
せめてデュオに何が起きているのか、それが分かれば手立てが見つかるかもしれない。何も出来ずに苛立つ不安が解消されるかもしれないと浮き立つウィルだったが、ローズマリーの次の言葉によって却下される。
「おそらくサンフレア神殿にはブルブレイヴの衛星が見張っていると思われますけどね。
勇者の像に衛星が張っていたのを考えればまず間違いないかと」
「衛星程度だったら突破可能だろ」
「衛星に見つかると言う事はブルブレイヴに見つかるのと同意義ですわよ。
ウィルさんは今の状態のデュオさんを抱えながらブルブレイヴと戦うと?
仮にブルブレイヴを突破してサンフレア神殿に逃げ込んだとしてもブルブレイヴがサンフレア神殿を襲わないと言う根拠は無いのですわよ?
見つかっていない今の状態が最善なのですわ」
そう言われてしまえばウィルはぐうの音も出ない。
デュオを助けるためにサンフレア神殿に向かい、その為にデュオを危険に晒しては何の意味も無いのだ。
「焦る気持ちは分かりますが、ここは辛抱の時ですわ。
・・・とは言え、デュオさんが何時までこの状態でいるのか、数時間ならまだしも数日、下手をすれば数週間の可能性もありますわね。
なのであと1日様子を見て、それでも変化が無ければ日曜都市を脱出して月曜都市のルナムーン神殿に向かう事にしますわ」
「それこそ簡単に脱出出来ねぇだろ。サンフレア神殿も見張られているんだったら当然東西南北の門も見張られているだろ」
「見つからないように脱出するのは勿論ですが、こちらは見つかっても強行突破で構いませんわ。
日曜創造神とJudgementの能力は日曜都市にしか効果が及びません。なので日曜都市を出てしまえば後はこちらの思う通りに行動できます。
問題はブルブレイヴが日曜都市を出てもその力を振るえると言う事ですわ」
「それが一番厄介じゃねぇか・・・」
確かにブルブレイヴだけは場所に縛れていない。その気になれば日曜都市を出てその力を振るう事が出来るのだ。
「ええ、ですからわたくしが命を賭けてでもウィルさん達を逃がす為の盾となりますわ。
ウィルさんはわたくしに構わず月曜都市に逃げて下さい」
「いいのか? もしそうなったら俺はデュオを優先するぞ?」
「ええ、そうして下さい。これはわたくしの勘ですが、今回の戦いにはこれから目覚めるデュオさんの力が必要になりますわ。
ですので、デュオさんの安全を最優先します」
「・・・分かった。あと1日、デュオが目覚めなければ動こう」
取り敢えず行動指針が決まった所為か、ウィルは先程よりも幾ばくか心が落ち着いた。
ローズマリーも咄嗟に勘と言ったが、それは間違いないと感じていた。デュオがブルブレイヴとの戦いの鍵となると。
そうして待つこと十数時間。
夜が明けて朝日が昇り、昼を回り、再び日が落ちて夜の帳が降りる。
神経を張り巡らせ周囲を警戒していたウィルはここから遠くない場所で騒ぎが起きているのを感じ取った。
同じくローズマリーもそれを感じ取った。これは何者かが騒ぎを起こしていると。
最初はブルブレイヴと巫女スケルトンロードの戦いかと思ったが、あれから既に十数時間も経っている。
ウィル達にしてみれば巫女スケルトンロードが勝利していれば好都合なのだが、あの出鱈目さから言っておそらくブルブレイヴが勝っているはずだ。
とは言え、まさかそれが今まで戦いが続いているわけではないだろう。
ならばこの戦いの騒動は誰が何処で起こしているのか。
そこでウィルは思い出す。
「そうか・・・! 鈴鹿達だ」
「しかも街中で暴れていると言う事は、日曜創造神の記憶改竄も攻略していると言う事ですわね」
「出来れば合流したいところだが・・・」
「ですわね。これはチャンスでもありますわ。わたくしがまたデュオさんを背負いますからウィルさんは周囲の警戒をよろしくお願いしますわ」
ウィル達は直ぐに行動を起こそうとしたが、それは叶わなかった。
何故なら空家の入り口のところにいつの間にかブルブレイヴが立っていたからだ。
「残念だがタイムリミットだ。俺の呼んだ客が来ちまったからな」
神経を張り巡らせ最も注意を注いできたにも拘わらず、ウィル達は直ぐそこに居たブルブレイヴに気が付かなかった。
ウィルはその事に内心驚いていたが務めて冷静な表情でブルブレイヴに語りかける。
「いつから俺達がここに隠れているって分かった?」
「だいぶ前からだな。Judgementに『審判』を掛けてもらえば一発で見つかるぜ。
