009
カレンとジョセフはハーレムのパトロールに出かけていた。最近はハーレムでのモンスター情報が多く、群れのボスがいるのではないかと署長が推測し、二人にパトロールを命じたのだ。
「まったくよ。署長の人使いの荒さときたら天下一品だぜ……」
運転席でタバコをふかしながらジョセフが言った。
「ああ。きっと世界記録に載るぞ」
助手席ではコーラとハンバーガーを抱えているデブの黒人が座っている。無論、彼こそがカレンである。
「署長の下で働いてた前任者たちは、モンスターに喰われて殉職しちまったし」
「俺達もいつモンスターの餌になるか分かったものじゃねーな」
「その時は、油で味付けして美味しく戴かれてやるだけさ」
「お前は味付けしなくてもコッテリとした味になるぜ」
カレンの見てくれで物を言っている。
「お前、おちょくってんのか!」
カレンはハンバーガーを頬張りながら怒り心頭である。ジョセフの片手を掴んで、体を揺らしているのだ
「おいおい。落ち着けって、前が見えねーだろ」
「決めた。俺は絶対モンスターの餌にならねえぞ」
「おうおう。その意気込みは大切だな」
「もし、喰われそうになっても手榴弾持って自爆特攻してやるさ」
「前線で戦う刑事らしい言葉だな」
「お前はどうする?」
カレンがジョセフに話を振った。
「何がよ?」
なにやら気怠そうだ。
「モンスターの餌になりそうな時だよ。さっきも言ったが俺は自爆するぜ」
「お前とは違って、ひたすら逃げるよ。それで神様に命乞いだ」
「神様なんて信じてないって顔してるのにか?」
カレンはジョセフの顔を見ながら喋っている。
「イエス様だろうが、破壊神シヴァだろうが、命を助けてくれるなら必死に願うさ」
その時だ。二人はトンネルに入ろうとしたら、車から一般人が降りて逃げ惑っているではないか。不思議に思った二人も車から降りて、近くにいた一般人に事情を聴く。
「おい、どうした。自分の愛車を道端に捨てやがって」
カレンが一般人の首元を掴む。
「ビックフットが山から降りてきて……暴れてやがる」
「ビックフットが? トンネルの中でか?」
「ああ、ビックフットの野郎完全にイカレてやがるぜ」
そう言った一般人は自力で拘束を解いて、一目散に逃げ出してしまった。
「だそうだぜ、相棒
「決まりだな。トランクから武器を持ってこい」
「あいあいさ」
こうして二人は徒歩でトンネルの中に入って行った。確かに、中では体長三メートルを超えるビックフットが暴れていた。車をボコボコにして、ボンネットを破壊しているのだ。
「くっさ」
近づくと、ビックフットの体臭が鼻を刺激する。
「ジョセフ。さっさと終わらせようぜ。さすがに我慢できねーよ」
「了解だ」
ジョセフはビックフットにロケットランチャー弾丸を撃ち込み、爆発四散させた。あたりにビックフットの血飛沫と肉片が飛び散る。
「まったく、最近のモンスターは暴れ癖が酷いぜ」
「平気で人の車を破壊するしな」
「退治するにも強力兵器じゃねーと歯が立たねえし」
「住人はモンスターから身を守る術を学ばないとな」
「せめて、外出の際にもショットガンを持って出歩いて欲しいぜ」
死体の後片付けをしながら、二人は喋っている。
「応援呼ぶか?」
「当たり前だ。死体の片づけもそうだが、車を持ち主に返さねーと」
「ちくしょう。とんだ事件に巻き込まれたな」
「徹夜を覚悟しねーとな」
「しかし、こうも活発的なモンスターを見ると異変しか感じないぞ」
「モンスターシーズンは夏だよな?」
「まったくだ。春にモンスター共が暴れるのは珍しいぜ」
二人は不平不満を漏らしながらも、死体の後片付けを完了させた。