69.その抑止力は天地創造の証
デュオ、大神鈴鹿と再会する。
デュオ、謎のジジイの秘密を探ろうとする。
デュオ、神軍の残党に襲われる。
デュオ、謎のジジイと共にWheel Of Fortuneと戦う。
デュオ、Hermit奇襲される。
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「さて、最後の魔法陣の設置にハングドマン断裂に向かわなければならないのじゃが・・・儂はフェンリル達の元へも向かわなければならぬと来ておる。
そこで2手に分れようと思うのじゃが・・・」
異世界からの強制召喚を防ぐための魔法陣をホイルフォー山に設置する事が出来た謎のジジイは、最後の魔法陣の設置の為に向かおうとするのだが、ここで問題が発生する。
デュオ達は本来の目的である謎のジジイをフェンリル達七王神の元へ連れて行かなければならないのだ。
そこで謎のジジイが取ろうとした方法は2手に分れると言う事だった。
「2手って言うと、ローズマリー達が居る七王神に向かう側と、ハングドマン断裂に魔法陣の設置に向かう側の2手って事か?」
2手と言う言葉に敏感に反応したのはウィルだ。
彼の頭の中では当然デュオ側について行く事が決定しているからだ。
やっとの事で再会したデュオと別行動を取るなんてあり得ない。
「そうじゃ。七王神側には当然儂が行く事になる。それで魔法陣側にはデュオ達に向かってもらう。
デュオ、さっきの手伝いで魔法陣の設置の仕方は頭に入っているのじゃろ?」
「うん、あれくらいなら直ぐに覚えられたわよ」
「よし、ならば問題は無いの。
デュオ達は全員でハングドマン断裂に向かい魔法陣の設置を頼む。設置ポイントはさっき渡した地図に載っておるから問題は無いはずじゃ」
「って、待ってお爺ちゃん! まさかお爺ちゃん1人で向かうつもりでいるの!?」
「そうじゃ。儂1人の方が行動しやすいからの」
確かにS級冒険者である謎のジジイならば問題は無いのかもしれないが、デュオ達は流石にそれで良しとは出来なかった。
何故なら1人で行動するには謎のジジイはちょっと抜けている所が判明したばかりだし、先ほどの奇襲をしたレンヒットこと神秘界の騎士The Hermitの襲撃が再び起こりえるからだ。
「いや、ダメでしょう、お爺ちゃん。お爺ちゃんは強いけど、何でも1人で全部できる訳じゃないんだから。
それに、The Hermitはお爺ちゃんを狙っているじゃないの。ここは何人か一緒に行動した方がいいわよ」
デュオがその事を指摘すれば流石に謎のジジイも自分の迂闊さ(転写紙を知らなかった事)を露呈したばかりなので強くは出れなかった。
尤もThe Hermitの襲撃に関してはそれ程気にしてはいなかったが。
「むぅ・・・ならば2人ほどついて来てもらうかの。
そうじゃの、リュナウディアとアイリスについて来てもらうか」
謎のジジイは一同を見渡し、2人を指名した。
「私で良ければお供させて頂く」
「え? あたしで大丈夫かな?」
リュナウディアはS級冒険者である謎のジジイに選ばれたことに嬉しく思い、逆にアイリスは分不相応ではないかと恐縮していた。
「後は御爺様が何故日曜創造神及びThe Hermitに狙われているのかですわね」
「そう言えばお爺ちゃんは何か心当たりがありそうだったわよね」
ルーナの言葉に謎のジジイは顔をしかめていた。その様子を見てデュオは謎のジジイは何かを知っているのだと判断する。
「御爺様がいつ言うのかと思い黙っていましたが、敢えて口にせずに有耶無耶にしようとしましたわね?」
「はぁ・・・別に黙っておったわけではない。言わなくてもいい事を言わなかっただけじゃ」
「御爺様? この期に及んでまだ秘密をお抱えなさるおつもりで?」
「う・・・分かった、分かった。儂の負けじゃ」
どうやら同じ100年の時を生きたルーナには謎のジジイも敵わないらしい。
観念して謎のジジイは自分が狙われているだろう理由を話す。
「恐らくじゃが、奴らの狙いはこれじゃろう」
そう言って謎のジジイは懐から水晶のようなペンダントを取り出した。
見覚えがあるのかルーナはそのペンダントを見て驚きの声を上げた。
「それは・・・!」
「ルーナは見覚えがあるか。とは言ってもルーナが見たのは数あるうちの1つじゃろう。フェンリルとかに見せてもらったのじゃないのか?」
「ええ、そうですわね。フェンリルさんに1度見せてもらったことがあります。
それは・・・100年前魔王の配下とも言われていた26の王、それを倒したと言われる『王の証』」
「そうじゃ。そしてこれはその『王の証』の中で尤も危険で尤も強大な力を秘めた『Wの王の証』じゃ」
「なんだ? そんなにやば気なものなのか?」
あまりにも仰々しく掲げる『Wの王の証』にウィルが少しビビりながらも聞いてくる。
「そうじゃな。これには天地創造の力が秘められておる。つまり・・・この『王の証』を使えば神秘界はおろか天と地を支える世界すらも創り変える事が出来るのじゃよ」
「マジか! そりゃすげえ。じゃあそれを使えば思い通りの世界を創れるのか!