まぁ、そんな面白くない事はしないで地道に捜したんだがな。衛兵たちにも協力してもらって結構苦労したんだぜ」
「なら何故襲ってこない?」
「見たところそっちの魔導師の様子が変わりそうだったからそれを待っていたんだよ。
確かに心臓を貫いたはずなのにまだ生きている、これは何かが起こる前兆だろ? だったらそれをみたいじゃねぇか。
まぁ、その前に俺が呼んだ客が祭りに来ちまったから今度はそっちを持て成さないといけないからな。
残念だがその魔導師を待たずしてお前らは始末させてもらう」
「巫女スケルトンロードはどうした?」
「あいつはいいところまで行ってたが、俺の敵じゃなかったって事だな。まぁ、最後はボロボロになりながらも辛うじて逃げたけどな」
「どうせならもう少し待って見ないか? 今の俺達を倒すことは簡単に出来るだろ。だったら今じゃなくてももう少し後でもいいんじゃないか?」
「日輪陽菜の直接の指令なんで無理だな。今すぐ陽菜城へ向かわなければならないんだよ」
ブルブレイヴの戦闘脳を突いて上手く口車に乗せて戦闘を先延ばしにしようとしたが、どうやら日曜創造神が介入して来たらしい。
やや憮然とした表情でブルブレイヴが腕を組んでウィル達を見ていた。
「折角決着を着けるんだ。外で派手にやろうぜ。それともこのまま中で室内戦をやるか?」
「・・・いや、外でやろう」
このまま室内で戦闘が起これば未だ眠るデュオを容易に巻き込んでしまう。
ローズマリーもそれを汲み取り頷き、デュオを空家に寝せたままウィルと一緒に外へ出る。
「せめてもの情けだ、全力で終わらせる。だからその前に先に一撃だけ受けてやる。全力で攻撃してきな。まだチャンスがあるかもしれないぜ」
外に出て構えたブルブレイヴは手招いて挑発する。
いや、本人は挑発しているつもりはないのだろう。ただ純粋にウィル達に情けを掛け一撃だけを受けるつもりなのだ。
「舐めやがって。いいだろう、全力で行かせてもらうぜ!」
「あまりにも舐めた態度は痛いしっぺ返しを食らいますわよ? 覚悟する事です」
ウィルとローズマリーは同時に動きブルブレイヴを左右から挟むように攻撃する。
ウィルは剣戦技最高のバスターブレイカーと、滅多に使わない魔法――火属性魔法のファイヤーブラストを合わせた魔法剣を。
ローズマリーは盾戦技のシールドバッシュの上位戦技・シールドチャージと、聖属性魔法のセイクリッドブラストを合わせた魔法剣を。ついでにシールドチャージの勢いを利用した剣戦技ソードリニアーを。
「ブラストブレイカー!!」
「セイクリッドチャージ!! チャージリニアー!!」
迫る2人をブルブレイヴは悠然と構え迎え撃つ。
2人の攻撃は間違いなくブルブレイヴに炸裂した。だが――
「な、んだと・・・!?」
「傷一つ付いてないですって!?」
そう、2人の攻撃はブルブレイヴに傷一つ付けられなかったのだ。
ウィルの持つトツカノ剣を以ってしても。
「The Chariotの能力の1つ、装甲武装。肉体そのものを装甲と見なし、その強度を変える能力だ。
普通の奴が使ってもアダマンタイト級の装甲へ変化するが、俺が使えばヒヒイロカネ級まで変化する。
つまり誰一人として俺の肉体に傷をつけることは敵わない」
本来なら同じヒヒイロカネのトツカノ剣なら傷を付けられるのかもしれないが、ブルブレイヴの技術とトツカノ剣を扱うウィルの技術では差があったのだ。
「さて、約束通り全力で終わらせよう。まずは剣士の方からだ」
左右の手を振ってウィル達を弾き飛ばしたブルブレイヴはやや前傾姿勢になり腰だめに力を溜める。
「The Starの七星の1つ、爆ぜる七番星・超新星!」
一瞬でウィルの間合いに入り腰だめに構えた拳がウィルを襲う。
この瞬間、ウィルは「あ、これ終わった」と判断してしまう。それほどの一撃だった。
襲い来るであろう痛みを予想していたが、一向にその気配が無い。
もしかして既に自分は死んでいて痛みすら通り越してしまったのだろうか。
そう思って前をよく見ると、ブルブレイヴの最強の一撃は魔法の防御壁に阻まれていた。
「馬鹿な・・・! 超新星を防いだ、だとっ・・・!?」
ブルブレイヴすら驚愕するこの防御壁を放った人物は、勿論ウィルの知る人物だ。
「・・・目が覚めるのが遅ぇぞ。心配掛けやがって」
「お待たせ。後はあたしに任せて。さぁ、決着を付けるわよブルブレイヴ!」
そう、謎の眠り――七王神の真の血の覚醒から目覚めたデュオだった。
次回更新は3/14になります。




