56.その世界は偽りの神の常世
「なるほど・・・ミス・フレンダ達はこの神秘界で唯一のクラン『AliveOut』のメンバーだと。
そしてアルカディアから脱出するためのゲート・・・緊急避難口を開ける為の鍵を持っている神秘界の騎士に戦いを挑んでいると言う事ですね」
「そう。もう既に何人かの神秘界の騎士を討っているわ。
私たちの任務はエンパレス山に居を置くThe Empressを倒しカードキーを奪取する事よ」
フレンダと呼ばれた4人の女性たちのリーダーは目的はエレナーデの持つカードキーだと言う。
「でも、別に倒さなくてもいいんだよね? 神秘界の騎士がすんなりカードキーを渡せば」
デュオ達にしてみればここでエレナーデを倒されると困るのだ。
さり気なく戦闘無しで渡すのはダメかと聞いてみると・・・
「だけどそいつは自分を倒さなきゃ渡さないって言ってるのよ。じゃああたし達は戦うしかないじゃない」
「妾は妾が認めた者にしかこのキーはやらん。だからさっさと諦めて帰ればいいものを・・・
何度も挑みかかって返り討ちにあっても一向に諦めんから尚更たちが悪い」
戦士の女性――アイリスがそんなことが出来れば最初からやっているばかりに理由を言い、エレナーデはそれを煩わしいと一蹴する。
「あのね、あたし達は天と地を支える世界や異世界へ帰りたいの! それが無いと帰れないってさっきから言っているでしょ!!」
「そんなのは妾には知ったことではない! 貴様らは望んで神秘界に来たのではないのか!? それを思ってたのとは違うからとぐちぐちと・・・!」
互いに言い合うアイリスとエレナーデ。
次第にヒートアップしていき今にも互いに襲い掛かりそうなほど罵り合っていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
互いに話し合うためにログハウスに集まったデュオ達、エレナーデ、女性4人組。
取り敢えずこの場を仕切ることにしたソロが女性4人組に話を聞く事にした。
この時互いの簡単な自己紹介をする。
リーダーの全身鎧の盾役はフレンダと言い、戦士の革鎧の女性はアイリス。
竜人の武闘士はリュナウディア。猫人の魔術師はミュリアリア。
デュオ達が名乗った時は流石に驚かれた。
「まさか『月下』のサブマスター・『鮮血の魔女』デュオや『月下』の懐刀『蒼剣』ウィルまでもがアルカディアに来るとはね~」
そう感嘆の声を漏らすのはアイリスだ。
アイリスにしてみれば天と地を支える世界で成功を収めているデュオ達が力や安住の地を求めてアルカディアに来るとは思わなかったからだ。
いや、寧ろ成功を収めたからこそ永遠の命を求めてアルカディアに来たのか?とアイリスはそう考えてしまうほど当初のアルカディアは魅力的だったのだ。
尤もアルカディアの真実を知った今となっては安易にアルカディアを目指したことを後悔していたが。
「デュオ達『月下』がS級冒険者の謎のジジイと繋がっているのは兎も角、謎のジジイとThe Empressが繋がっているとは驚いたわ。と言うか、謎のジジイってアルカディアに来ていたのね」
正確には謎のジジイは『月下』ではなく、デュオとの個人的な繋がりなのだが敢えて訂正はしない。
「まぁ、お爺ちゃんは色々謎が多い人だから。何てったって『謎』のジジイだからね」
実際には一緒にアルカディアに来たのだが、これも言わないでいた。
まだアルカディアの状況が分からないのだ。出来る限り不用意な発言は控えることにした為当たり障りのない答えをしておく。
「それと、こっちは久しぶりね、ルーナ、アルベルト」
フレンダ達はルーナとアルベルトを見て久しぶりと挨拶を交わしていた。
聞けば『牙狼の使徒・Fang』のエンジェルクエストでは月の欠片を手に入れる為、ルナムーン神殿を訪れなければならないと言う。
その時にルーナとアルベルトと知り合ったのだと。
アルカディアに居ると言う事は全エンジェルクエストの攻略者であるため必然的に2人と知り合う事になるのだ。
「だれだ、おめぇ? オラの事知っているだか?」
だがアルベルトは誰だとばかりに声を掛けてきたアイリスを訝しげに見ていた。
「ちょっ、あたしよあたし! 虹の橋を渡ってお菓子の国に行けるって言ってた」
「・・・あ、ああああ! あの時の嘘つきだべか! あの時は良くも騙してくれただな!」
「あはは、あの時はごめんね。まさか素直に信じるとは思わなかったから」
「お蔭でオラ他の冒険者たちに大笑いされただ! おめぇのような嘘つきはオラは嫌いだべ!」
「もう、だからゴメンって謝っているじゃない」
