77.その星は七つの輝きを放つ
すっかり暗くなった夜の日曜都市を謎の光の男が放つ淡い光が周囲を照らす。
衛兵を気絶させ排除した光の男はゆっくりとデュオ達の方へと歩を進める。
「一応聞いておくがお前がJudgementか?」
「・・・・・・」
「ちっ、答えちゃくれねぇか。デュオ、像を壊してでも剣を取る。その間あいつの相手を頼んだぜ」
そう言うとウィルはデュオの答えを聞かずに勇者の像から勇者の剣を外す作業へと掛かる。
デュオも素早く呪文を唱え、光の男に向かって先制攻撃を放つ。
「シャドウファング!」
相手が光りを放っている事から、滅多に使わない闇属性魔法を放ち影の咢が光りの男へ襲い掛かる。
光の男は襲い掛かる影の咢が噛み付こうとした瞬間に両腕で噛み付きを遮った。
その為、影の咢に圧された光の男はその場で足を止める。
デュオはすかさず次の呪文を唱え更なる足止めをする。
「シャドウバインド! グランドプレス!」
輪唱呪文で唱えた闇属性魔法による影縛りと、土属性魔法の空間一点圧縮型による土岩が光りの男に襲い掛かる。
光の男の足下から伸びてきた紐状の影が縛り動きを封じ、周辺から飛来した土岩がそのまま光の男を包み込んで圧縮し封じ込める。
「・・・やけにあっさりと魔法が掛かりましたわね」
「うん、あたしももう少し抵抗があるかと思ったけど・・・少なくとも時間は稼げたはずよ。ウィル、さっさと剣を回収して頂戴」
相手が日曜創造神の手の者であれば何かしらの抵抗か反撃があると思っていたのだが、今の様子を見るからにどうやら相手は全く別の第三者ではないかと疑問が浮かび上がる。
デュオとローズマリーはそれでも警戒を怠らず光の男を包み込んだ土岩の塊を注視する。
その間にウィルも勇者の像から剣を外そうとするが、一筋縄じゃいかないみたいだった。
「分かってる! って、くっそ! 銅像じゃなくアダマンタイト像じゃねぇか、これ!」
銅像だと思っていた勇者の像は銅像に見せかけたアダマンタイト像だった。
アダマンタイトはオリハルコンには劣るものの、それに次ぐ硬度を持つ金属だ。
唯一の欠点は全金属の中で一番重いと言う事だ。
ウィルは勇者の像を破壊しようとオリハルコンの剣で勇者の剣を抑えている両腕を斬りつけるも僅かな傷がつくだけで一気に壊すことは叶わないでいた。
ウィルが必死になって勇者の像を壊そうとしている間にも、閉じ込めていた土岩の塊が震えだし、次第に大きくなり弾け飛んだ。
当然中から現れたのは何事も無かったかのように歩を進める光の男だ。
その何も語らず黙々と歩を進める姿は底知れぬ悍ましさを感じる。
唯一の特徴である緑の宝石の目がその悍ましさを強調していた。
「うわぁ・・・異世界にある物語の中に出てくるタ○ミネ○ターって奴みたい」
「同感ですわね。これで液体金属で出来ていのでしたら完璧ですわね。
・・・って、わたくし、何でそんな事を知っているのでしょうか?」
完全にデュオ達を敵と認識したのか、ゆっくり歩を進めていた光の男は前傾性になりしっかりと足を踏みしめ一気に間合いを詰めてきた。
デュオは呪文を唱えながら静寂な炎を宿す火竜王を剣のように構え迎え撃つ。
同じくローズマリーも大盾を掲げ防御態勢を取る。
「まったく、自分から首を突っ込んだとは言え、これ以上巻き込まれるのは勘弁して欲しいですわ!」
文句を言いながらもローズマリーはデュオの前へと出て盾役としての役割を熟していた。
デュオは記憶改竄されながらも守ってくれるローズマリーに感謝しながら間合いを調節し、盾役のローズマリーで行く手を阻みながら援護の魔法を放つ。
「ファイヤーアロー!」
光の男は襲い来る炎の矢を右手を振るうだけで払い除ける。
勢いの止まらぬ光の男はそのままデュオに迫ろうとローズマリーの排除をしようと同じように右手を振るう。
「甘いですわ!」
だがローズマリーは大盾で上手く捌きながら光の男をその場に圧し止めた。
デュオも足を止めた光の男にローズマリーの邪魔にならないように援護する。
「よっしゃっ! 取れた!」
その間にウィルがようやく勇者の像から勇者の剣を取ることに成功した。
シンプルながらも要所要所で装飾された勇者の剣を掲げたウィルはそのまま勇者の像の台座からジャンプ戦技の二段ジャンプで跳びあがり光の男の頭上から一撃を放つ。
「スラッシュストライク!」
ウィルの一撃を受けた光の男は縦に真っ二つに割れそのまま溶けるように光の粒子となって消えた。