いや、それどころか七曜都市を創り変えて八天創造神を追い出すことが出来るんじゃねぇか?」
『Wの王の証』の凄さを聞いてウィルはこれは八天創造神に対する切り札になるのではと息巻く。
ウィルだけではなく、他の者達も同じように興奮していた。
ただその中でデュオとルーナとアイリスだけは冷静だった。
「ねぇ、それって中に居る人たちはどうなるの?」
「そうですわね。おそらく、天地創造に巻き込まれる人たち・・・いえ、言い直しましょう。天地人もアルカディア人も異世界人の人たちも創り変えられる、と言う事なのでしょう」
「察しがいいの。そうじゃ、『Wの王の証』の天地創造は全てを創り変える。中に居る者達は無に帰る仕組みじゃ」
「はぁっ!? それじゃ意味ないじゃんか!」
思ったよりも融通が利かない『Wの王の証』の使えなさにウィルは落胆を隠せなかった。
ここに来て八天創造神に対する切り札が手に入ったと思っただけにその落胆は大きかった。
「それじゃあ、何故The Hermitは、日曜創造神はお爺ちゃんを狙っている訳?
まさかお爺ちゃんがヤケクソになって全部を台無しにしないようにとか言うんじゃないのでしょうね?」
「いいところを付いてくるのぅ、デュオ。正にその通りじゃな。
これは所謂自爆用のアイテムでの、奴は長い時を掛けて築いてきた今の状況を壊されたら堪らないからと探しておったようじゃ。
ま、抑止力になるかもと裏切りの神が密かに手を回し儂が回収したんじゃがの」
「・・・幾らなんでもお爺ちゃんがそれを使うとは思えないんだけど。使えないアイテムにビビっている日曜創造神って案外胆が小さい?」
「普通に考えれば使うはずのないものじゃが、最早あ奴らは普通の思考じゃないからの」
「んー、まだ何か裏がありそうなんだけど・・・」
確かに最早思考が常人とはかけ離れているとは言え、余ほど追いつめられない限り『Wの王の証』を使おうとは思わないと考えるのだが。
それでも尚、日曜創造神は『Wの王の証』を追い、謎のジジイはそれを手放さない理由があるのではとデュオは勘繰る。
まぁ、これ以上謎のジジイを問い詰めても答えは返ってこないだろうと判断し、取り敢えず今はやるべきことを優先させることにした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「それじゃああたし達はこのポイントで魔法陣の設置が終わったらお爺ちゃん達と合流するわね。多分水曜都市になると思うけど、フェルさん達が攻略を終わってたら木曜都市の『AliveOut』の本拠地でね」
「うむ、頼むぞ。そうじゃな、フェンリル達の事じゃから儂らが着く頃には終わっている可能性もあるじゃろうて。おそらく木曜都市で合流するじゃろう」
『Wの王の証』の事は取り敢えず置いといて、デュオ達はそれぞれの目的地に向かうための準備を整え2手に分れる。
デュオ、ウィル、クロ、アルベルト、ルーナ、アラキネ、ブルック(青水晶のクォーツタスク)の6人と1匹はハングドマン断裂の設置ポイントへ。
謎のジジイ、リュナウディア、アイリスの3人はフェンリル達が攻略している水曜都市へ。
そしてホイルフォー山の主であるWheel Of Fortuneはこのままここに残り魔法陣の管理をすることとなった。