そんなアルベルトとアイリスのやり取りを余所に、フレンダ達はルーナと再会を喜んでいた。
「まさかルーナさんもこちらへいらっしゃるとは」
フレンダはルーナを見ては驚いてもいた。
ルーナはエンジェルクエストに関わる人物でもあり、三柱神の巫女の1人でもあるのだ。おいそれとアルカディアに来れるはずは無いのだ。
しかもアルカディアに来るにはエンジェルクエストを攻略しなければならず、ルーナにはそれが可能だとは思えなかった。
ならばどうやってこの地に来たのか疑問は尽きなかったが、フレンダは敢えてそれを問いただそうとはしなかった。
「ええ、ようやくですがあの地から離れることが出来ましたので。
だからと言ってルナムーン神殿の巫女でいることを嫌っていたわけではありませんよ?」
「それはルーナを見れば知っている。だが自由に動けるようになって良かったな」
「うんうん、あの時のルーナは見ていて可哀相だったニー」
リュナウディアもミュリアリアも余計な事は聞かない。敢えて一番聞きそうなアイリスにもフレンダはこっそりと釘を刺しておく。
一通りの自己紹介を終えて、ソロに促されフレンダ達は自分たちの置かれた状況を話していく。
彼女らは天と地を支える世界からエンジェルクエストで来た冒険者たちで構成されたこの世界唯一のクランだと言う事を。
クラン名は『AliveOut』。
目的は、アルカディアから天と地を支える世界へ戻る手段を探るために組織されたクランだ。
アルカディアは神秘界と呼ばれていて、八天創造神が支配している傍若無人な世界らしい。
八天創造神の言う事は全て優先され、人の命を生かすのも殺すのも彼らの気分次第と言う事だ。
神秘界に来た天と地を支える世界の冒険者たちは、無理やりそれぞれの八天創造神に連れられ人の命を蔑ろにする人体実験やら理不尽な暴力などに晒されており、こうしている間にも大勢の冒険者が犠牲になっているのだとか。
そんな状況を打破するために逃げ延びた冒険者たちでクランを結成し、情報を収集して天と地を支える世界へ帰る手段を探し出した。
その結果判明したのが、神秘界の中心部にある門――緊急脱出口を通れば天と地を支える世界に戻れると言う事だった。
そしてその門の鍵を持っているのが、八天創造神と神秘界を守護する神秘界の騎士だった。
中には神秘界の騎士の使命を放棄して自由気ままに動いている神秘界の騎士も居るとの事。
エレナーデもその内の1人らしい。
自由気ままに活動しているとは言え、神秘界の騎士は神秘界の騎士だ。
当然カードキーを持っており、天と地を支える世界へ帰る為には倒すか譲り受けるしかないのだ。
「天地人はまだいいわよ。けどね、異世界人はホントマジヤバいの。あたし達の本当の体は異世界にあるんだから。
もう何か月も放置してどうなっているかすらわからないのよ。もしかしたら・・・」
そう言いながらアイリスが身を震わせる。
今ここにある身体は女神アリスが天と地を支える世界で活動するために与えた身体だ。
その為、天と地を支える世界で活動している間は、異世界にある元の体は活動を休止していることになる。
それが何か月も続くとなると、考えられるのは当然『死』だ。
「ふん、自業自得だ。甘い諫言に誘われて来たくせに想像していたのと違うと分かった途端に騒ぎ立てる。
争いの無い楽園? 神の力を授かる? 永遠の命? そんな都合のいい話があってたまるか。少し考えれば分かる事だろ。
お前らの都合など妾には関係のない事だ。それこそ妾の都合を貴様らは考慮してくれるのか? くれんだろ? なら妾は貴様らの言う事を聞く必要はない」
アイリスの必死の訴えもバッサリ切り捨てるエレナーデにアイリスは今にも掴みかからんばかりに顔を真っ赤にする。
そんなアイリスをミュリアリアは必死に宥めていた。
「(ねぇ、麓のお爺ちゃんの拠点にある裏口魔法陣を使えばわざわざ緊急避難口を通らなくても戻れるんじゃない?)」
デュオは自分たちがここに来た経緯を思いだし、アイリスたちに聞こえないようにソロに訊ねる。
「(まぁ戻れるだろうな。八天創造神すら知らない本当の裏口だからな)」
謎のジジイはこの裏口魔法陣を通って何度も行き来しているから確かに戻ることは可能だ。
だがこの裏口魔法陣を使うに当たって少しばかり問題があった。
「(ただ、あの裏口魔法陣はクソジジイが居ないと使えないんだよ。
それに・・・いつ消えるか分からない天と地を支える世界に戻る意味があまりないんだよな)」
「(あ~、お爺ちゃんが居ないと駄目か~~
それに天と地を支える世界の存在が確立するまではかえってこっちに居た方が安全なのかな?