「ふぅ、取り敢えず凌げたな」
「取り敢えずはね。出来れば残りの武器も回収したい所ね」
この勇者の剣で十分だと思われるが、数があるに越したことはない。
それにローズマリーだけでなく、他の仲間の捜索も必須だ。
「戦士街や僧侶街も回るつもりですの? 1つで十分だと思いますけど。と言うか、何故わたくしは勇者の像が破壊されているのを黙って見ていたのでしょうか・・・これは明らかに街に対しての器物損害に当たりますのに」
「気にしたら負けだぞ、マリー。
それにしても、この勇者の剣、ヒヒイロカネの剣だぜ。これならブルブレイヴだって斬ることが出来る」
勇者の剣がヒヒイロカネ製だとすれば、他のアダマンタイト像の武器もヒヒイロカネ製である可能性が高い。
それならばなおさら手に入れなければ。そう思い次の区画に向かおうとしたが、デュオ達は思わずその場で脚を止めてしまう。
何故ならその行く先には――
「監視させていた衛星に反応があったから来てみれば・・・ようやくヒントに辿り着いたか。
これで次のステージで戦えるな!」
実に嬉しそうなブルブレイヴが立っていた。
どうやらデュオ達の予想通り、アダマンタイト像に掲げられた武器はブルブレイヴを倒すためのものだったようだ。
「さっきの光の男はブルブレイヴの差し金だったわけね」
「おう。俺が用意した俺を倒す武器を手に入れようとするやつを監視させていたんだ。
The Starの七星の内の1つ、瞬きの二番星・衛星でな。言ってみれば使い魔みたいなものだ。
幾らでも生み出す事が出来る。こんな風にな」
ブルブレイヴが手を振ると、そこには先ほど倒されたはずの光の男――衛星が立っていた。
「さぁて、今度はこいつらと一緒に相手してもらうぜ!」
デュオ達が勇者の剣を手にしたことにより、ブルブレイヴは制限していた能力を一部開放するようだ。
まずはそれがThe Starの能力の七星の1つ、衛星なのだろう。
ブルブレイヴと並走して走る衛星。
ウィルはブルブレイヴを迎え撃ち、ローズマリーが衛星を大盾で抑え込む。
デュオはその後方で2人に魔法で援護する。
「トライエッジ!」
「三連拳!」
ウィルの剣とブルブレイヴの拳がぶつかり合う。
「はぁぁっ! シールドバッシュ!」
衛星の手刀をローズマリーは大盾で攻撃して弾き飛ばす。
「ホーミングボルト!」
デュオの放った無属性魔法の自動追尾弾がウィルとローズマリーの攻撃の隙を埋めていた。
最初は殆んど手が出なかったブルブレイヴだったが、勇者の剣を手に入れた今はやりあう事が可能になっていた。
武器を持たないブルブレイヴはその肉体を以て戦うが、流石にヒヒイロカネ製の剣の前には鋼の肉体は通じないようだ。
その為、ブルブレイヴの拳には幾つもの傷が付き、血塗れになっていく。
「ふはははっ! 流石に拳1つではトツカノ剣に対抗するのは無謀極まりないな!
このまま続けたいところだが、これ以上血を流すのは避けたいところだし、剣を使いこなしているところを見ればもう1つ上のステージでも十分だろう。
―――無限武器生産召喚!」
次の瞬間、ブルブレイヴの周りには幾つもの武器――剣、刀、槍、斧、棍、弓が降り注いだ。
ブルブレイヴはその内の1つの剣を手に取り、ヒュンと音を鳴らして構えを取る。
「おいおい、マジかよ。なんだよその武器の数は。こっちはやっとお前に有効な剣を手に入れたばかりだって言うのに」
「こいつはThe Chariotの能力の1つ、無限武器生産召喚だ。ありとあらゆる武器を無限に生産し呼び続けることが出来る。
まぁお前が持つトツカノ剣みたく流石にヒヒイロカネ製じゃないがな。精々ルナメタル鋼がいいところだろ」
流石にヒヒイロカネ製の武器は生産召喚は出来ないようだが、それでもこの能力は厄介だった。
幾らでも武器が生産召喚が可能だと言う事は、好きなだけ使い捨てのような使い方が出来ると言う事でもある。
使い方によってはデュオ達に向けて武器を弾丸のように次々生産召喚して攻撃することも出来るのだ。
しかもこれはThe Chariotの能力の内の1つでしかない。
The Starの能力の七星も名前からすれば7つあると見ていいだろう。
ブルブレイヴの力の上限は何処にあるのか。
デュオ達は自分たちが挑んだ相手がこれまでにない強さに戦慄しながらも勝つために挑む。