「気を付けるのじゃぞ。ハングドマン断裂の神秘界の騎士は倒されているとは言え、何が起こるか分からんのじゃからな」
「へっ、大丈夫だよ。俺が付いているんだ。何者が来ようが一刀両断してやるぜ」
ウィルがここぞとばかりにアピールするも、デュオは何処か呆れ顔で流していた。
まぁ顔では呆れていたものの、満更では無い態度でいたのは一目瞭然だったが。
「・・・お主が一番心配なのじゃがな。まぁ良い。それじゃあ儂等は先に水曜都市に向かっているぞ」
そう言って謎のジジイはウィルを心配しつつも黄金騎竜のガジェットに跨り、リュナウディアとアイリスを乗せて水曜都市へと向かった。
「それじゃあ、あたし達もハングドマン断裂に向かうわよ」
「おう!」
ウィル達はThe Towerの夢現の塔に飛ばされてからこれまで徒歩だったため移動手段が限られていた。
だが幸いにもアイリス達が乗ってきた走竜が余っていたので移動手段には問題は無かった。
とは言っても余った走竜を借りるのはウィルだけだったが。
アルベルトとルーナはブルックに乗り、アラキネは下半身が蜘蛛の為走竜には乗ることが出来ない。
尤も乗らなくても走竜並みの速度で走ることが可能なのだ。
デュオ達は目的地のポイントに向かい、走竜を走らせる。
目的地ポイントがハングドマン断裂と言ってもウィル達が落ちていた断裂の底じゃない。
実際は断裂の崖の近くのポイントだ。
よってデュオ達はハングドマン断裂の横を駆け抜けていく。
目的地ポイントまでは走竜で約1日半の距離だ。
日が落ちてきた事でデュオ達は途中で野営を挟み、翌日に備える。
「そう言えばソロとフレンダは見つかったのか?」
「ううん、まだソロお兄ちゃん達は見つかってないわ。まぁウィルでもこうして生きているんだからソロお兄ちゃんも大丈夫だとは思うけど」
「・・・ああ、確かにソロなら大丈夫だろうけど」
結構辛辣な物言いにウィルは少し悲しくなりながらも、もう少し惚気てくれてもと落ち込む。
尤もウィルを信頼しているからこその物言いなのだが、自分よりソロを信頼していると思い込んでいるウィルは気が付かない。
他の者は休んでおり、デュオとウィルは見張り番で火を囲って互いにこれまでの状況を確認していた。
その中で夢現の塔に捕らわれてしまったメンバーの中で未だに見つかっていないのがウィルとフレンダ、そしてスノウだった。
「まぁ、スノウもああ見えて強いから心配はないけど、鈴鹿には申し訳がなかったわね。
ああ、でもスノウは元々フェルさんの騎竜だったから申し訳ないのはフェルさんの方ね」
「にしても・・・何気に凄いメンツと知り合いになっているな」
ウィルは離れ離れになってからのデュオの状況を聞いて、ただ驚くばかりだった。
ちょっと離れている間にローズマリーの他の七王神2人と知り合いになっていたからだ。
フェルの名は度々聞いていたが、その正体が巫女神フェンリルともなれば驚くなと言う方が無理がある。しかもどういう訳か鈴鹿の父親だと言う訳のわからない話でもある。
そしてもう1人の七王神は大賢神ベルザ。そしてこちらも鈴鹿の母親だと言う信じられない話だ。
こうして聞けば鈴鹿は七王神2人の血を引くサラブレッドとも言える。
なればこそ、天と地を支える世界に来て2か月にも満たない期間でエンジェルクエストを全て攻略できたのも頷けた。
