55.その神秘界の騎士は恋する乙女
水晶の牙の名の示す通り、クォーツタスクの角は獲物を駆るための牙だ。
デュオ達の姿を捉えた5匹のクォーツタスクは一斉に襲い掛かる。
前方の3匹のうち2匹が弾けるように飛び出す。
1匹が先を駆け、もう1匹がフォローするように後ろに付く。
先を駆ける1匹が小さく嘶くと、天を突かんばかりの血赤の水晶角は可変し、突き刺すように前方へ向けた。
さながら全てを貫く槍のように。
先を駆ける1匹が最初に獲物として選んだのはソロだ。
ソロに向かって一直線に爆発的な加速を加えて突き進む。
ソロは剣を抜き放ちその血赤の角に向かって一閃。
砕けはしなかったものの、クォーツタスクの突進はソロの横薙ぎにより防がれた。
これには突進をしたクォーツタスクが驚いた。
これまでこの一撃で大抵の獲物を突き刺してきた。
最初の頃は避けられたり防がれたりとそれほど威力も無かったが、ここ最近では力を付けたお蔭で仕留め損なうことなどなかったのだ。
それだけに今の一撃を躱された衝撃は大きかった。
だがすぐさま気を取り直し再び突進し、またもや剣を振るおうとしたソロの一撃を角で絡め取り動きを封じた。
そして再び角を可変させて天を突くようにし、ソロを下から掬い上げるように突き上げる。
それと同時に後ろから付いてきたもう1匹が地を跳ね、前に突き出した血赤の角を槍とし、天からソロを付け狙う。
これが普通の冒険者だったらこれで終わっていただろう。
クォーツタスク達の誤算は、相手がソロだった事と、ソロが1人じゃなかった事だ。
ソロは剣が絡み取られ汰瞬間に剣を手放し、突き上げをしようと頭を下げたクォーツタスクの頭を踏み台にして空中に舞いあがり天から突き刺そうとするクォーツタスクを迎撃する。
「モード鬼神の使徒・Kisin。
――拳戦技・流星拳」
その姿を鬼に変え、流星の如き突き出された拳によってクォーツタスクの頭が半分吹き飛んだ。
これにはソロは眉をひそめた。
本来の鬼神の力を携えた流星拳なら頭を1つ吹き飛ばすのに何の問題も無かったはず。
これは前に突き出した血赤の水晶角の所為だろう。
天から突き刺そうと振ってくる速度に加え、血赤となったより硬度の水晶角がソロの流星拳の威力を流し致命傷を避けたのだ。
とは言え、頭半分が吹き飛んでは最早戦闘にはならないだろう。
ソロは地上に落ちていくクォーツタスクを見てそう思った。
一方、下からの突き上げの一撃を放とうとしていたクォーツタスクはウィルによって邪魔をされていた。
ソロの剣を絡め取り角を可変したその瞬間を狙われたのだ。
クォーツタスクの血赤の水晶角は戦闘を重ね、多くの血肉を喰らう事によってその水晶角の角度を変えることが出来る。
だが実はその角度を可変する瞬間は、僅かばかりだが動きが止まってしまうのだ。
ウィルはその瞬間をたった1回の可変を行うクォーツタスクを見て見抜いていた。
そして再び可変を行うその瞬間を見逃すウィルではなかった。
水晶角を可変し動きが止まった一瞬の隙をついてウィルは剣を閃かせクォーツタスクの首を薙ぐ。
それにより突き上げの動作は遅れ、ソロに突き上げの勢いを利用され足場にされてしまったのだ。
動きが鈍ったクォーツタスクに続けざまのウィルの一撃がお見舞いされる。
これによりクォーツタスクは地に崩れ落ちた。
前衛のソロとウィルが2匹のクォーツタスクを相手取っている間、左右にそれぞれに展開する2匹のクォーツタスクは後方のデュオ達に襲い掛かろうとしていた。
左右から来るクォーツタスクを見たアルベルトはルーナの側に寄り、手にしたハルバードを構える。
デュオは挟むように迫りくるクォーツタスクを見ながらも悠然と構えていた。
そんな様子のデュオを侮ったのか、無警戒に突き殺すように突進する2匹のクォーツタスク。
ここで警戒心を強めていれば2匹のクォーツタスクの結果も変わっていただろう。
デュオは静寂な炎を宿す火竜王を掲げたまま大の字になるように手を左右に広げ唱えていた呪文を解き放つ。
「ストーンウォール」
本来なら防御の役割を果たす為の土壁を創りあげる魔法だが、これはデュオのアレンジが加わった攻撃の土壁だ。
クォーツタスクの進路を見据えた土壁は、槍と化した円錐状の土壁となり真下から突き上げる。