怖気づくのは最初の接触時で十分だ。デュオ達の未来の為に死んでも勝たなければならないのだから。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「っらぁ!」
「ふっ、甘いっ!」
ウィルの一撃をブルブレイヴが両手の剣を交差させ防ぐ。
そしてそのまま押し返しウィルの態勢を崩し、交差させた剣を挟みのように閉じてウィルの首を狙う。
「させませんわ!」
ローズマリーがブルブレイヴの腕を狙い大盾で身を隠しながら剣を突き出す。
大盾に隠れていた為、ローズマリーの剣は軌道が読めずにブルブレイヴの腕を抉る。
が、鋼の肉体を持つブルブレイヴにはローズマリーの剣では傷一つ付けることが出来なかった。
だが傷は付かずともブルブレイヴの攻撃の妨害は可能だ。
ローズマリーの放った突きはウィルの首を刈ろうとしていたブルブレイヴの左右の剣を弾き、ウィルは咄嗟に身を掲げその攻撃を躱す。
そしてブルブレイヴの追撃を許さず間髪入れずにデュオの魔法が放たれる。
「ゲヘナストーン!」
土属性魔法による巨大な六角柱がウィルの頭上を掠めブルブレイヴに炸裂した。
その質量の攻撃にブルブレイヴは後ろに大きく後退する事になったが、やはりその肉体にはダメージが与えられたようには見えなかった。
「うぉおいっ! 今のはちょっとビビったぞ! 出来ればもう少し穏便な援護を頼むぜ、デュオ!」
「何言っているのよ。半端な援護じゃ直ぐに追撃されるわよ。それともあの崩された体勢のままでウィルは凌げたの?」
「おいおい、そんなの凌げたに決まっているだろ。それとも俺の身を案じての援護か? うれしいねぇ」
「ば、ばかっ、そんなんじゃないわよ!」
「あの、お二人さん? こんな時にまで惚気るのはやめてもらえませんか? 今割と結構ピンチなような気がするのですが・・・」
余裕があるのか、それとも強がりなのか。ローズマリーは2人の軽快なトークに若干呆れながらもそれが程よい緊張感を保っている事に感心する。
その一方で自分は何故か一緒にブルブレイヴと戦っていることに驚愕していた。
当初の予定では、宣言通りに自分は無関係でつい手を出してしまった事を主張しようとしていたが、いざ戦闘が始まると何故かデュオ達と一緒に連携をしてまで盾役の役割を熟しているのだ。
デュオとウィルの2人の雰囲気がそうさせたのか、ローズマリーはこの2人と一緒に戦っている事に何故か温かい気持ちに包まれていた。
今ではブルブレイヴと敵対してまでデュオ達と一緒に居てもいいと思うほどに。
とは言え、ブルブレイヴとの戦闘は熾烈を極めた。
デュオ達がブルブレイヴの攻撃を凌ぐ度に少しずつだがブルブレイヴの言うステージが上がっていったのだ。
最初はThe Chariotの無限武器生成召喚。
次はThe Starの七星の連なる三番星の星座と狙い撃つ四番星の流星の複合技。
無限武器生成召喚で生み出した弓を流星で命中率を上げ、星座の射手座の能力で放つ攻撃にデュオ達は防御に集中せざるをえなかった。
3つ目に上がったステージでは、七星の撒き裂く六番星の星屑の指弾がデュオ達を襲う。
その指弾は空気を弾き飛ばすことで弾と化し、任意に炸裂させることで衝撃波を放つことも可能だった。
そして弾くのは何も空気だけでとは限らない。そこら辺に落ちている石を細かく砕き散弾のように弾く事もしていた。
空気指弾に紛れて放つ石砕指弾は防ぎ辛くデュオ達にかなりのダメージを与える結果となっていた。
無論、衛星も数を増やして3体も相手をしているのだ。熾烈を極めない方がおかしい。
「蟹座のシザー攻撃も凌いだか。いいねぇ。援護の魔法のチョイスもいいねぇ。質量のある攻撃は肉体の強度の有無は関係ないからな。
よし、もう1つステージを上げるか。出来れば死なないでもっと俺を楽しませてくれよな!」
これ以上まだ強さが上がるのか。
ここまでブルブレイヴの攻撃を凌いできたデュオ達だったが、再び体勢を整える為撤退を考慮した方がいいのではと思い始めていた。
現状ブルブレイヴにダメージを与えることが出来るのはウィルが持つ勇者の剣――トツカノ剣のみなのだ。
ここは一度引いて他のアダマンタイト像の武器を取って来るべきか。
だがそんなデュオ達の思考を邪魔するかのようにステージの上がったブルブレイヴが襲い掛かる。
「荒れ狂う五番星・夜星!」
ブルブレイヴがまるで獣のように四肢を駆りデュオへと迫る。
思いもよらぬ行動にウィルとローズマリーは一瞬戸惑い、その隙に衛星の相手をさせられみすみすブルブレイヴをデュオの元へと通してしまった。