「はぁ~~~、羨ましすぎるよなぁ。正に英雄譚そのものじゃん」
「こぉら、何卑屈になっているのよ。鈴鹿だってああ見えて苦労はしているのよ」
特に幼馴染のディープブルーに襲い掛かった惨状を考えれば簡単に羨ましいとは言えないのだ。
ウィルはデュオが同じような目に遭えば鈴鹿同様正気でいられる気がしなかった。
そう思えば鈴鹿の強さはただ七王神の血を引いているだけとは言えない。
「それに、ウィルだって負けてないわよ? 頑張ってA級にまで登り詰めたし、何よりいつもあたしの傍に居てくれるじゃない。
今回だって道は間違えたけど、あたしのピンチに駆けつけてくれたじゃない」
「お、おう・・・」
大抵はお座なり扱いだが、たまにこうして不意を衝いて甘い言葉を吐くデュオにウィルは動揺を隠せないでいた。
特に最近はデュオが気を許すことが多くなっていたのをウィルは嬉しく思っていた。
「デュオ・・・」
「ウィル・・・」
ガサリ
どことなくいい雰囲気になっていたデュオとウィルは慌てて離れると同時に足音がする方向を振り向く。
「あ・・・お邪魔、だった?」
少しバツが悪そうに声を掛けたのはクロだった。
「う、ううん、別に邪魔じゃ、ないわよ? ね、ウィル」
「あ、ああ、邪魔じゃ、無いぞ。うん」
デュオはどことなくホッとしていたのに対し、ウィルは明らかにがっかりしていたのが見て取れた。
「交代にはまだ早いけど、どうしたの?」
「・・・眠れなくて」
「・・・そっか」
クロが眠れない理由は明白だ。
神秘界に来てからとは言え、クロはレンヒットとパートナーだったのだ。
それが実は日曜創造神の神秘界の騎士だったと言う事実は思いのほかショックが大きかったらしい。
「そのレンヒットとは付き合いが長かったのか?」
「ううん、どちらかと言うと短い、かな?
神秘界に来てからだから3ヵ月くらいだと思う」
「そっか。でも付き合いが短くてもショックを受けるだけ仲が良かったんだな」
「仲が良かったのとは違うの」
ウィルの言葉にクロは首を振る。
確かにショックを受けているのだが、どちらかと言えば裏切られたと言うよりはレンヒットの正体に気が付けなかった事に対してだった。
「私は元々暗くて人付き合いが苦手だった。そんな私に遠慮なしに近づいてきたのがレンだった。
私は仲良くしてくれるのが嬉しくてレンの言う事ばかり聞いていた。レンにしてみれば影武者に仕立てるだけの付き合いだったけど、私にとっては仲良くしてくれる大切なパートナーだった。
今考えれば私はレンに依存しすぎてたと思う」
もう少し自分で物事を考え行動していればレンヒットの正体――The Hermitに気付けたかもしれないと。
自分の流されるままの行動で皆に迷惑をかけた事がクロの胸に大きくのしかかっていたのだ。
「でもあれは相手が上手かったからだろ? クロの所為じゃないさ」
「そうよ。相手は隠者、隠れるのが上手いのよ。多分彼女の正体を見破ることが出来るのは盗賊ギルドのギルドマスターでも難しいんじゃないのかしら」
「それでも。私は彼女の傍にずっと居た」
「頑固ねぇ。そこまで言うんだったらこれから挽回しないとね」
デュオのその言葉に俯いて悔しさを滲ませていたクロが思わず顔を上げる。
「・・・挽回?」
「そ、挽回。クロは3ヵ月とは言えずっとレンヒット――The Hermitの側に居たんでしょ?