「アクアランス、サンダージャベリン」
腹部に一撃を貰ったクォーツタスクは宙を舞い、追撃で放った卵の十冠にチャージした魔法で撃沈する。
ほんの僅かな間に4匹のクォーツタスクはあっという間に地に伏せる。
が、ここで沈むようであればS級とは呼ばれることは無いのだ。
ソロに頭を半分吹き飛ばされたクォーツタスクも、ウィルから首に一撃を貰ったクォーツタスクも、デュオに腹を貫かれ電撃と水斬を受けたクォーツタスクも何事も無かったかのように起き上がる。
否、激しい雄叫びと共に再び猛進する。
「「「「ギュガァァァァァァァァァァァッ!!!!」」」」
片方に残った水晶角を連続可変して回転させ掘削機のように抉り取ろうとソロへ突きつける。
流石にソロもこれには手を突っ込む気にはなれず距離を取ろうとするも、頭半分のクォーツタスクは残りの命を燃やすかのように激しい衝突を繰り返す。
掬い上げの攻撃が得意だったのか、首を斬られ千切れかけたクォーツタスクも自分の首がもげそうになるのも構わず激しく地面すれすれからの突き上げを繰り返す。
魔物でありながら自分の命よりも獲物を狙うその激しい攻めにウィルは底知れぬ畏怖を感じながらも攻撃を凌いでいた。
ストーンウォールの一撃、それと水と雷の槍を受けたクォーツタスク達は今度はデュオを狙わずアルベルトとルーナを狙って走り出す。
これにはデュオも少し焦り、片方をアルベルトに任せ、もう片方を迎撃しようとルーナの前に躍り出る。
すると途端に2匹のクォーツタスクは進路を変えて再びデュオを狙ってきたのだ。
迎撃に出ようとしたデュオを片方のクォーツタスクが抑え、もう片方のクォーツタスクはアルベルトをスルーしてデュオの背後を狙う。
怒りに染まりながらも理知的に獲物をしとめようとするクォーツタスクにデュオは感心していた。
だからこそのS級なのだろう。
デュオの背後からの一撃を突き刺そうとしたクォーツタスクは突如視界が上下さかさまになったのに戸惑い足を止めた。
いや、足は止まる。だが視界が地面を向いている。
この瞬間までこのクォーツタスクは自分の首が斬り落とされていたのに気が付かなかった。
「ソニックタービュランス・シールドエッジ」
本来の風属性魔法のソニックタービュランスは竜巻を発生させて風の刃で巻き込むものを切り刻むのだが、このシールドエッジはデュオの周りに円筒状のバリアのような風の刃を発生させて術者の周囲にいる者を斬り裂くオリジナル魔法だ。
当然、円筒状の軌道にいたクォーツタスクはそれに沿って切り落とされていたのだ。
そしてもう1匹のクォーツタスクも同様に胴を前後に真っ二つに裂かれ立つことすら出来ずに崩れ落ちた。
デュオは2匹のクォーツタスクを片付けた後、ソロとウィルを見ればそちらもほぼ同時に決着がついていた。
「モード戦乙女の使徒・Valkylie。
光の武器生成・ヴァルキリージャベリン!」
ソロはモードを戦乙女に変えて光の武器を生成し、掘削機のように可変する水晶角の中心に向かって投擲する。
素手で攻撃が出来なければ武器を作ればいい、それがソロの答えだった。
光の槍の一撃を受けたクォーツタスクは元々頭が半分吹き飛んでいたのを完全に消失してしまったため、今度こそ動きが止まりその場に崩れ落ちる。
ウィルの方も愚直にも同じ動作を繰り返すクォーツタスクの動きを見切り、その上下運動に合わせて剣を振り降ろす。
「バスターブレイカー!」
剣戦技の最高技とも言われるバスターブレイカーで止めの一撃を放つウィル。
バスターブレイカーを放つまでも無く他の剣戦技でも止めをさせたのだが、ウィルは瀕死の状態でも獲物を狙うその姿に敬意を表して最高技を持って止めを刺したのだ。
多少ピンチの場面はあったものの、こうして決着してみればS級と言えどこのメンバーを相手するには少々不足だったようだ。
残った最後のクォーツタスクは他のクォーツタスクに比べ角が大きく最早黒と言っていいほどの水晶角をしていた。
そんなボスクォーツタスクも己の不利を悟り、デュオ達を睨みつけながらも後退していった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ふー、最後のクォーツタスクが引いてくれて助かったわ。何よあの角。もう真っ黒じゃない」
