007
モスマンを爆発四散させた所で、二人の仕事が終わった訳では無かった。
「はい、こちらモンスター取締局」
電話に出た署長のアンドリューが、徐々に険しい表情になる。
「分かりました」
署長は電話を切った。そしてだ。カレンとジョセフを部屋に呼び出す。
「お呼びですか、署長」
二人は颯爽と駆けつける。
「僕達、ジャパニーズ寿司を食べていた最中でしたのに」
「寿司を食べている暇は無い。ハーレムで事件だ」
「言うと思っていましたよ」
もはや、事件はハーレムで起きていると言っても過言ではない。
「ハーレムの道路で大統領が飼っているペットが抜け出しているそうだ」
「大統領のペットですか?」
「いかにも。モケーレ・ムベンベという大変珍しいモンスターだ」
モケーレ・ムベンベとは蛇の頭と尻尾を持ち、体長六メートルはあるであろうモンスターである。見た目と四足歩行で歩く事からブラキオサウルスの子孫ではないかと噂されている。
「ペットの捕獲依頼は探偵に任せるのが常識でしょう」
「それが、君達の功績を認めた州知事が推薦したらしい」
「ああ、オーク戦のか」
「君たちの任務は大統領のムケーレ・ムベンベをホワイトハウスまで案内する事だ」
「正気ですか? パトカーで飛ばしても四時間はかかりますよ」
「その上、ムケーレ・ムベンベはスクーターなみの速度でしか走りませんよ」
「正気では無いことぐらい分かっているさ。だが、これは大統領直々の依頼だぞ。媚を売るには絶好のチャンスだろ」
「……分かりました」
こうして、二人はパトカーに乗り込み、ハーレムで発見したムケーレ・ムベンベと速度を合わせてホワイトハウスに向かった。
ホワイトハウスは厳重な警備体制の元、二人とムケーレ・ムベンベを招き入れた。大統領は待ちかねた様子で、ムケーレ・ムベンベの首元に抱きついた。
「おお、心配したぞ!」
大統領は身長二百センチメートルを超えた黒人である。
「結局八時間もかかったな」
「ああ、疲れたぜ」
二人は揃って愚痴をこぼしている。
「お二人共お疲れ様でした。私がアメリカ合衆国大統領です」
大統領が握手を求めたので、二人は順番に握手を交わした。
「貴方に会えて、とても光栄です」
「貴方は国民のヒーローです」
「ははっ、世辞が上手いですね」
「それでは、私達はこれで」
二人は帰ろうとした。ところが、
「待ってください」
「何でしょう?」
「貴方達は評判通りの腕を持っているようだ。私の願い事を聞いてはくれないか?」
「まあ、他ならぬ大統領の願いとあらば」
「ありがとう。実は今現在欲しいモンスターがいましてね。ここに連れてきて欲しいのです」
「モンスターですか?」
とたんに、ジョセフの目が細くなる。
「そうですね。ユニコーンを持ってきてくれませんか?」
「ユニコーンって……早々お目に掛かれませんが」
「実はユニコーンの目撃情報を入手したのです。アダムズ氷河盆地にユニコーンがいるとね」
「本当ですか?」
「ええ。捕獲してもらいませんか?」
「分かりました。行って参ります」
二人は大統領に敬礼して、アダムズ山に向かった。