けど、異世界人の人たちは異世界に帰してあげたいね)」
「(裏口魔法陣の存在が分かれば殺到しパニックを起こしそうだがな。
それに俺としてはこの神秘界の攻略に戦力が激減するのは防ぎたい)」
「(ソロお兄ちゃん、もしかして『AliveOut』の人たちからも協力してもらうつもり?)」
「(協力はしてもらう必要はないさ。結果的に俺達の都合のいいように動けばいいんだよ、動けば。それも彼らが自発的にな)」
そう言いながらソロはニヤリと笑う。
「(ソロお兄ちゃん黒い、黒いよ!)」
女性擁護主義者だったり腹黒だったりとソロの意外な一面を目の当たりにしてデュオはこんな兄は自分の知っている兄じゃないと心の中で嘆いていた。
もしかしたら、師である謎のジジイの影響もあるのでは・・・? とトンズラしてしまった謎のジジイを責めたりもしていた。
「(じゃあ、心苦しいけど裏口魔法陣の事は言わない方がいいね)」
「(ああ、知ったところでクソジジイが居ないと使えないしな。ぬか喜びになるだけだから言う必要はあるまい)」
ソロとデュオは裏口魔法陣の事を隠す事にした。
一応ウィル達にも神秘界に来る前に謎のジジイはこの裏口魔法陣の存在は口外しないようにと釘を刺しているので漏れることは無い。
そんな取り決めをしている間、アイリスとエレナーデはますますヒートアップしていた。
このままだと話が進まないとリュナウディアが強引にアイリスを抑えつける。
「アイリス、落ち着け。折角神秘界の騎士経由の情報を得る機会が出来たんだ。ここで暴れて不意にすることもあるまい。The Empressに挑むのもそれからでも遅くは無いだろう」
「話を聞く必要なんてないわよ! 聞いていたでしょ! こいつカードキーが欲しければ力づくで奪えって言ってんのよ。そんな奴があたしらの欲しい情報を寄越すはずないじゃん!」
「いや、何も私等が聞く必要はないんだよ。デュオ達が話しているのを私達がたまたま傍に居たから聞こえただけだ。だろう?」
そう言いながらリュナウディアはソロを見る。
ソロはエレナーデにとって蔑ろにするような人物じゃないのは接触時に見て取れる。
ならばフレンダ達はそれを利用して情報を手に入れればいいのだ。
デュオ側としてもフレンダ達の情報を手に入れる為招き入れた。要はその見返りを寄越せと言っているのだ。
ソロは苦笑しながらも軽く頷く。
「むぅ・・・分かったわよ」
アイリスはまだ言い足りないのか、不貞腐れながらも渋々了解する。
場が落ち着いた事でようやくソロはエレナーデに神秘界の状況を聞くことにした。
「待たせてしまって申し訳ない、ミス・エレナーデ。
それで、改めて神秘界の状況を教えて欲しいのですが」
「とは言っても、妾から言う事は殆んど無いぞ? 大抵の事はそこの小娘共が言った事と被るからな」
「いえ、それでも確認の意味でもお願いします」
そうソロに促され、エレナーデは神秘界の状況を説明する。
その内容はフレンダ達が語られた内容とほぼ同じだった。
ただ、神秘界の騎士しか分からない情報なども織り交ぜられていたので、フレンダ達の情報の裏付けや新規の情報の確認を行うことになった。
神秘界には現在7つの都市が存在し、それぞれの都市に八天創造神が居を構えていると言う。
日曜都市サンライトハートを中心とし、月曜都市ムーンカグヤ、火曜都市ドンフレイム、水曜都市ハイドロエクスト、木曜都市ローズブロッサム、金曜都市ミスリルウォール、土曜都市ランドバイドと時計回りに位置しており、七曜都市と呼ばれている。
それぞれに日曜創造神、月曜創造神、火曜創造神、水曜創造神、木曜創造神、金曜創造神、土曜創造神が在沖しておりその都市を支配している。
そしてその各都市の中心部には天と地を支える世界への魔法陣――帰還ゲートが存在していた。