「ガァァァァァァァァァァッ!!」
四肢を使って跳ねたブルブレイヴが鉤爪状にした右手をデュオに向かって振り降ろす。
デュオは静寂な炎を宿す火竜王を盾にして防ぐもブルブレイヴの攻撃は思いのほか重く、静寂な炎を宿す火竜王が半ばからへし折られ吹き飛ばされる。
デュオは吹き飛ばされながらもこれまでのブルブレイヴの攻撃で出来た傷から流れる血を周囲に撒き散らし血の中にある魔力――魔導血界を発動させ魔法を放つ。
「エクスプロージョン! トルネード! サンダーストーム!」
竜巻が爆炎を巻き込み炎を撒き散らし、雷の嵐が周囲に降り注ぐ。
通常ならこの攻撃だけでも大ダメージを与えられるが、ブルブレイヴには左程通じてないだろう。精々勢いを殺し押し止めるのが精一杯と思われる。
その為直ぐにウィル達と合流すべく起き上がり向かおうとしたが、デュオは自分の胸から腕が生えているのを見た。
「・・・・・・え?」
その腕はブルブレイヴのものだった。
ブルブレイヴは炎と雷の嵐の中を強引に突き抜けてデュオの背後に迫り手刀で貫いたのだ。
爆炎と雷が収まりその光景を目にしたウィルとローズマリーは信じられない光景に一瞬我を忘れ直ぐに怒りに染まる。
「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!」
「退きなさいっ!!」
火事場の馬鹿力と言うべきか、衛星を一瞬で捻じ伏せて2人はデュオの元へと駆け抜ける。
「まずは1人。後衛から潰すのは基本だよな」
ブルブレイヴは手刀を抜き取り、迫りくるウィル達から距離を取り挑発するように嘲る。
手刀を抜き取られたデュオは力無くその場に崩れ落ちる。
「デュオ!」
「デュオさん!」
直ぐにでもブルブレイヴに襲い掛かりたい衝動に駆られたウィルだったが、まずはデュオの安否の確認を確かめる。
だが心臓を貫かれたデュオはその目を見開いたままピクリとも動かなかった。
何処からどう見ても―――死んでいた。
「てめぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
その事実を目の当たりにしたウィルは目の前が真っ白になりトツカノ剣を握りしめてブルブレイヴに突撃しようとしたが、ローズマリーがそれを止めた。
「待って下さい!」
「何故止める!? あいつをぶっ殺すんだよ! 止めるな!」
掴まれた腕を強引に振りほどこうと力を込めるが、ローズマリーはそれでもウィルの腕を離さない。
「待て下さい。デュオさんは確かに死んでますが、おかしいのです。心臓を貫かれているはずなのに――――血が一滴も流れていないのです」
そう言われてデュオを見れば胸に穴が開いているにも拘らず血の跡が一切ない。
それどころか、先ほどまで体のあちこちの傷から流れ出ていた血すらも止まっていたのだ。
「それに、死んだはずなのに体が冷たくならないのです。逆に体温が上がっています」
「・・・死んだんじゃ、無いのか?」
「分かりません。ですが、デュオさんの体に何かが起こっているのは間違いありません」
もしかしたら、と言う期待もある。ならばウィル達のするべきことはただ一つ。デュオの体を守りつつこの場を離脱する事だ。
「最後のお別れは済んだか? 仲間1人が殺されたんだ。仇を取らないとなぁ。さぁ、その恨みをぶつけてきな!」
ブルブレイヴはまだデュオの体に起きた変化には気が付いていないが、このままだといずればれてしまう。
どうにかして離脱したいところだが―――
「どうした? お前らの仲間への思いはその程度だったのか? って、うおっ!?」
ブルブレイヴの前に一本の刀が突き刺さる。
そして続けざまに無属性魔法のエネルギージャベリンが次々と降り注いだ。
新たに衛星を生み出しエネルギージャベリンを防ぎながら後退するブルブレイヴ。
『ようやく見つけた。マスターの仇!』
先程突き刺さった刀の前に1人の巫女が降り立つ。
巫女は突き刺さった刀を抜き取りブルブレイヴに差し向け仇を宣言する。
その巫女の正体は神秘界の騎士Deathに創られた最強のアンデット。英雄の亡骸を元にして創られるスケルトンロード。
そして目の前に現れたスケルトンロードはただのスケルトンロードに非ず。
七王神最強の巫女神フェンリルを模して創られたDeathの最高傑作のスケルトンロードだった。
次回更新は3/12になります。