今度はそれを利用するのよ。彼女が正体を隠そうとも僅かな隙を見逃さず、仕草や癖を見抜くのよ。
後は考え方やこれからやりそうな事を予想して待ち伏せをするとか。
そう考えるとこれまで一緒に居たことも無駄にならないと思うわよ?」
デュオの言葉にクロは目から鱗だった。
これまでは騙されていた事や正体を見抜けなかった事に対し悔しい思いで一杯だったが、それを逆に利用すると言う考えはクロにとっては思いもつかない事だったのだ。
「・・・そっか、そうよね。私だけが今一番レンヒットに詳しいのよね。
デュオ、ありがとう。私頑張ってみる」
交代の時間までもう一眠りすると言って立ち上がったクロの表情はスッキリとしていた。
クロが戻っていった後を見送ったウィルはさっきの続きと言わんばかりに期待を寄せるが、当然そんな甘い空気は起こらずに何事も無く交代の時間となり涙を呑んでいた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
次の日、予定通り目的地ポイントに到着したデュオ達は早速魔法陣の設置に取りかかった。
「あたしとルーナで魔法陣を担当するから、ウィル達は魔物の襲撃に備えて頂戴」
「神秘界の騎士の襲撃は?」
早速やる気を出しているのか、クロがThe Hermitの襲撃の対処について訊ねてくる。
「うーん、The Hermitはお爺ちゃん狙いだし、他の神秘界の騎士は数も限られているからそれ程心配することは無いんじゃないかな?」
「えーと、日曜創造神にJudgement、月曜創造神にThe Devil、水曜創造神にDeath。こいつらが八天創造神に直属だっけ?
後は所属不明なのが、The Sun、The Moon、The Star 、The Chariotと。
・・・意外と数が多いんじゃないのか?」
デュオは神秘界の騎士は心配ないと言うが、ウィルが残っている神秘界の騎士の数を数えると思いのほか多かった。
「あ、The SunとThe MoonとThe Chariotは多分味方だと思うから心配はないわよ」
「ん? それはもしかして爺さん情報か?」
「そうよ。お爺ちゃんも確実な事は言えないって言ってたから多分なんだけど、間違いないと思うわよ」
「んー、デュオがそう言うなら俺からは何も言わねぇよ」
確実な事は言えないと言うところで不安を感じるが、デュオがそう言う以上、ウィルはその言葉に従って神秘界の騎士の襲撃の可能性を低くする。
「デュオさん、その残りの神秘界の騎士はもしかして・・・」
「あ、やっぱりルーナは気が付いたのかな?」
「ええ・・・気のせいだとは思っていたのですが、神秘界に来てから巫女としての力が増しているような気がしたので、可能性を考えるとなるとそう思ったのですが」
「あたしも会ったことは無いから一概にもそうだと言えないけど、ルーナがそう感じたのなら多分そうだと思うわよ」
「そうですか。だとしたら会うのが楽しみですわ」
どうやらルーナは残りの神秘界の騎士に心当たりがありそうだった。
その様子からウィルもなんとなしに残りの神秘界の騎士の正体に気が付いた。
気が付いていない、又は事情をよく知らないアルベルトとアラキネはデュオとルーナの会話に首を傾げるだけだった。
「さ、早速準備に取り掛かるわよ。各員配置について作業を始めて頂戴」
デュオの言葉にウィル達は各役割に従って行動を開始する。
魔法陣担当のデュオとルーナはまずは地面を均し固めるところから始める。
ウィルたち護衛担当は魔法陣を囲むように東西南北に位置に付き周囲を警戒する。
そして魔法陣の作製が順調に進んでいたが、作業開始から2時間ほど経過した時に事件は起こった。
「よし、後は中央の円と文字の入力で完成ね」
「思ったよりも早く済みましたわね」
「まぁ1度描いているからね。慣れた分早くなったのよ」
口を動かしながらもデュオとルーナは手を動かす。
魔法陣を描く作業は集中力を要する為、当然周囲には気を配る余裕はない。
とは言え、デュオは油断をしない為にもある程度は襲撃に備え、警戒を怠らなかったつもりだった。
ギィンッッ!!
気が付けば目の前に剣先が突きつけられていた。
それを止めたのはウィルの剣だった。
「まさか、ここでてめぇが襲いかかてくるとはな」
ウィルが止めた剣は蛇のように伸びており、その操りし元となる柄を握っていたのは――
「どういうつもりだ? クロ!」
まさかの襲撃者の正体にデュオは驚きを隠せないでいた。
次回更新は2/24になります。