「マジでっ!?」
これはアイリス達も知らなかった情報らしく、新たな帰還方法の発見に喜んでいた。
だがそれにエレナーデは釘をさす。そんなに甘い話があるわけがないとばかりに。
「言っておくが、その帰還ゲートは八天創造神じゃなければ動かすことは出来ないぞ。
そして八天創造神が死ねば完全に使用不可能になる」
「それはそうでしょうね。八天創造神は都市を、神秘界を支配していたいんだから簡単に帰還できるようなものを人に使わせるようにするわけはないわ。
その帰還ゲートもあくまで自分が使用する為の物ね」
「そうだ。あいつらは自己中心的な奴らばかりだからな。それはあくまで自分専用のゲートと言う事だ。他人に使わせる気は更々無いだろう」
そう言われてしまえばフレンダ達はその帰還ゲートを諦めざるを得ない。
七曜都市を攻略する難しさはもとより、八天創造神に言う事を聞かせ帰還ゲートを使用する難しさは殆んど不可能に近いのだ。
だからと言って帰還の手段が無いわけではない。
先程フレンダ達からも語られた通り、八天創造神の専用帰還ゲート以外にも天と地を支える世界へ戻るゲート――それが緊急避難口だ。
この緊急避難口は誰でも使えるのだが、あくまで八天創造神が緊急時の為に用意したもので、誰でも使えないように鍵を掛けることにした。
そしてその鍵を複数に分け、八天創造神の護衛として作り上げた神秘界の騎士に守るように渡したのだ。
「あんたは別に八天創造神に従っている訳じゃないからカードキーを渡してもいいじゃないの」
「くどいな。何度も言うが、妾に勝てないようじゃ鍵を渡す資格も無い。そこにはあいつらに従っている云々は関係ないぞ」
「何で鍵を渡すのに資格だのなんだの関係あるのよ・・・」
もう何度目のやり取りか、アイリスの鍵を寄越せにエレナーデが答えるのはただ1つ、鍵が欲しければ戦って勝ち取れ、と。
エレナーデは敢えて言わないが、実はカードキーには譲渡する為の選別機能が付いてたりするのだ。
その選別機能は、所有者の神秘界の騎士に力を示す事だったり、神秘界の騎士も認める能力を所持している事だったりする。
これは八天創造神が、自分に従わない神秘界の騎士が居た場合に備えたセーフティでもあった。
エレナーデは続けて神秘界に住む種族を説明する。
とは言っても神秘界に住む種族はアルカディア人だけだ。
だが、そのアルカディア人は八天創造神によって生み出された事により、殆んどが八天創造神を崇拝し従っていると言う。
だが何事にも例外や不良品があるように、八天創造神に従わないアルカディア人も居り、密かながらに『AliveOut』を支援しているらしい。
その『AliveOut』は天と地を支える世界から来た冒険者で構成されており、神秘界から脱出するための唯一のクランでもある。
そしてこれにも例外が付きもので、『AliveOut』を抜けて八天創造神に付き従う冒険者も居るのだと言う。
そう言った輩を纏め組織されたのが神秘界の騎士とは別の八天創造神の手足となる神軍だ。
「なんで、天と地を支える世界の冒険者たちは八天創造神の味方に付いてんだ? あ、味方に付けばさっき言ってた帰還ゲートで元の世界に帰してやるとかか?」
「そんなことは無い。さっきも言ったがあいつらは自己中心的な性格をしているからな。
まぁ、帰還ゲートを餌にして騙して従わせているのもあるがな。
後は、そいつらが八天創造神に付き従っているのはただ単純に神秘界に骨を埋める事にしたと言うのもある。
その辺はそこの小娘が一番詳しいんじゃないか?」
ウィルの質問にそう答えたエレナーデは、意味ありげにアイリスに視線を向ける。
それは異世界人が、と言う事を指していた。