「あれはあかなりの場数を踏んでいるな。だからこそ不利を悟って引いたんだろう」
そう言いながらソロは落ちていた剣を回収しそう呟く。
「あれだけの魔物が居るんだ。そりゃあ他の動物の気配がしないわけだ」
ソロが言っていたこの山には動物などの気配が薄いと言っていたのを思い出しながらウィルはそう呟く。
「とは言え、ここで撃退したから当分は襲ってこないでしょ。
あれほどのクォーツタスクが4匹も倒されたて戦力が激減だからリベンジも無いと思うし」
「だな。この辺一帯を縄張りにしているだろうから他の魔物も襲ってこないだろう」
デュオ達は改めて山頂を目指して歩き出す。
ウィルの言う通り山頂に付くまでの間、他の魔物に襲われることは無かった。
だが山頂に近づくにつれ、魔物とは別の戦闘音が響き渡っていた。
「何だぁ? 魔物じゃないって事は・・・The Empress・・・エレナーデが誰かと戦っているって事か?」
「その可能性はあるわね。確か神秘界の騎士は八天創造神の手先だって話だからアルカディアじゃ付け狙う者が居てもおかしくないわ」
「あれ? 神秘界の騎士はアルカディアの守護者じゃないのか? 爺さんの話じゃそんな感じだったような・・・」
「確かにアルカディアを守護する為に神秘界の騎士を生み出したって言ってたけど・・・実際は八天創造神を最優先で護衛する私兵みたいなものだって話しよ。
ちゃんと聞いてた?」
謎のジジイの話をちゃんと聞いていなかったウィルにデュオは呆れながらも説明をする。
尤も全ての神秘界の騎士が八天創造神に付き従っているわけではないので、一概にも全てが敵だとは言えない。
謎のジジイの話によれば生み出された神秘界の騎士はそれぞれ一癖も二癖もある者ばかりで、素直に八天創造神の言う事を聞く輩じゃないらしい。
実際、これから向かうエレナーデもそんな神秘界の騎士の1人で八天創造神ではなく、何故か謎のジジイに協力をしているのだ。
「でも私たちにとっては協力者なのですからこのまま倒されてしまうのは拙いのではないですか?」
「分かっているわ。場合によっては乱入するからみんな戦闘準備をしておいて」
そんな会話をしながらもデュオ達は戦闘音のする方へと歩を速める。
穂を速めたことによって数分もしないうちに山頂の木が拓かれた広場へと辿り着いた。
広場には麓の謎のジジイの拠点と同様のこじんまりとしたログハウスが建っていた。
そしてその庭と言うべき広場で1人の女性対4人の女性が戦っていた。
1人の方の女性はおそらく神秘界の騎士のThe Empressだろう。
異世界の文化を持ち込んで作られた着物を着た艶のある長い黒髪の女性だ。
The Empressことエレナーデは長い黒髪をなびかせながら舞うように襲撃者の攻撃をいなし手に持った扇で反撃をしていた。
一方、エレナーデを襲っている4人の女性の襲撃者は如何にもと言った冒険者の格好をしている。
1人は戦士風の革鎧を装備し、剣を持って素早さで攻撃を繰り出している。
もう1人も戦士なのだが、こちらは全身金属鎧で大盾を装備して攻撃を受ける所謂盾役として仲間の身を守っていた。
後方から魔法の援護をしながら攻撃をしているのは猫人の女性だ。
女性の獣人らしくケモ耳と尻尾を生やしており、前衛をこなすことが多い猫人でありながら珍しい魔術師をしていた。
最後の1人は目にする機会が居少ない種族の竜人の女性だった。
こちらは竜人の身体能力を生かし肉弾戦を挑んでいた。
戦闘は4対1であるにも拘らずエレナーデが優位に進めているのがデュオたちの目から見ても明らかだった。
「おい、どうする? これ?」
「うーん、助太刀しようにもエレナーデが優位だからかえってじゃましちゃうような気が・・・って! ソロお兄ちゃん!?」
デュオ達がどうするか迷っていたところ、ソロだけは何のためらいも無く5人の戦闘へと飛び込んで行ってしまったのだ。
戦士の女性がエレナーデの態勢を崩し、その隙をついて竜人の武闘士の一撃が繰り出されるも、その拳はエレナーデには届かなかった。
戦闘に乱入したソロの手で受け止められていたからだ。
「失礼、邪魔をさせてもらいます。
事情は分かりませんが、女性の方々が血を流すのを見るのは忍びない。申し訳ないですがここは引いてもらえると助かります」
突然の乱入者に4人の女性たちもエレナーデも驚きを露わにしていた。
だがすぐに乱入者に対応し4人は陣形を改め、エレナーデも警戒を強める。
「む、いきなり割り込んできて引けと言われても困るな。こちらにはこちらの事情がある。邪魔をしないで貰いたい」
「ふん、お前らが昨日から妾の山でこそこそしていた奴らか。妾の山を荒らすからにはそれなりに覚悟は出来ているだろうな」
竜人は受け止められた手を払いながらソロから距離を取りながらこれ以上邪魔をするなと警告を送る。
エレナーデもソロの他にもデュオ達が居ることに気が付いており、その言葉から察するに昨日から謎のジジイが用意した拠点に居たことも把握しているみたいだった。
「これは困りましたね。私たちはこちらの女性に用があり、倒されてしまう訳にはいかないのですが・・・それでも倒すと言うのなら私がお相手いたしますよ?」
そう言いながらソロは抑えていた鬼神の使徒としての闘鬼を解き放つ。
ソロの闘鬼を目の当たりにして竜人他3名は思わず後ずさった。
今更ながらに竜人の放った一撃を安々と受け止めたソロの強さに思い至りこれ以上の手出しは危険だと判断し、状況に身を任せることにした。
「さて、ミス・エレナーデ。私たちは我が師・謎のジジイの助言にしがたい貴女に協力をお願いしにやってきました。どうか我々に協力を願いたい」
ソロが謎のジジイの名前を口にした瞬間、これまで訝しげにソロを睨んでいたエレナーデの表情が一気に歓喜の表情へと変わった。
「何だとっ!? ジジ様が来ているのか!? 何処だっ何処に居る!?」
「ミス・エレナーデの期待を裏切るようで申し訳ないですが、我が師はこのアルカディアでやることがある為、我々とは行動を共にしておりません。
なのでこの世界の我が師の一番の協力者であるミス・エレナーデに頼れと」
「な・な・な・・・! 妾がジジ様の一番だと! よかろう! 妾が貴様らの手助けをしてやろうじゃないか!」
先程までの不穏な態度から一遍、恋する乙女モードになったエレナーデを見てウィル達は唖然としてしまう。
だがそれよりも一番唖然としたのはデュオだった。
ソロの思いがけない女性擁護主義者ぶりにデュオはドン引きだ。
この中で唯一の肉親であるからこそ一番のドン引きだ。
デュオはそう言えばと思い出す。ソロと合流してからここに来るまでの間、ルーナにやけに親切に接していたのを。
その時はルーナを見た目に捕らわれず年上の女性として扱ってたんだと思っていたが、実はそれは女性擁護主義者から来るものだったのだと目の前の現実により思い知らされる。
「はっ!? そうか、貴様がジジ様が言っていた教えを受けているくせに言う事を聞かないくそ生意気な態度の弟子か」
「はは、我が師ながら容赦ないセリフだ。そうです、私が謎のジジイの不肖の一番弟子のソロになります。
それで、我々にご協力を頂けますか? 我々は昨日、アルカディアに来たばかりでこちらの情勢がはっきりとしていないのです」
「うーん・・・ジジ様の弟子の貴様ならまだ我慢も利くが・・・妾は大の男嫌いでな。そこの男2人――片方は豚?の獣人らしいが、そいつらが妾の山に居るのは我慢ならん。即刻出て行ってもらう」
先程までの謎のジジイを語る時の蕩ける様な表情から一変してウィルとアルベルトを見る目が汚物を見る目に変わる。
それと同時に鳴りを潜めていた殺気も溢れ出ていた。
その殺気に煽られウィル達は思わず構えてしまう。
それをソロは手で押さえるように合図する。
ここは俺に任せろ、と。
「ミス・エレナーデ。ここは我が師に覚えを良くしておきませんか? ここで気に入らない男でも協力できると言う姿勢を見せることによって我が師の好感度はうなぎ上りですよ」
「はっ!? そうか! ここでジジ様の知り合いの貴様らを助ければジジ様の気持ちは一気に妾に傾くのか!」
「ええ、それはもう、一気に傾きますよ。
『儂が居ない間良くこやつ等の面倒を見てくれた。流石はエレナーデじゃな。流石一番頼りになる女性だ』と言った風に言ってくれるでしょう」
「そそそそそそうか! そうだな! 良し、妾が貴様らの面倒を纏めて見よう!