「・・・っ、そうよ。あいつらは帰ることを諦めたのよ。もうとっくに異世界に残された体は死んでいるだろうって。だったら八天創造神に付いて好き勝手暴れた方が賢い生き方だって。
まぁ、中には最初っから八天創造神に従う馬鹿はいるけどね」
それは時間が経てば経つほど『AliveOut』のメンバーの離反の確立が高くなるのだと言っていた。
勿論離反せずに引き続き『AliveOut』に協力してくれる者もいるのだが、明らかにモチベーションが下がっているので戦力がダウンしているのは間違いない。
「天地人の中にも八天創造神の好き勝手暴力権力を奮えると言う諫言に惑わされ従っている者もいるわ。嘆かわしい事にね」
フレンダは異世界人だけじゃないと深い溜め息を吐きながらそう言う。
どうやらデュオ達の相手は八天創造神や神秘界の騎士だけでなく、裏切りや欲望に負けた冒険者たちで組織された神軍も相手にしなければなさそうだった。
そして厄介な事に(考えようによっては都合がいいが)この神軍はそれぞれの八天創造神ごとに独立しており、互いに協力関係にはなっていないらしい。
そこには八天創造神の互いの思想や利益が絡み合い、現在はそれぞれが独立して行動している為だ。
昔は八天創造神も一定期間集い協力し合う関係だったらしいが、今は協定が破られたのか各々の目的を達し邪魔をされないようにしたためか、極力互いの不干渉を貫いているのだと言う。
「まぁ、妾から説明できるのはこれくらいだな」
「話を纏めよう。
神秘界における敵勢力は八天創造神、神秘界の騎士、神軍の3つ。
そしてデュオの目的は八天創造神の討伐。
ミス・フレンダ達クラン『AliveOut』の目的は天と地を支える世界又は異世界への帰還」
それとは別にソロには神秘界の構造の解析及び神秘界支配権の奪取と言う目的がある。
だがソロは敢えて自分の目的は言わなかった。
フレンダ達は帰還を目的としている所へソロの目的や天と地を支える世界の真実を言ったところで混乱をきたすだけだし、エレナーデに至っては完全に信用したわけではない。
どんなに協力的でもエレナーデは神秘界の騎士なのだ。本人の自覚しないうちに何か仕掛けられている可能性も捨てきれないからだ。
「そう考えると、フレンダ達『AliveOut』と俺達は協力した方が良さそうだな。
デュオの目的は八天創造神、『AliveOut』も最終的には八天創造神に辿り着く可能性は高いからな。
互いに戦力を増強するうえでも協力した方が良いと思うが?」
ウィルはそう言って最終的な判断をデュオに委ねる。
デュオとしても『AliveOut』の協力を得るのは願ったり叶ったりだ。
七曜都市でも拠点や物資の補給と言った後方からのサポートはもとより、多人数による増援は戦力の強化にもなるのだ。特に人手が多く必要なときなど。
「そうね、もしよかったらあたし達を『AliveOut』に入れてもらえないかな?」
「それこそこちらには願ったり叶ったりよ。貴方達ほどの実力者が居れば神秘界の騎士の攻略もかなり前進するわ」
フレンダはデュオのクラン加入を歓迎した。
尤もフレンダには許可をする権限はないが、デュオたちほどの実力を考えれば攻略部隊のリーダーも反対はしないだろうとフレンダは考えていた。
「それではミス・エレナーデも我が師の願いに応え引き続き我々にご協力頂きたい。
具体的には戦力面での協力などですね」
デュオ達のクラン加入に引き続き、エレナーデの参加ともなれば帰還の実現に大いに近づく。これにはフレンダ達は色めきたった。
何より、戦闘を介さずにカードキーの入手することが出来るのだ。
だが、エレナーデの答えは。
「ジジ様の願いだ。協力はしてやろう・・・と言うとでも思ったか? 残念だが却下だ」
次回更新は8/28になります。