あはははははっ、これでジジ様の心は妾のものだ!」
もしここに美刃が居ればソロの事をまるでホストみたいと言っていただろう。
ソロのエレナーデの説得は女性擁護主義者以前にまるで女性を口説くナンパ師のようなものだったのだから。
だがここには美刃も居なければ異世界の文化を知る者は1人も居ない。
いや、1人だけ居た。
デュオ側ではなく、エレナーデを襲っていた4人の女性のうちの1人に居た。
その女性は戦士の女性でソロを胡散臭げな目で見ていた。
だが、今この場を支配しているのはエレナーデと・・・ソロだ。
余計な事を言って場から排除されては敵わないと今はただ黙って見ているだけだった。
「よし、詳しい話を聞こうじゃないか。
男を家に入れるのは業腹だがジジ様に免じて許可しようじゃないか。あ、だがだからと言って当然と言った顔をするなよ? その時は潰すからな?」
そう言ってエレナーデはデュオ達をログハウスの中へ連れて行く。
そこで困ったのは4人組の女性だ。
エレナーデにとっては既に4人の事は頭の片隅にも残っていなかった。
「ちょっと待つ。私たちはどうなる?」
「あん? ああ、まだ居たのか。とっとと山から下りろ。貴様らを相手している暇は無くなったんでな」
このパーティーのリーダーらしい盾役の女性が自分たちを忘れるなと言えば、エレナーデは然もいま気が付いたとばかりに4人組を認識し、早くこの場から立ち去れと言う。
「却下。私たちの任務は貴女から緊急脱出口のカードキーの奪取よ。それを手に入れないうちは戻れないわ」
「それも言った筈だ。これが欲しければ妾を倒せとな。これは妾が認めた者にしかやれん」
そう言いながらエレナーデは帯の間から銀色のプレートを取り出してひらひらと4人組に見せびらかすようにひけらかす。
「・・・・・・」
「くっ、これ見よがしに・・・!」
リーダーの盾役の女性はそれを黙って見ていたが、戦士の女性は悔しさをにじませながら歯ぎしりしていた。
デュオ達はエレナーデがひけらかす銀色のプレートに見覚えがあった。
The Worldを倒したときに落ちていたプレートと同じだったのだ。
「ふむ、そちらのレディたちにも事情を聞きたいですね。
ミス・エレナーデ。彼女らも我々の協議に参加させてもらいたいのですが」
「ん? 何でだ? こいつらはジジ様とは何の関係も無いだろう」
「いえ、彼女らの事情と我々の事情が重なっている可能性もあるので、その辺を突き合わせたいと思いまして」
「・・・ふん、ジジ様の弟子の貴様がそう言うのなら話だけは聞いてやる。但しこれは渡せんからな」
銀色のプレート――カードキーを再び帯に仕舞いながらエレナーデは釘を刺しておく。
こうしてなし崩し的ではあるが、デュオ達、エレナーデ、謎の女性4人組は互いの状況を確認するために話し合いをすることとなった。
次回更新は8/26になります。




